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【第一次案】第1部 破産手続: 第5 破産管財人

1 破産管財人の資格
法人は、破産管財人となることができるものとする(民事再生法第78条において準用する同法第54条第3項、会社更生法改正案第67条第2項参照)。

2 複数管財人の職務執行
<1> 破産管財人が数人あるときは、共同してその職務を行うものとする。ただし、裁判所の許可を得て、それぞれ単独にその職務を行い、又は職務を分掌することができるものとする(民事再生法第70条第1項、会社更生法改正案第69条第1項参照)。

<2> 破産管財人が数人あるときは、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りるものとする(民事再生法第70条第2項、会社更生法改正案第69条第2項参照)。

3 代理人の選任
(1)選任の要件
<1> 破産管財人は、必要があるときは、その職務を行わせるため、自己の責任で一人又は数人の代理人を選任することができるものとする(民事再生法第71条第1項、会社更生法改正案第70条第1項参照)。

<2> <1>の代理人の選任については、裁判所の許可を得なければならないものとする(民事再生法第71条第2項、会社更生法改正案第70条第2項参照)。

(2)代理人の報酬等
代理人は、費用の前払及び裁判所が定める報酬を受けることができるものとする(民事再生法第78条において準用する同法第61条第1項、会社更生法改正案第81条第5項参照)。

4 破産管財人の裁判所への報告
<1> 破産管財人は、破産宣告後遅滞なく、次の事項を記載した報告書を、裁判所に提出しなければならないものとする(民事再生法第125条第1項、会社更生法改正案第84条第1項参照)。

(i)破産宣告に至った事情
(ii)破産者及び破産財団に関する過去及び現在の状況
(iii)法人である破産者の役員等に対する損害賠償請求権の査定の申立て又はその保全処分を必要とする事情の有無
(iv)その他破産手続に関し必要な事項

<2> 破産管財人は、<1>によるもののほか、裁判所の定めるところにより、破産財団の管理及び換価の状況その他裁判所の命ずる事項を裁判所に報告しなければならないものとする(民事再生法第125条第2項、会社更生法改正案第84条第2項参照。

5 破産管財人の職務執行に対する妨害行為への対策
破産管財人は、職務の執行に際し抵抗を受けるときは、その抵抗を排除するために、裁判所の許可を得て、警察上の援助を求めることができるものとする。
(注) 民事執行手続における執行官に関する規定(民事執行法第6条第1項)と同旨の規定を、破産手続にも導入することについては、意見照会においても、管財業務に伴い様々な妨害行為が起きている現状では、警察上の援助を得なければ管財業務の履行を確保することができないことがあるので必要である等の意見が寄せられている。このような意見照会の結果を踏まえて、破産管財人は、裁判所の許可を得て、警察上の援助を求めることができるものとすることで、どうか。なお、破産管財人の職務に対する妨害行為自体は威力業務妨害罪(刑法第234条)などによる対処も可能であるが、それ以外に破産管財人の職務に対する妨害行為を破産法上の刑罰の対象とするかどうかについては、なお検討するものとする。

6 破産者及び子会社に対する調査等
<1> 破産管財人は、破産者の帳簿、書類その他の物件を検査することができるものとする(民事再生法第78条において準用する同法第59条、会社更生法改正案第77条第1項参照)。

<2> 破産管財人はァその職務を行うため必要があるときは、破産者の子会社又は連結子会社に対してその業務及び財産の状況につき報告を求め、又はその帳簿、書類その他の物件を検査することができるものとする(会社更生法改正案第77条第2項参照)。

<3> <2>の子会社又は連結子会社は、正当な理由がない限り、<2>による報告又は検査を拒むことができないものとする(同条第3項参照)。

(注)
1 再生手続においては、再生債務者の財産状況を把握するために、再生債務者の帳簿等に対する破産管財人の物件調査権を認めている。また。更生手練においても、同様の趣旨から、更生管財人の更生会社に対する物件調査権を認めるものとしている。破産法において、破産者の財産状況を的確に把握する手段として、このような制度の必要性は同様に認められ、再建型の倒産手続と異なるところはないものと考えられる。加えて、実務上、破産者は破産宣告後は協力的にならない場合も多く、現行の破産法における説明義務では財産状況を的確に把握することができないとの指摘がされ、意見照会の結果によっても、破産者による財産隠匿等が種々認められるが、現行法では実効性のある手段が不十分であり、破産管財人の調査権限を明確にすべきであるとの指摘がされている。 そこで、再生手続及び更生手続と同様に、破産者等に対する物件調査権を認めるものとするものである。

2 会社更生法改正案においては、<1>に加えて、子会社に対する物件調査権を認める制度が設けられている。すなわち、更生手続においては、1で述べたとおり、更生会社の業務及び財産状況に対する調査権が認められているものの、実務上は、更生会社の子会社等を通じて資産隠しや不明朗な経理処理がされている事例も少なくないことから、更生会社に対する調査権のみでは不十分であるとの指摘を受けて、新たに規定されたものである。この点については、破産手続においても、同様の事例が少なくないと指摘がされ、意見照会においても、関連会社などに破産者の資産が移動している場合もあるので、破産者の財産状況を的確に把握するためには、会社更生法改正案と同様に、子会社に対する物件調査権を認める必要性が高いとの意見が寄せられている。そこで、これらの指摘等を踏まえ、破産手続においても、同様に子会社に対する物件調査権を設けるものとしている。なお、<3>についても、会社更生法改正案と同様に、子会社等が営業上の秘密の保持のため調査に応じ難いこと等も想定されることから、この点に配慮して、子会社は、正当な理由があるときは、報告又は検査を拒むことができるものとしている。

3 制裁については、会社更生法改正案においては、1 0 0万円以下の過料とされているが(同案第261条第2項)、倒産犯罪の全体的な整備の中でなお検討するものとする。

4 <2>及び<3>については、再生手続についても、同様の手当をするものとする。

目次

○トップページ

■第一次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第二次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第三次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■残された課題

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法