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【第一次案】第1部 破産手続: 第7 債権者集会

1 債権者集会の招集

(1)財産状況報告集会(第1回債権者集会)
<1> 裁判所は、破産者の財産状況等を報告するため、債権者集会を招集しなければならないものとする。ただし、債権者の数その他の事情を考慮して相当と認めるときは、この限りでないものとする。

<3> <1>ただし書の場合は、裁判所は、破産管財人に対して、破産債権者の閲覧に供するため、破産者及び破産財団に関する過去及び現在の状況等を記載した報告書(前記第5の4<1>参照)の写しの備置き等を命ずる措置をとることができるものとする。

(注)
1 上記の考え方は、中間試案に掲げられた第1回債権者集会についての考え方、すなわち、債権者の数その他の事情を考慮して相当と認めるときは、裁判所は、債権者集会を開催する代わりに、<2>の代替措置をとることができるものとするものである。裁判所が代替措置を選択した場合において破産債権者の招集請求権の規定を適用すべきか否かについては、意見照会の結果においては、このような招集請求権を適用すると、裁判所が代替措置を選択した趣旨を没却することから適当ではないとの意見が多数であった。

2 破産管財人は、再生手続及び更生手続と同様に、破産宣告に至った事情及び破産者及び破産財団に関する過去及び現在の状況等に関する報告書を作成して遅滞なく裁判所に提出しなければならないものとし(前記第5の4参照)、このような措置に加えて、裁判所は、<2>の措置を命ずることによって、情報の開示の措置を補完することができることとしている。もっとも、<2>については、意見照会の結果によれば、破産管財人の事務所には、閲覧に供せるだけの人的・物的設備がないとして反対する意見もあったが。破産債権者に対して財産状況を周知させる必要性は再生手続と異なるところはないと考えられるし、他方で、意見照会では、規則において、破産管財人は、裁判所に提出した報告書の要旨を知れている破産債権者に周知させるため、報告書の要旨を記載した書面の送付等の措置をとらなければならない旨を定める(民事再生規則第63条参照)こととすれば、破産管財人の事務所に現実に訪れる破産債権者は限られるものと考えられるとの指摘もされている。そこで、このような措摘を踏まえて、再生手続と同様に、裁判所は、破産管財人に対して、破産債権者の閲覧に供するため、破産者及び破産財団に関する経過及び現状等を記載した報告書の写しの傭置き等を命ずる措置をとることができるものとし、これと併せて、破産管財人は、裁判所に提出した報告書の要旨を知れている破産債権者に周知さぜるため、報告書の要旨を記載した書面の送付等の措置をとらなければならない旨を定めるものとすることで、どうか。

(2)(1)以外の場面における債権者集会
ア ー般的な債権者集会
<1> 裁判所は、次の各号に掲げる者のいずれかの申立てがあった場合には、債権者集会を招集しなければならないものとする。ただし、債権者の数その他の事情を考慮して相当と認めるときは、この限りでないものとする。

(i)破産管財人
(ii)債権者委員会
(iii)知れている破産債権者の総債権について裁判所が評価した額の十分の一以上に当たる破産債権を有する破産債権者

<2> 裁判所は、<1>の申立てがない場合であっても、相当と認めるときは、債権者集会を招集することができるものとする。

<3> <1>ただし書の場合において、債権者集会における決議を要するときは、裁判所は、これに代えて、書面による決議(民事再生法第172条参照)を行わなければならないものとする。

(注)
1 前記(1)の場合以外の一般的な債権者集会の招集請求権のあり方を検討するにあたっては、債権者集会の権限の範囲についても考慮する必要がある。破産法上の債権者集会の権限は、(a)破産管財人や監査委員の任免に関するもの(破産管財人の解任決議(第167条)、監査委員の設置(第170条)、監査委員の選任(第171条第1項))、(b)破産財団の管理及び換価に関するもの(監査委員の同意に代わる決議(第183条第1項)、第1回債権者集会の決議事項(第194条)、監査委員の同意に代わる裁判所の許可(第198条第2項)、監査委員の同意を得た場合における破産管財人の行為の中止命令(第2 0 0条)、寄託高価品の返還請求(第206条第1項)、不換価財産の処分決議(第281条)、異時廃止の決定をする際の意見聴取(第353条第1項))。(c)破産手続の進行に関して必要な説明を受けること(破産者等の説明義務(第153条)。破産管財人等の計算の報告(第168条第1項)、第1回債権者集会における破産管財人の報告(第193条)、破産管財人の状況報告(第205条))、(d)破産手続を終了させ、強制和議に移行させるための決議(債権者集会の期日(第299条第1項)、和議の可決要件(第306条第1))、の4つに区分される。これらは、中間試案においては、次のとおりとされている。(a)については、監査委員制度の廃止に伴い、破産管財人の解任決議(第167条)のみが存続することになる(後記第7の3)。(b)については、監査委員制度の廃止に伴い、監査委員の同意に代わる債権者集会の決議が廃止され、その他については個別に検討することとしている(第281条については、後記ウ(注)4参照)が、異時廃止の決定をする際の意見聴取(破産法第353条第1項)は存続することになる。(C)のうち、第1回債権者集会における報告(第193条)については前記(1)において、計算の報告(第168条第1頃)については後記ウにおいて、それぞれ個別に検討するものとされているが、破産者等に説明を求める決議をするため の債権者集会(第153条及び第205条)は存続することになる。(d)については、強制和議の制度の廃止に伴い、削除するものとしている。

2 以上のとおり、今回の見直しにおいて、債権者集会の権限となる事項は、前記(1)の第1回債集会における報告(第193条)を除くと、(い)破産管財人の解任決議(第167条)、(ろ)異時廃止の決定をする際の意見聴取(第353条第1項)、(は)破産者等に説明を求める決議(第153条及び第205条)及び(に)計算の報告(第168条第1項及び第281条)となる。したがって、債権者集会は、以上の権限の範囲内において開催されることになると考えられる。もっとも、このうち(い)については、後記3でその廃止を検討しており、(ろ)については後記イで書面による意見聴取、(に)については後記ウで債権者集会外での異議の陳述を検討することとしている。そうすると、一般の債権者集会において問題となるのは、(は)の決議がされる場合であると解せられるが、債権者等が債権者集会の権限事項について集会の開催を求める場合には招集請求権自体を否定することはできないと考えられる。もっとも、債権者集会の開催の要否についてば(1)の財産状況報告集会の要否と同様に、裁判所が債権者の数その他の事情を考慮してその判断をするのが適切であると考えられ、同様の制限を認める必要があると考えられる。ただし、債権者の数その他の事情を考慮して相当と認めて、債権者集会を開催しない場合も、代替措置は必要であり、(は)のように決議が必要な場合には債権者集会におげる決議に代えて書面による決議を認める必要があると考えられる。<3>は、その旨を定めるものであるが、この点についてどのように考えるか。

イ 異時廃止の決定をする際の意見聴取のための債権者集会
<1> 裁判所は、異時廃止の決定をする場合には、債権者集会において破産債権者の意見を穂かなければならないものとする。

<2> <1>にかかわらず、裁判所は、相当と認めるときは、<1>の債権者集会における破産債権者の意見の聴取に代えて、書面によって破産債権者の意見を聴くことができる。この場合においては、破産債権者の債権者集会の招集請求権(前記ア<1>参照)についての規定は、適用しない。

ウ 破産管財人の計算の報告
(ア)債権者集会における計算の報告
<1> 破産管財人の任務が終了した場合には、破産管財人又はその承継人は、遅滞なく、債権者集会に計算の報告をしなければならないものとする。

<2> 破産者、破産債権者又は後任の破産管財人が、債権者集会において、計算について異議を述べなかったときは、これを承認したものとみなすものとする。

<3> 破産管財人は、利害関係人の閲覧に供するため、計算の報告書を債権者集会の日から3日前に裁判所に提出しなければならないものとする。

<4> <1>の債権者集会においては、価値がないために破産管財人が換価しなかった財産の処分について、決議をしなければならないものとする。

(イ)書面による計算の報告
<1>(ア)<1>の場合には、破産管財人又はその承継人は、(ア)<1>の報告に代えて、遅滞なく、計算の報告書を作成して裁判所に提出するとともに、破産者、破産債権者又は後任の破産管財人(以下(イ)において「破産者等」という。)の閲覧に供するため、<2>により破産者等が異議を述べることができる期間が満了するまでの間、その写しを自らの事務所に備え置く措置を執ることができるものとする。

<2> 裁判所は、破産者等に対し、<1>の報告書及びその写しが備え置かれている旨及びその計算に異議があれば一定期間内にこれを述べるべき旨を公告しなければならないものとする。この場合においては、その期間は、1月を下ることができないものとする。

<3> 破産者等が<2>の期間内に異議を述べなかったときは、計算を承認したものとみなすものとする。

<4> <1>の措置を執る場合には、破産管財人又はその承継人は、(ア)<4>の処分について、裁判所の許可を得なければならないものとする。

(注)
1 この考え方は、破産管財人の任務が終了した場合には、破産管財人は、債権者集会における計算の報告((ア)<1>)(破産法第168条参照)と書面による計算の報告((イ)<1>とを選択的に行うことができるものとするものである。

2 倒産法部会においては、破産管財人の免責の効果を導くことを制度として予定する意義が少ないものとして、上記(ア)<3>及び(イ)<2><3>を設ける必要はないとする考え方も示された。この点、意見照会の結果によれば 計算の報告により、その後、配当の計算違いについての免責の効果があることに意味があるとして、制度としては残すべきであるとの意見が多数であった。免責の必要性が乏しい場合等には、上記(ア)<2>及び(イ)<2><3>を適用しないものとする考え方もあり得るが、どのように考えるか。

3 2を前提として、(ア)<1>及び(イ)<1>(<4>)は、報告義務の主体に個人である破産管財人の承継人(相続人)を含めるとしている。現行の破産法においては、破産管財人が死亡等の原因により計算の報告ができない場合であって。破産管財人に過誤があったときは、相続人は、破産管財人に対する損害賠償請求権を相続することになるが、相続人が破産管財人に代わり計算の報告をすることによって、この損害賠償責任を免れることができる。この場合、承継人の報告義務の側面を強調して、実際上の能力を有しない相続人等の承継人に報告義務や備置き義務を負わせることはおよそ適当ではないとして、(ア)<1>又は(イ)<1>(<4>)の主体に破産管財人の承継人を含めないものとすべきであるとの意見もあるが、一方で、上記のとおり、承継人がこのような報告義務を尽くせば、破産管財人に対する損害賠償請求権が相続される前に、免責されるという利益を受けられるという側面を強調する立場からは、承継人に免責を受ける機会を確保するために、(ア)<1>及び(イ)<1>(<4>)の主体に承継人を含めるべきであるという指摘もされている。なお、計算の報告は、破産債権者等が破産管財人により行われた管財業務を最終的に検証するという意義を有するものであるが、その計算の報告に要する費用を誰が負担するかという点も問題となる。この点については、現行の破産法では、任務に関する計算の報告を、当該任務を行った破産管財人又はその承継人の負担で行うものとされており、破産財団の負担により後任の破産管財人を選任した上で、その破産管財人に計算の報告をさせることまでは予定していないと解されている(破産法第168条第1項参照)。したがって、破産管財人や相続人等の承継人の負担によって計算の報告をさせる必要があり、むしろ、それが損害賠償責任の免責の趣旨にも適合すると考えられる。なお、実務上、専門家ではない承継人が計算報告の義務を負う場合であっても、専門的な知識を有する代理人を選任して報告している場合があるとの指摘もされている。(ア)<1>及び(イ)<1>(<4>)では、以上の点を考慮し、報告義務の主体に破産管財人の承継人を含めるものとしているが、この点についてどのように考えるか。

4 現行の破産法では、計算報告のために招集した債権者集会において、破産管財人は、価値がないために換価しなかった財産の処分について承認の決議を受けなければならないものとされている(破産法第281条)が、(イ)<4>では、破産管財人が(イ)による書面による計算の報告という方法を選択した場合には、債権者集会の決議に代えて、裁判所の許可を得なければならないものとしている。もっとも、実務上は、換価が不可能な財産がある場合には、最後配当までに、現行の破産法第197条第12号に規定する権利の拠棄についての許可を得た上で、その財産を放棄している事例が多いと指摘されていることからすると、このような決議の制度自体を廃止するものとすることも考えられる。この点についてどのように考えるか。

2 必要的決議事項の取扱い
(1) 営業の継続
破産管財人は、破産宣告がされた後であっても、裁判所の許可を得て、営業を継続することができるものとする。

(2)高価品の保管方法
破産管財人は、高価品の保管方法について定め、裁判所に届け出なければならないものとすることで、どうか。

(注)意見照会の結果によっても、高価品の保管方法についての判断は、形式的・画一的なものであるから、(2)に定める方法によっても、その適正さを図りつつ、管財業務の円滑な進行を実現することができるとの意見が多数であった。

3 破産管財人の解任
裁判所は、破産管財人が破産財団の管理を適切に行っていないとき、その他重要な事由があるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産管財人を解任することができるものとする。この場合においては、その破産管財人を審尋しなければならないものとする(民事再生法第78条において準用する同法第57条第2項、会社更生法改正案第68条第2項参照)ことで、どうか。

(注) この考え方は、再生手続と更生手続と同様に、裁判所の監督権の発動として、裁判所による破産管財人の解伍権を定めるものであり、具体的には、裁判所は、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産管財人を解任することができるものとするものである。現行の破産法における債権者集会の解任の決議(第167条前段参照)は、裁判所の解任権の職権発動を促すものに過ぎず、裁判所はこの決議に拘束されないと解されている。したがって、あえて債権者集会の決議の方法によらなければならないものとはせず 再生手続及び更生手続との均衡を図る観点から、これらの手続と同様に、破産債権者が破産管財人の業務遂行の適正さについて意見表明をする機会を与えるために、利害関係人としての各破産債権者が、債権者集会の決議によらなくても、破産管財人が破産財団の管理を適切に行っていないときなど重要な事由があるときは、解任の申立てをすることができるものとすることで、どうか。

4 決議の成立要件
債権者集会の決議案を可決するには、議決権を行使することができる破産債権者で出席した者の議決権の総額の2分の1巻超える議決権を有する者の賛成がなければならないものとする。

5 債権者集会期日の労働組合等への通知
債権者集会の期日は、破産者の使用人その他の従業者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、破産者の使用人その他の従業者の過半数で組織する労働組合がないときは破産者の使用人その他の従業者の過半数を代表する者に通知しなければならないものとする(民事再生法第115条第3項、会社更生法改正案第115条第3項参照)。

目次

○トップページ

■第一次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第二次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第三次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■残された課題

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法