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【第一次案】第1部 破産手続: 第12 破産財団

1 破産財団の管理
(1)帳簿の閉鎖
裁判所書記官は、破産管財人の申立てにより、必要があると認めるときは、破産者の財産に関する帳簿を閉鎖することができるものとする。

(2)財産の価額の評定
<1> 破産管財人は、破産宣告後遅滞なく、破産財団に属する一切の財産につき破産宣告の時における価額を評定しなければならないものとする。

<2> 破産管財人は、<1>による評定を完了したときは 直ちに破産宣告の時における財産目録及び貸借対照表を作成し、これらを裁判所に提出しなければならないものとする。(民事再生法第124条参照)

(注)
1 <1>は、裁判所書記官、執行官又は公証人の立会いの制度を廃止するものである。また、<1>及び<2>では、民事再生法にならって財産の評定の基準時並びに財産目録及び賃借対照表の作成の基準時を示すこととしている。

2 破産法第188条第1項後段(「此ノ場合ニ於テハ遅滞ノ虞アル場合ヲ除クノ外破産者ノ立会ヲ求ムルコトヲ要ス」)、第3項及び第4項については、 規則で定めるものとする。

(3)財団に属する財産の引渡し
<1> 裁判所は、破産管財人の申立てにより、決定で、破産者に射し、破産財団に属する財産を破産管財人に引き渡すべき旨を命ずることができるものとする。

<2> 裁判所は、<1>の決定をする場合には、破産者を審尋しなければならないものとする。

<3> <1>の申立てについての決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする。

<4> <1>の決定は、確定しなければその効力を生じないものとする。(民事執行法第83条参照)

(注)
<2>の必要的審尋の対象については、どのように考えるか。破産財団に属する財産と自由財産との区別が問題となる場合以外に必要性がないとすると、審尋の相手方を個人の破産者に限定することも考えられるが、この点についてどのように考えるか。

(4)裁判所の許可を要する事項
破産管財人が次に掲げる行為をするには、裁判所の許可を得なければならないものとする。ただし、(ii)から(xiv)までの行為につき最高裁判所規則で定める金額以上の価額を有するものに関しないときは、この限りでないものとする。
(i) (破産法第197条第1号と同じ。)
(ii)鉱業権、漁業権、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、回路配置利用権、育成者権、著作権及び著作隣接権の任意売却
(iii)~(xiv)(破産法第197条第3号から第14号までと同じ。)
(xv)その他裁判所の指定する行為

(注)
1 規則において、ただし書の金額を100万円と定めるものとする。

2 監査委員の制度の廃止(前記第6参照)に伴い、破産法第198条及び第200条の規定は、削除するものとする。なお、破産法第199条(破産者の意見聴取)の規定は、破産管財人が裁判所の許可を得た場合であっても、管財業務の適正かつ円滑な遂行を図るために、破産財団の実情を最もよく知り、かつ利害関係が最も強い破産者に対して意見を聴く必要性は高いと認められることから、これを維持するものとする。

3 現行の破産法においては、商標権の任意売却については許可を要する行為として規定されていない(破産法第197条)。これは、破産法制定当時には商標権は「其ノ営業卜共ニスル場合二限り之ヲ移転スルコトヲ得」と規定されていたことから(旧商標法第12条第1項参照)、商標権の譲渡は、破産法第197条第3号の営業の譲渡に含まれるものとされていたためであると指摘されている。しかし、その後の商標法の改正(昭和34年法律第127号)によって、商標糟は営業と分離して譲渡することができるものとされており、現在では、商標権が単独で譲渡される場合には、他の知的財産権の任意売却について定めた破産法第197条第2号が類推適用されるものと解されている。そこで、現在の解釈を明文化するものとして、上記(ii)におい、て、商標権を加えるものとすることで、どうか。

(5)損害賠償請求権の査定
<1> 裁判所は、法人である債務者について破産宣告があった場合において、必要があると認めるときは、破産管財人の申立てにより又は職権で、破産者の理事、取締役、監事、監査役、清算人又はこれらに準ずる者の責任に基づく損害賠償請求権の査定の裁判をすることができるものとする。

<2> <1>の申立てをするときは、その原因たる事実を疎明しなければならないものとする。

<3> 裁判所は、職権で査定の手続を開始する場合には、その旨の決定をしなければならないものとする。

<4> <1>の願立て又は<3>の決定があったときは、時効の中断に関しては、裁判との請求があったものとみなすものとする。(民事再生法第143条、新会社更生法第100条参照)

(注)
1 損害賠償請求権の査定に関する裁判、査定の裁判に対する異議の訴え、査定の裁判の効力については、新会社更生法第101条から第103条までと同様の規定を設けるものとする。
2 民事再生法及び新会社更生法の規定による保全処分と同様の制度を設けるものとする(民事再生法第142条、新会社更生法第40条及び第99条参照)。

2 破産財団の換価
(1)換価の時期
破産管財人は、一般の債権調査の終了前においても、破産財団に属する財産を換価することができるものとする(破産法第 196条の規定は削除するものとする。)

(2)別除権の目的財産の任意売却
破産管財人が別除権の目的である財産を任意売却した場合において、当該担保権が存続するときは、当該担保権を有する者は、その権利の行使によって弁済を受けることができない債権の部分についてのみ、破産債権者として、その権利を行うことができるものとする(破産法第96条及び第97条参照)。

(注)
破産管財人は、別除権の目的である財産を任意売却する場合において、当該担保権が存続するときは、当該担保権を有する者に対して、任意売却をする旨及びその相手方等を通知しなければならない旨の規定を設けるものとする。このような通知の制度を設けることについては相当数の賛成意見が寄せられた。この制度は、任意売却により担保権の目的物の占有・管理状態が変わり得ることから、担保権者が担保権の実行の申立てや担保権の目的物の受戻しをする等の適切な対応をする機会を確保するため、目的物に関する情報や売却の相手方に関する情報を明らかにすることを目的とするものと位置付けられるものである。なお、通知を欠いた場合であっても、この制度が、上記のとおり、担保権者に対して担保権の実行や交渉の機会等を与えるものであるという趣旨に照らし、任意売却の効果には影響を及ぼさないものとすべきであると考えられる。そのような規定の性格からみて、規則で規定するものとすることで、どうか。

(3)破産管財人による任意売却と担保権の消滅
(前注)
1 「破産管財人による任意売却と担保権の消滅」は、中間試案においては、破産管財人が担保権者に対し任意売却による売得金の額や組入額等の条件を示した上で、担保権の実行を自らするか、又は破産管財人が示した条件で担保権を消滅させるかの選択を担保権者に行わせ、担保権者が後者を選択した場合においては、担保権は消滅し、破産財団へ一定金額が組み入れられるものとし、その根拠については、担保権者が担保権を実行せず、破産管財人の示した条件でよいと判断したことに求めるという基本的な考え方を示していた(中間試案第1部、第12の2(3)参照)。具体的には、中間試案では、このような基本的な考え方を甲案において示しつつ、担保権者が破産管財人の示した組入額についてのみ不服がある場合に再生手続における担保権の消滅制度で採用されている価額決定の請求手続と同様の制度(以下「価額決定手続」という。)を不服申立てのオプションとしてカロえる案(乙案)を示していた。また、これらの案に加えて、担保権を区別しないで一律に消滅の対象として取り扱う甲案の基本的な考え方を修正し、消滅する担保権をいわゆる判子代を要求する後順位担保権者の有するものに限定して一定の実務上のニーズに応えるものとし'さらに、組入れにつき利害関係を有する担保権者については組入額についての合意の形成を促進ないし補完するために、乙案と同様の価額決定手続をオプションとして設けるものとする考え方(丙案)を示していた。

2 意見照会の結果によると、このような基本的な考え方を採用して、-定の場合には担保権を消滅させて破産管財人の任意売却を促進させる制度を設けることについては、ほぼ異論のなかったところであるが、担保権者の保護をどのように図るべきかにつき様々な意見が寄せられた。

3 このうち、価額決定手続(乙案にあっては不服申立ての制度、丙案にあっては組入額についての合意の形成を促進ないし補完するための制度)を設けることについては、意見照会において、組入額のみを争っている担保権者、存在し得るから、その点を解決する手段として、このような制度を設けるのが相当であるとする意見も寄せられた一方で、このような制度が実務上機能するかどうかという点については疑問を呈する意見が相当数寄せられた。具体的には、(a)任意売却にあってはその合意成立から実行まで迅速な処理が必要となるところ、価額決定手続を導入すると、その手続に時間がかかり過ぎ、その間、買受希望者を引き留めておくことは実際上困難である、(b)再生手続における価額決定の請求とは異なり、破産手続においては実際に売買契約を締結することが前提とされており、売買契約に基づいて得られた売得金以外の「財産の価額」を現実に評価することは困難ではないか等とするものである。このように、価額決定手続は、運用上有効に機能するかという点について多くの疑問が寄せられており、この制度を支持する意見からも、 これらの問題点を解決する方策は示されていないところである。そこで、今回の資料では、中間試案の乙案及び丙案のうち合意の形成を促進ないし補完するための制度については、採用しないものとしている。

4 今回の資料では、意見照会の結果を踏まえて、以下のとおり、甲案と丙案に一定の修正を加え、 A案(甲案の修正案)及びB案(丙案の修正案)を提示することとしている。

ア A案(甲案の修正案)
(ア)担保権消滅の許可等
<1> 破産宣告当時破産財団に属する財産の上に別除権である担保権(以下「担保権」という。)が存する場合において、当該担保権を消滅させて当該財産を任意に売却することが破産債権者の一般の利益に適合するときは、破産管財人は、裁判所に対し、当該財産を任意に売却し、及び次の(i)又は(ii)に掲げる区分に応じてそれぞれに定める額に相当する金銭を裁判所に納付して当該財産の上に存するすべての担保権を消滅させることについての許可の申立てをすることができるものとする。

(i)破産管財人において、売却によってその相手方より取得することができる金銭(以下「売得金」という。)の一部を破産財団へ組み入れようとする場合 売得金から組み入れようとする額(以下「組入金」という。)を控除した額
(ii)(i)に掲げる場合以外の場合 売得金の額

<2> 破産管財人は、<1>の許可の申立てをしようとするときは、組入金の額について、あらかじめ消滅すべき担保権を有する者(以下アにおいて「担保権者」という。)と協議しなければならないものとする。

<3> <1>の許可の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならないものとする。

(i)当該担保権の目的である財産の表示
(ii)売得金の額
(iii)(i)の財産の売却の相手方の氏名又は名称
(iv)消滅すべき担保権の表示
(v)(iv)の担保権の被担保債権の額
(vi)組入金が存すると認めるときは、その額

<4> <1>の許可の申立てがあった場合には、<3>の書面(以下アにおいて「申立書」という。)を、当該申立書に記載された担保権者に送達しなければならないものとする。この場合においては、代用公告の規定は、適用しないものとする。

<5> <4>の場合においては、裁判所は、担保権者に対し、<1>の許可の申立てに異議があるときは、<4>に規定する申立書の送達を受けた日から1月以内に、担保権の実行を申し立てるとともにその申立てを証する書面を提出し、既に担保権の実行を申し立てているときはそれを証する書面を提出すぺきごとを命じなければならないものとする。

<6> 裁判所は、やむを得ない事由がある場合に限り、担保権者の申立てにより、<5>の期間を伸長することができるものとする。

<7> <5>の書面が提出された後に、<5>にて規定する担保権の実行の申立てが取り下げられ、又は却下された場合には、その書面を提出しなかったものとみなすものとする。民事執行法第188条において準用する同法第63条の規定又は同法第192条において準用する同法第 129条の規定により担保権の実行の手続が取り消された場合についても、同様とするものとする。

<8> 裁判所は、担保権者が<5>又は<6>に規定する期間向に<5>の書面を提出しなかったときは、<1>の許可の決定をすることができるものとする。

<9> 裁判所は、必要があると認めるときは、<1>の許可の決定において、(イ)による金銭の納付がされ、又は当該決定が取り消されるまでの間、担保権の実行の禁止を命ずることができるものとする。

<10> <1>の許可の決定に対しては、担保権者は、即時抗告をすることができるものとする。

<11> <10>の即時抗告についての裁判があった場合には、その澱定書を担保権者に送達しなけ航はならないものとする。この場合においては、<4>後段の規定を準用するものとする。

(イ)価額に相当する金銭の納付
<1> 破産管財人は、(7)<1>の許河の決定が確定したときは、(ア)<1>(i)又は(ii)に掲げる区分に応じてそれぃぞれに定める額の金銭を裁判所の定める期限までに裁判所に納付しなければならないものとする。

<2> 担保権着の有する担保権は、<1>による金銭の納付があわた時に消滅するものとする。

<3> <1>による金銭の納付があったときは、裁判所書記官は、消滅した担保権に係る登記又は登録の抹消を嘱託しなければならないものとする。

<4>破産管財人が<1>による金銭の納付をしないときは、裁判所は、(ア)<1>の許可の決定を取り消さなければならないものとする。

(ウ) 配当等の実施等
<1> 裁判所は、(イ)<1>の規定による金銭の納付があった場合には、<2>に規定する場合を除き、配当表に基づいて、担保権者に対する配当を実施しなければならないものとする。

<2> 担保権者が一人である場合には、裁判所は、当該金銭の交付書を作成して、担保権者に弁済金を交付し、剰余金を破産管財人に交付するものとする。

<3> 民事執行法第85条及び第88条から第92条までの規定は<1>の配当について、同法第88条、第91条及び第92条の規定は<2>による弁済金の交付の手続について準用するものとする。

(注)
1 A案は、中間試案で掲げた甲案を基本的に維持し、目的物の上に存する担保権を区別しないで一律に消滅の対象として取り扱うものとしつつ、担保権が消滅する根拠については(前注)1における基本的な考え方を採用するものである。

2 意見照会においてにま、甲案は手続が最もシンプルであり、任意売却を迅速に処理するごとができるという理由から、これに「賛成する意見が相当数寄せられた。しかし、その一方で、担保権者が組入額のみを争いたい場合において、その不服を申し立てる手段がなく、この点につき破産管財人のイニシアティブが強すぎるとの意見が相当数寄せられた。そこで、このような意見照会の結果を踏まえ、甲案の仕組みを補うものとして、破産管財人は、許可の申立てをしようとするときは、組入金の額について、あらがじめ担保権者と協議しなければならないものとする(<2>)ことで、担保権者が事前に組入額について意見を述べて破産管財人と組入額につき協議する機会を保 障するものとしている(なお、中間試案においては、同様に破産管財人のイニシアティブが強すぎるとの指摘に対する対応として、許可の申立てができる時期を破産宣告後一定期間が経過した後とする考え方も注記していたが、このような取扱いは迅速な任意売却の障害になるとの意見が相当数寄せられており、この考え方は採用しないこととしている。)。もっとも、「協議」の内容は、事案によって様々であって、協議の内容やその時期を具体的に定めることは困難であることからすると、「協議」を欠いたとしても、そのことが許可決定の効力に影響を及ぼすものとすることは適切がはないと考えられる。このような意味において'この規定は訓示規定とせざるを得ないと考えられる(規則で定めることも考えられる。)が、どうか。このような規定を設けることで、上記の甲案の問題点に対する方策として適切であると考えることができるか。

3 <6>では、担保権者の担保権実行の機会を保障するために、担保権実行のための1月の期間をやむを得ない場合には伸長することができるものとしている(なお、この点は、後記B案の(ア)<5>も同様である。)。

4 担保権者に対する配当の手続については、再生手続における担保権消滅請求の制度の取扱いとは異なり、破産管財人がこれを行うものとし、破産管財人は、裁判所の許可を得た上で、担保権者に対し、配当手続によらずに弁済することができるものとするとの考え方(中間試案第1部、第12の2(3)ア甲案(イ)(注)参照)があるが、どのように考えるか にの場合においては、配当異議訴訟に類似した制度を設けることが考えられる。)。

イ B案(丙案の修正案)
(ア)担保権消滅の許可等
<1> 破産宣告当時破産財団に属する財産の上に担保権が存する場合において、当該担保権を消滅させて当該財産を任意に売却することが破産債権者の一般の利益に適合するときは、破産管財人は、裁判所に対し、当該財産を任意に売却し、及び次の(i)又は(ii)に掲げる区分に応じてそれぞれに定める担保権を消滅させることについての許可の申立てをすることができるものとする。

(i) 破産管財人において、売得金の一部を破産財団へ組み入れようとする場合 先順位の担保権の被担保債権の総額が売得金の額を超えるもの
(ii)(i)に掲げる場合以外の場合 当該担保権の被担保債権の額が売得金の額(先順位の担保権が存する場合にあっては、売得金の額から先順位の担保権の被担保債権の額を控除した額)を超えるもの

<2> <1>の許可の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならないものとする。

(i)当該担保権の目的である財産の表示
(ii) 売得金の額
(iii)(i)の財産の売却の相手方の氏名又は名称
(iv)消滅すべき担保権の表示
(v)(iv)の担保権及びその先順位の担保権の被担保債権の額
(vi) 組入金が存すると認めるときは、その額

<3> <1>の許可の申立てがあった場合には、<2>の書面(以下イにおいて「申立書」という。)を、当該申立書に記載された<2>(iv)の担保権を有する者(以下イにおいて「担保権者」という。)に送達し/なければならないものとする。この場合においては、代用公告の規定は、適用しないものとする。

<4> <3>の場合においては、裁判所は、担保権者に対し、<1>の許可の申立てに異議があるときは、<3>に規定する申立書の送達を受けた日から1月以内に、担保権の実行を申し立てるとともにその申立てを証する書面を提出し、既に担保権の実行を申し立てているときはそれを証する書面を提出すべきことを命じなければならないものとする。

<5> 裁判所は、やむを得ない事由がある場合に限り、担保権者の申立てにより、<4>の期間を伸張することができるものとする。

<6> <4>の書面が提出された後に、<4>に規定する担保権の実行の申立てが取り下げられ、又は却下された場合には、その書面を提出しなかったものとみなすものとする。民事執行法第188条において準用する同法第63条の規定又は同法第192条において準用する同法第129条の規定により担保権の実行の手続が取り消された場合についても、同様とするものとする。

<7> 裁判所は、担保権者が<4>又は<5>に規定する期間内に<4>の書面を提出しなかったときは、<1>の許可の決定をすることができるものとする。

<8> 裁判所は、必要があると認めるときは、<1>の許可の決定において、(イ)<1>による金銭の支払がされ、又は当該決定が取り消されにるまでの間、担保権の実行の禁止を命ずることができるものとする。

<9> <1>の許可の決定に対しては、担保権者は、即時抗告をすることができるものとする。

<10> <9>の即時抗告についての裁判があった場合には、その決定書を担保権者に送達しなければならないものとする。この場合においては、<3>後段の規定を準用するものとする。

(イ)金銭の支払等
<1> 破産管財人は、(ア)<1>の許可の決定が確定したときは、売得金の額(先順位の担保権が存する場合にあっては、売得金の額から先順位の担保権の被担保債権の額を控除した額)に相当する金銭を裁判所の定める期限までに(7)<1>(ii)の担保権を有する者に支払わなければならないものとする(先順位の担保権が存する場合にあっては、売得金の額から先順位の担保権の被担保債権の額を控除してなお残額が存する場合にご限るものとする。)。

<2>(ア)<2>(iv)の担保権は、<1>による金銭の支払があった時(<1>の場合以外の場合にあっては、(ア)<1>の許可の決定が確定した時に消滅するものとする。

(注)
1 B案は、担保権が消滅する根拠については(前注)1における基本的な考え方を採用しつつ、その対象となる担保権者をいわゆる判子代を要求する後順位担保権者等に限定し、これらの者の有する担保権を消滅させることで、実務上の二一ズに応える制度とするものである。中間試案の丙案では、担保権を(i)「許可に係る担保権」、(ii)「利害関係に係る担保権」、(iii)それ以外の担保権の3つに分類していたが(中間試案第1部、第12の2(3)ウ丙案参照)、組入額についてその合意を取りつける必要のある(ii)「利害関係に係る担保権」の類型は価額決定の手続において意味をもち、B案においては、価額決定の手続を設けないものとすることから、(ii)の類型を設ける必要はなくなり、したがって、 B案においては、担保権は、(a)許可により消滅すべき担保権(上記(i))と(b)それ以外の担保権(上記(ii)及び(iii))に2分されることになる。

2 中間試案では、合意の形成を促進ないし補完するための仕組みとして、民事調停法第17条に規定する決定手続に相当する制度を設けるか否かにつき検討する旨注記していた(2ウ丙案(イ)(後注)参照)。しかし、意見照会においては、裁判所が破産管財人の提示した支払額をもとにして組入額を決定するという制度を設けることができるのかという疑問を呈する意見が相当数寄せられたところであり、今回は、このような手続を制度として設けることはしないこととしている。

3(イ)<2>では、中間議案と同様に、担保権者を個別に取り扱うことを前提として、「許可に係る担保権」は、金銭の支払があった時又は許可の決定が確定した時に消滅するものとしており、その結果、目的物の上に存する担保権の消滅時期がそれぞれ異なるという事態が生ずることになる。また、 B案では、その後「利害関係に係る担保権」を有する者が結果的に担保権の消滅に同意せず「任意売却がされない場合であっても、この制度の対象となる担保権は消滅するということになる、このような結果を避けるためには、「利害関係に係る担保権」を有する担保権者の同意を申立ての要件とい、かつ、任意売却の対象財産に設定されている担保権を一括して消滅させるように制度設計すること等が考えられるが、この点についてどのように考えるか。

4 B案については、先順位担保権者の被担保債権の額で「許可に係る担保権」に該当するかどうかが決まることから、各担保権者の被担保債権の額をどのように争うかが問題となる。例えば、「許可に係る担保権」を確定するために、まず、破産管財人が各担保権者の被担保債権の額を定め、これに対して担保権者から異議を出させる等の方法が考えられるが、 B案では、このような手続は採用せず、破産管財人の示した被担保債権の額((ア)<2>(v)参照)に異議があるときは 担保権者は、組入額等についての争い方と同様に、担保権の実行を求めるか、実行を求めずに許可決定の手続の中で争い、許可決定に対しては即時抗告をするものとするかを選択することになるものとしている。この点について、どのように考えるか。

(4)民事執行手続による換価
民事執行法第63条及び同法第129条の規定(その他強制執行の手続に関する法令において準用する場合を含む。)は、破産法第203条第1項に規定する財産の換価には、適用しないものとする。

5 商事留置権の消滅請求
破産管財人は、破産宣告当時破産財団にて属する財産につき商法の規定による留置権を有する者に対して、その債権額が留置権の目的である財産の価額を超える場合において、破産債権者一般の利益に適合するときは、裁判所の許可を得て、当該留置権者に対し、その財産の価額に相当する金銭を支払って、留置権の消滅を請求することができるものとする。

(注)
1 清算型の破産手続においても、例外的に営業が継続される場合があり、このような場合には、財産を直ちに任意売却をする場合以外にも、当該財産を自ら加工した上で売却することにより、破産財団の増殖に寄与する場合も十分考えられる等の理由から、意見照会においては、4(3)の担保権の消滅の制度とは別に、商事留置権の消滅請求の制度 (中間試案第1部、第12の2(後注)参照)を設けることについて多数の賛成意見が寄せられた。そこで、5では、意見照会において示されたこの制度の必要性にかんがみ、商事留置権を消滅させて目的物を迅速に確保することができる仕組みを設ける考え方を提示している。なお、この制度は、破産手続における商事留置権の留置的効力の有無という問題に関わるものであるが、これを否定する立場であっても、破産管財人からの返還請求を拒む権能を認める見解等もあり、この制度が、当然に商事留置権の留置的効力を認める立場を前提とするものとは必ずしもいえないものと考えられる。

2 規定ぶりについては、新会社更生法第29条にならうものとすることで、どうか。

目次

○トップページ

■第一次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第二次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第三次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■残された課題

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法