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【第一次案】第1部 破産手続: 第10 破産債権の届出、調査及び確定

1 破産債権の届出

(1) 一般調査期間の末日又は一般調査期日後の届出
<1> 破産債権者がその責めに帰することができない事由によって一般調査期間の末日又は一般調査期日までに届出をすることができなかった場合には、その事由が消滅した後1月以内に限り、その届出の追完をすることができるものとする。

<2> <1>に定める届出の追完の期間は、伸長し、又は短縮することができないものとする。

<3> 一般調査期間の末日又は一般調査期日後に生じた破産債権については、その権利の発生した後1月の不変期間内に、届出をしなければならないものとする。

<4> <1>及び<2>は、破産債権者が、その責めに帰することができない事由によって、届け出た事項について他の破産債権者の利益を害すべき変更を加える場合について準用するものとする。(民事再生法第95条、新会社更生法第139条参照)

(注)
1 中間試案では、債権の届出につき時期的な制限は設けるものの、清算型の倒産処理手続である破産手続においては、債権届出期間までに届出をしなければならないとすることは厳格に過ぎると考えられることから、債権の届出をすることができる期間を一般調査期間の末日又は一般調査期日までとして、その後の債権の届出を制限する一方で、追完事由は、再生手続のように「責めに帰することができない事由」ではなく、それよりも厳しい「やむを得ない事由」とする案を示していた(中間試案第1部、第10の1(1)参照)。意見照会においては、債権の届出を一定期間以後制限すること自体については、ほぼ異論が出されなかったところであるが、追完事由を「やむを得ない時由」とすることについては、反対意見が相当数寄せられた。破産手続においても債権の届出につき時期的な制限を設けるものとする場合に、再生手続及び更生手続と異なって、一般調査期間の満了又は一般調査期日の終了までの届出を可能とするとしても、破産手続の性質上、追完事由を再生手続及び更生手続よりも厳格にする必要性は少ないと考えられることから、このような意見照会の結果を踏まえて、上記の案では追完事由を「責めに帰することができない事由」と改めることとしている。

2 なお、追完に関連して、破産者の異議の追完を定めた破産法第288条の見直しについても検討する必要がある。同条は、破産者の異議の追完について独立の行為としての原状回復の申立てを必要としているが、届出の追完と同様に、期間の徒過によって不適法とされる行為が適法である旨の主張をすれば足り、あえて独立の行為としての原状回復の申立てをさせる必要はないと考えられる(訴訟行為一般の追完にてついては、かつては民事訴訟法上、原状回復の申立てを必要としていたが、大正15年改正によって原状回復の申立ての制度は廃止されている。)。そこで、破産者の異議の追完についても、他の追完の制度と同様に 「破産者がその責めに帰することができない事由により債権調査期日に出頭することができなかったときは、その事由がやんだ日から1週間内に限り異議を追完することができるものとする」旨の規定とすることで足りると考えられるが、どうか。なお、破産者の異議の追完については、更生手続や再生手続と同様に、そもそもこのような異議の追完の制度を設けないものとすることも考えられる。しかし、両手続においては、債権調査につき書面による調査のみが採用され、1週間以上3週間以下の調査期間が設けられるのに対し、破産手続の期日における調査については、貴めに帰することのできない事由により当該期日に出頭することができなかった場合のために異議の追完を認める必要性も否定できないと考えられることから、この制度を維持することでどうか。

(2)届出名義の変更
届出をした破産債権を取得した者は、債権届出期間が経過した後でも、届出名義の変更を受けることができるものとする(民事再生法第96条前段、新会社更生法第141条参照)。

(後注)
租税債権も一定の場合に優先的破産債権となるものとする場合(中間試案第3部、第2の1(1)参照)には、破産宣告前の罰金等(破産法第254条)と同様に、優先的破産債権に該当するものについては、債権額及び原因を裁判所に届け出なければならないものとする必要がある(この場合には、破産宣告前の罰金等と同様に、届け出られた債権は、債権表に記載されるが、債権調査手続は行われないことになる。)。なお、このような租税債権や破産宣告前の罰金等の届出(現行法上は、遅滞なく届け出なければならないものとされている。)が前記1(1)の時期的な制限を受けるものとするかどうかについて検討する必要がある。

2 破産債権の調査
(1) 債権調査
<1> 裁判所による破産債権の調査は、破産管財人が作成した認否書並びに破産者及び破産債権者の書面による異議に基づいてするものとする(民事再生法第100条、新会社更生法第145条参照)。

<2> <1>にかかわらず、裁判所は、必要と認めるときは、破産債権の調査を期日における破産管財人の認否並びに破産者及び破産債権者の異議に基づいてすることができるものとする。

(注)意見照会の結果によると、破産手続においても書面による債権調査(<1>)を導入することについては大多数が賛成意見であったが、実務上、破産管財人が一般調査期間内に債権を認否することができない場合もあり、このような場台にあっては、破産管財人は認否書において当該債権を認めない旨の記載をせざるを得ず、その結果、債権確定手続が頻発する可能性があり、かえって管財業務の負担が増大するおそれがあること等を理田として、期日における債権調査(<2>)を原則とすべきであるとする意見も寄せられた。しかし、この点については、期間による債権調査を原則とした場合であっても、上記の場合には、「必要と認めるとき」に当たると考えられるので、期日による債権調査を選択することができ、運用上は支障がないものと考えられるが、どうか。

(2)債権調査期間又は債権調査期日
<1> 裁判所は、破産宣告と同時に、一人又は数人の破産管財人を選任し、かつ、次に掲げる事項を定めなければならないものとする。
(i) 債権届出期間
(ii)破産者の財産状況を報告させるための債権者集会を招集するときは、その期日
(iii)一般調査期間又は一般調査期日(以下「一般調査期間等」という。)

<2> <1>(iii)にかかわらず、裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を償うに足りなくなる見込み〔おそれ〕があると認めるときは、一般調査期間等を定めないことができるものとする。

<3> <2>の場合において、裁判所は、相当と認めるときは、債権届出期間も定めないことができるものとする。

(注)
1 債権調査期間は、特別の事情がある場合を除き、その期間の初日と債権届出期間の末日との間には1週間以上2月以下の期間をおき、1週間以上3週間以下とし(民事再生規則第18条第2号参照)、債権調査期日は、債権調査期間と平因を合わせて、その期日と債権届出期間の末日との間には1週間以上2月以下の期間をおくものとすることを規則で定めるものとする。第1回債権者集会については、現行の破産法は、破産宣告の日から1月内の開催としているが、この点についてどのように考えるか。

2 <2>及び<3>は、破産宣告の際、財団債権の弁済により、破産財団をもって破産手続の費用を償うに足りなくなる見込みがあると認めるときは、債権調査を行う必要性が少ないことから、破産宣告と同時に、債権調査期間又は債権調査期日を定めないことができるものとし、さらに、債権調査の前提となる債権の届出のための債権届出期間をも定めないことができるとするものである。意見照会においては、債権調査期間又は債権調査期日を定めないことができるという点については賛成する意見が多数寄せられた。これに対し、債権届出期間をも定めないことができるという点については、異時廃止が明らかであり配当が受けられないにもかかわらず、債権者に債権の届出を行わせることは、債権者に無用の労力や費用を使わせることになるし、また、異時廃止が明らかであるにもかかわらず、債権届出期間を設けないものとすれば、債権届出書の管理などを省くことができることから、破産管財人の管財業務を簡素化することに資する等の理由から、これに賛成する意見が相当数寄せられた一方で、反対意見も相当数寄せられた。具体的には、( i)破産宣告時における異時廃止の見込みは、あくまで暫定的なものに過ぎず、その後の手統の進行で配当が可能となることもあり得るところ、そのような結果になった場合には証拠の散逸という事態が生じるおそれがある。(ii)債権届出期間を定めないと、裁判所及び破産管財人としても、債権届出がされるのが否か、あるいは届出がいつされるか等が分からない上、五月雨的に届出がされると、かえって事務手続上混乱するおそれがある、(iii)債権届出期間の定めがないと、届出により時効の中断の効果が生ずるにもかかわらず届け出ること自体できない、あるいはその必要性がないと債権者が誤解するおそれがある等というものである。
そこで、<3>では、( i)(ii)の指摘を踏まえて、将来破産手続の費用を償うに足りなくなる見込みがより確実であると認められる場合、早期に異時廃止が見込まれる場合、債権者数が少なく、事務手続上混乱が生ずるおそれが少ないと見込まれる場合など裁判所が相当と認める場合には、債権届出期間をも定めないことができるものとしている。また、(iii)の指摘については、破産宣告の通知の中で、時効中断等のために債権の届出をすることができる旨を注意的に記載する等教示についての運用上のエ夫で対処しうるとの意見もある。これらの点について、どのように考えるか。

3 一般調査期間等又は債権届出期間を定めなかった場合には、裁判所が、必要に応じてこれらを定める根拠となる規定を設ける必要があると考えられるが、どうか。例えば、「一般調査期間等を定めなかった場合には、いつでもこれを定めることができる。ただし、破産財団をもって破産手続の費用を償うに足りなくなる見込みがなくなったと認めるときは、一般調査期間等を定めなければならない」ものとすることが考えられるが、どうか。なお、一般調査期間等を定める場合には、公告及び通知の対象とする必要がある。

(3)特別調査期間等に関する費用の予納がない場合の破産債権の届出の却下
<1> 裁判所は、債権届出期間経過後の届出又は他の破産債権者の利益を害すべき届出事項の変更があった破産債権について、その調査をするための期間又は期日(以下「特別調査期間等」という。)を定めなければならないものとする。ただし、一般調査期間を定めた場合にあっては、破産管財人が認否書に当該破産債権についての認否を記載しているもの、一般調査期日を定めた場合にあっては 当該期日において当該破産債権について調査をすることについて破産管財人及び破産債権者の異議がないものについては、この限りでないものとする。

<2> <1>本文の場合には、特別調査期間等に関する費用は、<1>の破産債権を有する者の負担とするものとする。

<3> <1>本文の場合には、裁判所書記官は、相当の期間を定め、<2>の費用の予納を命ずる処分をしなければならないものとする。

<4> <3>の処分は、相当と認める方法で告知することによって、その効力を生ずるものとする。

<5> <3>の処分に対する異議の申立ては、その告知を受けた日から一週間の不変期間向にしなけれはならないものとする。

<6> <5>の異議の申立ては、執行停止の効力を有するものとする。

<7> <3>の場合において、<1>の破産債権を有する者が<3>による予納をしないときは、裁判所は、決定で、<1>の破産債権の届出を却下しなければならないものとする。

<8> <7>の決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする。
[<3> 裁判所は、民事訴訟費用等に関する法律の規定に従い<2>の費用の予納を相当の期間を定めて破産債権者に命じた場合において、その予納がないときは、決定で、当該破産債権者の破産債権の届出を却下しなければならないものとする。<4> <3>の決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする。]

(注)
1 本文の案は裁判所書記官が、[]の案は裁判所が、<2>の費用につき予納を命ずるものとする案を記載するものである。 裁判所書記官が予納を命ずる処分をすることができるか否かについては(中間試案第1部、第1Oの1(3)(注1)参照)、意見照会においては、これに賛成する意見と、この処分は形式的な判断事項とはいえないとして反対する意見がそれぞれ寄せられており、その結果を踏まえて、[]で別案を掲げるものとしている。

2 意見照会においては、費用の予納を命ずる場合には、届出期間経過後の届出に「やむを得ない事由」があるか否かの判断も含まれることを前提として、裁判所書記官が費用の予納を命ずる処分をすることに反対する意見が寄せられている。しかし、本案の考え方をとる場合であっても、手続的には、裁判所が期限に後れて届出がされた債権につき追完事由に該当するか否かを判断した上で、<1>の規定により特別調査期間又は特別調査期日を定め、その後に裁判所書記官が<3>の費用の予納を命ずる処分をすることになるので、この処分には追完事由に該当するか否かの判断は含まれないことになる。したがって、予納を命ずる場合にその判断の対象となるのは、特別調査に要する費用の額となるが、具体的には、<1>特別調査期日の場合の官報公告費用。<2>破産債権者等に対する期日の送達費用(破産法第237条)、<3>破産管財人の報酬の追加分であると解されている。上記の特別調査に要する費用のうち、<1>官報公告費用については廃止されることとなり(後記(4)参照)、<2>破産債権者に対する期日の送達費用については破産債権者の数によって形式的に定められるものであり、定型的な計算に基づくことになる。<3>破産管財人の報酬の追加分の費用については、特別調査における調査の対象となる債権の数及びその性質等によって定まるものであると考えられるが、実務上は特別調査に要する費用を一律定額としている運用も多いと指摘されている。以上の点を踏まえて、本案について、どのように考えるか。

3 本案及び別案のいずれを採る場合も、再生手続及び更生手続において、破産手続と同様の手当てを行うものとする。

(4) 特別調査期日の公告
特別調査期日を定める決定の公告の制度(破産法第237条参照)は、廃止するものとする。

3 債権表〔破産債権者表〕等
(1)債権表【破産債権者表〕の記載
<1> 裁判所書記官は、破産債権の調査の結果を債権表〔破産債権者表)に記載しなにナれぱならないものとする(民事再生法第104条第2項、新会社更生法第150条第2項参照)。

<2> 裁判所書記官は、破産管財人又は破産債権者の申立てにより、破産債権の確定に関する訴訟の結果(査定の申立てについての裁判に対する訴えが期間内に提起されなかったとき、又は却下されたときは、当該裁判内容)を債権表[破産債権者表]に記載しなければならないものとする(民事再生法第110条、新会社更生法第160条参照)。

(2)債権証書への記載
債権証書に当該債権が確定した旨を記載する制度(破産法第241条第2項参照)は、廃止すものとする。

(3)債権表〔破産債権者表〕の更正
債権表〔破産債権者表〕の記載に誤りがあるときは、裁判所書記官は、申立てにより又は職権で、いつでもその記載を更正する処分をすることができるものとする(民事訴訟法第257条参照)。

(注)
1 この更正処分に対して異議がある場合は、破産法第108条において準用する民事訴訟法第121条によるものとする。

2 再生手続における再生債権者表及び更生手続における更生債権者表等についても、同様の手当てを行うものとする。

4 破産債権の確定
(1)決定による債権確定手続
破産憤権の調査において、破産管財人又は届出債権者が異議を述べた破産債権の内容については、査定の手続及び査定の申立てについての裁判に対する異議の訴えの手続により確定を行うものとする(民事再生法第105条、新会社更生法第151条参照)。

(2)債権確定手続の申立期間等

<1>(1)の査定の申立ては、異議等のある破産債権に係る調査期間の末日又は調査期日から1月の不変期間内にしなければならないものとする(民事再生法第105条第2項、新会社更生法第151条第2項参照)。

<2> 執行力ある債務名義又は終局判決のある破産債権に対して異議を述べた異議者が、破産者がすることのできる訴訟手続によってその異議を主張する場合には、当該異議の主張は、当該破産債権に係る調査期間の末日又は調査期日から1月の不変期間内にしなければならないものとする(民事再建法第109条第3項、新会社更生法第158条第3項参照)。

目次

○トップページ

■第一次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第二次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第三次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■残された課題

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法