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【第三次案】第1部 破産手続: 第1 総則

1 管轄の特例
(1)親法人とその子会社
ア 子会社についての申立て
親法人について破産事件、再生事件又は更生事件が係属している場合には、子会社についての破産手続開始の申立ては、親法人の破産事件、再生事件又は更生事件が係属している地方裁判所にもすることができるものとする。
イ 親法人についての申立て
子会社について破産事件、再生事件又は更生事件が係属している場合には、親法人についての破産手続開始の申立ては、子会社の破産事件、再生事件又は更生事件が係属している地方裁判所にもすることができるものとする。
ウ いわゆる孫会社の取扱い
次の場合には、(i)の他の株式会社又は(ii)の他の有限会社を当該親法人の子会社とみなして、ア又はイを適用するものとする(商法第211条ノ2第3項参照)。
(i)(ア)親法人及び子会社又は(イ)子会社が、他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有するとき。
(ii)(ア)親法人及び子会社又は(イ)子会社が、他の有限会社の総社員の議決権の過半数を有するとき。
(民事再生法第5条第3項、会社更生法第5条第2項第2号及び第3号参照)

(注)
1 法人が、株式会社の総株主の議決権の過半数又は有限会社の総社員の議決権の過半数を有する場合における当該法人を「親法人」と、当該株式会社又は当該有限会社を「子会社」という。
2 破産事件が係属する場合の管轄の特例(部会資料28第1参照)のほか、異種の倒産処理手続がが係属する場合の管轄の特例も規定するものとしている(部会資料30第1・1(1)参照)。
3 再生手続においても、親法人についての更生事件が係属している地方裁判所に子会社についての再生手続開始の申立てをすることができるものとし、子会社についての更生事件が係属している地方裁判所に親法人についての再生手続開始の申立てをすることができるものとする(部会資料36第1・1(2)参照)。
4 ウ(いわゆる孫会社の取扱い)については、再生手続においても、同様の手当てをするものとする。

(2)商法特例法上の大会社とその連結子会社
ア 連結子会社についての申立て
株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(以下「商法特例法」という。)第1条の2第1項に規定する大会社について破産事件、再生事件又は更生事件が係属している場合には、同条第4項に規定する連結子会社についての破産手続開始の申立ては、当該大会社の破産事件、再生事件又は更生事件が係属している地方裁判所にもすることができるものとする。
イ 連結親会社についての申立て
商法特例法第1条の2第4項に規定する連結子会社について破産事件、再生事件又は更生事件が係属している場合には、同項に規定する他の株式会社についての破産手続開始の申立ては、連結子会社の破産事件、再生事件又は更生事件が係属している地方裁判所にもすることができるものとする。
(会社更生法第5条第2項第4号及び第5号参照)

(注)
1 ア及びイについては、当該大会社(連結親会社)の直前の決算期において商法特例法第19条の2又は第21条の32の規定により当該連結子会社に係る連結計算書類が作成されに、かつ、定時総会において当該連結計算書類が報告された場合に限るものとする。
2 再生手続においても、連結親会社についての更生事件が係属している地方裁判所に連結子会社についての再生手続開始の申立てをすることができるものとし、連結子会社についての更生事件が係属している地方裁判所に連結親会社についての再生手続開始の甲立てをすることができるものとする。
(部会資料36第1・1(2)参照)

(3)法人とその代表者
ア 法人の代表者についての申立て
法人について破産事件[、再生事件又は更生事件]が係属している場合には、当該法人の代表者についての破産手続開始の申立ては、当該法人の破産事件[再生事件又は更生事件]が係属している地方裁判所にもすることができるものとする。
イ 法人についての申立て
法人の代表者について破産事件[又は再生事件]が係属している場合には、当該法人についての破産手続開始の申立ては、当該法人の代表者の破産事件[又は再生事件]が係属している地方裁判所にもすることができるものとする。
(民事再生法第5条第4項参照)。

(注)
1 この特例を認める理由を法人とその代表者の経済的一体性に求めるときは、法人につき再建型の倒産処理事件が係属している場合に、当該事件が係属している地方裁判所に、代表者についての破産手続開始の申立てができるようにする必要性等は乏しく、法人とその代表者の両者の破産の場合に限って管轄の特例を認めることで足りるとも考えられるが、どうか。
2 再生手続においても、法人についての更生事件が係属している地方裁判所に代表者についての再生手続開始の申立てをすることができるものとするかどうかについて検討する必要がある(部会資料36第1・1(2)参照)。

(4)連帯債務者等
次の各号に掲げる者のうちいずれか一人について破産事件が係属している場合には、それぞれ当該各号に掲げる他の者についての破産手続開始の申立ては、当該破産事件が係属している地方裁判所にもすることができるものとする。
(i)相互に連帯債務者の関係にある個人
(ii)相互に主たる債務者と保証人の関係にある個人
(iii)夫婦
(民事再生法第5条第5項参照)

(注)各号に掲げる者のような経済的に密接な関係を有する者の間では、債務の発生原因となる事実が共通する場合も多いことを考慮し、手続の合理化を図る観点から、管轄の特例を認めるものである。

(5)複数の管轄裁判所の調整
原則的管轄(破産法第105条参照)、財産所在地の管轄(同法第107条第1項及び第2項参照)又は(1)から(4)までの規定により二以上の裁判所が管轄権を有するときは、破産事件は、先に破産手続開始の申立てがあった裁判所が管轄するものとする。
(民事再生法第5条第6項、会社更生法第5条第3項参照)

2 移送
裁判所は、著しい損害又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは、職権で、破産事件を次に掲げる地方裁判所のいずれかに移送することができるものとする。
(i) 債務者の主たる営業所又は事務所以外の営業所又は事務所の所在地を管轄する地方裁判所
(ii) 債務者の住所又は居所の所在地を管轄する地方裁判所
(iii) 財産所在地の管轄に規定する地方裁判所
(iv)1の(1)から(4)までに規定する地方裁判所
(v)1の(1)から(4)までの規定により(iv)の地方裁判所に破産事件が係属しているときは、原則的管轄(同法第105条参照)又は財産所在地の管轄に規定する地方裁判所
(民事再生法第7条、会社更生法第7条参照)

3 不服申立て
破産手続、免責手続及び復権手続(以下「破産法の定める手続」という。)に関する裁判につき利害関係を有する者は、破産法に特別の定めがある場合に限り、当該裁判に対し即時抗告をすることができるものとする。その期間は、裁判の公告があった場合には、その公告が効力を生じた日から起算して2週間とするものとする。
(注) 即時抗告の可否については、所要の整備をするものとする。
(民事再生法第9条、会社更生法第9条参照)

4 送達及び公告
(1)送達すべき裁判
破産法の定める手続に関する裁判のうち、送達すべきものは、個別に規定するものとする(破産法第111条は削除するものとする。)。
(民事再生法第10条第3項、会社更生法第10条第3項参照)

(2)公告等をすべき場合の取扱い
<1> 破産法の定める手続に関する裁判のうち、現行の破産法において公告及び送達をしなければならないとされいているもの(破産法第118条参照)については、公告及び通知(民事訴訟規則第4条第1項参照)をしなければならないものとする。
<2> 破産法の規定によって送達をしなければならない場合には、公告をもって、これに代えることができるものとする。
<3> <1>及び<2>は、特別の定めがある場合には、適用しないものとする。

(注) <1>及び<3>については、再生手続においても、同様の手当てを行うものとする。

(3) 公告の方法
破産法の定める手続においてする公告(破産法第115条及び第116条参照)は、官報に掲載してするものとする。

5 登記及び登録の嘱託
(1) 嘱託の主体
登記及び登録の嘱託は 裁判所書記官がするものとする。
(民事再生法第11条、会社更生法第246条参照)

(2)破産財団に属する権利に関する登記
破産財団に属する権利で登記又は登録したもの(不動産所有権等)に関する破産の登記、破産取消しの登記 破産廃止の登記及び破産終結の登記の制度(破産法第120条及び第121条参照)は、破産者が法人である場合については、廃止するものとする。

(注)現行実務上、破産者の債務を代位弁済した者は、別途、根抵当権の元本の確定登記を経ずに根抵当権移転登記を申請することができるとされている(民法第398条ノ20第1項第5号参照、昭46.12. 27民事三発第960号第三課長依命通知)が、法人についての破産の登記を廃止する場合には、原則どおり、元本の確定登記を経なければならないこととなる。そこで、このような現行実務の取扱いを考慮して、第21回会議の審議の結果を踏まえ、根抵当権者は、破産手続開始の決定がされたことを証する書面を添付して、単独で、根抵当権の元本の確定の登記の申請をすることができるとする手当てを行うものとする。

(3) 否認の登記
<1> 登記の原因である行為が否認されたときは、破産管財人は、否認の登記をしなければならないものとする。登記が否認されたときも、同様とするものとする(破産法第123条第1項、民事再生法第13条第1項、会社更生法第250条第1項参照)。
<2> 破産管財人が<1>の否認の登記がされた不動産等の任意売却等期した場合において、当該任意売却等を原因とする登記がされるときは、(ア)当該否認の登記並びに(イ)否認された行為を原因とする登記又は否認された登記及びこれらの登記の後にされた登記であって破産債権者に対抗することができないものの抹消等をしなければならないものとする。
<3> 裁判所書記官は、<1>の否認の登記がされている場合にとおいて 破産者について、破産手続開始の決定の取消し若しくは破産手続廃止の決定が確定したとき、又は破産手続終結の決定があったときは、職権で、遅滞なく、否認の登記の抹消を嘱託しなければならないものとする(民事再生法第13条第2項、会社更生法第250条第2項参照)。

(注)
1 第19回会議における審議においては、現行の否認の登記の考え方(特殊登記説)を維持しつつ、否認の効果が確定したときは、一定の手当てをするとの考え方に賛成する意見が多数であったことから、この考え方に基づき、<2>においては、破産管財人による任意売却等を原因とする破産者から第三者への所有権移転登記等をする際に、当該否認の登記、否認された行為を原因とする登記又は否認された登記、否認された行為を原因とする登記又は否認された登記の後にされた登記で破産債権者に対抗することができないものの抹消等をしなければならないものとしている。もっとも、例えば、破産者から受益者に不動産が売却され、受益者の下で第三者に対して抵当権設定登記がされていた場合において、破産者から受益者への売却行為は否認できたが第三者に対しては否認権を行使することができなかったときは、否認された行為を原因とする登記等を抹消したのでは、登記簿上、第三者は無権利者から抵当権の設定を受けたことになる。そこで、このような場合には、否認の登記の抹消をするとともに 否認された行為を原因とする登記等(破産者から受益者への所有権移転登記)の抹消に代えて、受益者から破産者への所有権移転登記をすることになるものと考えられる。

2 再生手続及び更生手続においては、否認の効果が確定した場合(売却等を原因とする第三者への所有権移転登記簿がされる場合(前記<2>参照)及び再生計画又は更生計画認可の決定の確定後に手続が終了した場合(民事再生法第13条第3項、会社更生法第250条第3項参照))について、<2>と同様の手当てをするものとする。

3 <3>について、民事再生法第13条第2項及び会社更生法第250条第2項は、ただし書で「その抹消につき登記上利害関係を有する第三者があるときは、この限りでない」としているが、当該ただし書に該当する場合、すなわち、否認の登記後に当該権利の上に権利を取得し、登記をした者があるときは、<2>によって当該否認の登記が抹消されることになると考えられることから、ただし書を設けないものとしている。

6 事件に関する文書の閲覧等
(1)文書等の閲覧等の請求
利害関係人には 原則として、裁判所書記官に対し、破産事件に関する文書等の閲覧及び謄写等の請求をすることができるものとする。
(民事再生法第17条、会社更生法第14条参照)

(2)閲覧等の請求の時期的制限
債務者以外の利害関係人は、強制執行等の手続の中止命令(後記第3・1参照)等の一定の裁判があるまでの間は、閲覧等の請求をすることができないものとする。また、債務者は、破産手続開始の申立てに関する口頭弁論又は債務者を呼び出す審尋の期日の指定等の一定の裁判があるまでの間は、閲覧等の請求をすることができないものとする。
(民事再生法第17条、会社更生法第14条参照)

(3)支障部分の閲覧等の制限
破産管財人の行為に対する裁判所の許可(後記第12・1(4)参照)を得るために裁判所に提出された文書等の一定の文書等について、利害関係人による閲覧及び謄写等が行われることにより、破産財団の管理又は換価に著しい支障を生ずるおそれがある部分があることにつき疎明があった場合には、当該部分について閲覧等を請求することができる者を、保全管理人又は破産管財人に限ることができるものとする。
(民事再生法第18条、会社更生法第15条参照)

7 最高裁判所規則への委任
破産法に定めるもののほか、破産法の定める手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定めるものとする。
(民事再生法第20条、会社更生法第254条参照)

目次

○トップページ

■第一次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第二次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第三次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■残された課題

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法