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【第三次案】第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等: 第1 個人の破産手続に関する特則

1 自由財産
(1)自由財産の範囲
ア 民事執行法第131条第4号及び第5号の動産も、自由財産とするものとする。
イ 自由財産のうち、金銭(民事執行法第131条第3号参照)の額については、標準的な世帯の必要生計費(民事執行法施行令第1条参照)を基準として、その3月分とするものとすることで、どうか。

(注)
第 24回会議の審議においては、上記イの自由財産となるべき金銭の額について、標準的な世帯の必要生計費を基準として、担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案第3条による改正後の個別執行における差押禁止金銭の額と同様にその2月分とすべきであるとの意見と、破産手続の特殊性を考慮してその3月分とすべきであるとの意見に分かれた。破産者は、破産手続開始の決定があると、原則として、その全財産の管理処分権を失った状態でその後の生活を送らなければならないこととなり、個別の財産について執行を受けた場合に比べて、生活に必要な資産等を確保することが一般的に困難であるといえる。そこで、このような事情を考慮して、破産者の生活の維持を図るため、破産手続における自由財産となるべき金銭の額は、個別執行における差押禁止金銭の額に、さらに、標準的な世帯の必要生計費の1月分を加えて、その3月分とすることで、どうか。

(2)自由財産の範囲の拡張の裁判
<1> 裁判所は、破産手続開始の決定が確定した日から1月を経過する日までの間、破産者の申立てにより又は職権で、決定で、破産者の生活の状況、破産手続開始の決定時において破産者が有していた自由財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、破産財団に属しない財産(自由財産となるべき財産)の範囲を拡張することができるものとする。
<2> 裁判所は、<1>の決定をするにあたっては、破産管財人の意見を聴かなければならないものとする。
<3> <1>の申立てを却下する決定に対してには破産者は、即時抗告をすることができるものとする。
<4> <1>の決定又は<3>の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならないものとする。この場合においては、代用公告の規定は、適用しないものとする。

(注)
1 第24回会議の審議において、職権によって<1>の決定をすることができるものとするとの考え方については異論がなかったことから、裁判所は職権によって決定をすることができるものとする。
2 自由財産の範囲の拡張の裁判の要件については、当該申立てに係る財産が破産者の生活を維持するために必要かどうか、破産者の生活を維持するためにはどの程度の拡張が必要なのかなどを判断するために、扶養家族が多いこと、多額の医療費がかかること等の破産者の現在の生活の状況のみならず、中小企業の経営者が破産した場合等のように当分の間就業見込みがなく収入の当てがないこと等の将来の事情をも考慮する趣旨で「破産者の生活の状況」、「破産者が収入を得る見込み」を考慮すべき事情の例として示すことで、どうか。また、第24回会議の審議において、破産者が破産手続開始時に自由財産となるべき金銭の全額を手元に有していないという事情は、自由財産の範囲の拡張の裁判において考慮することで対処するとの意見が大勢を占めた。そこで、このような事情を考慮することができることを明確にする趣旨で、「破産手続開始の決定時において破産者が有していた自由財産の種類及び額」をも例示することで、どうか。
3 破産手続の円滑な進行を図るため、<1>の決定に対しては、破産債権者は即時抗告をすることができないものとするが、破産管財人は、破産財団の管理について責任を負い、かつ、総破産債権者の利益を実現する地位にあることから、裁判所は、<1>の決定をするにあたっては、破産管財人の意見を聴かなければならないものとして、破産債権者の利益保護を図ることで、どうか。
4 前述のとおり、第24回会議の審議においては、破産者の手元に自由財産となるべき金銭の全額がないという事情は、自由財産の範囲の拡張の裁判における考慮要素となるとの意見が大勢を占めた。このように考えると、破産者は<1>の決定に対して重大な利害関係を有することになることから、破産者には即時抗告権を認めるものとする。
5 なお、自由財産の範囲の拡張のみならず縮小の裁判を認めることも検討すべきであるとの指摘があった。しかし、法定された自由財産の範囲は、破産者の健康で文化的な生活を保障するために認められたものであるから、この縮小を認めることはこの趣旨を没却することとなり、相当でないと考えられる。

2 破産者に対する監守
破産者(これに準ずる者(破産法第152条参照)を含む。)に対する監守の制度は、廃止するものとする。

3 扶助料の給与
破産者及びこれに扶養される者に対する扶助料の給与の制度(破産法第192条第1項及び第194条参照)は、廃止するものとする。

目次

○トップページ

■第一次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第二次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第三次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■残された課題

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法