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【第二次案】第4部 その他

倒産犯罪

1 破産財団を構成する財産の価値を侵害する行為及びその収集を困難にする行為(詐欺破産行為)の処罰

<1> 債務者に危機的状況が発生した後において、債権者を害する目的で、以下の行為をした者は処罰し、情を知って、(iv)に規定する行為の相手方となった者も処罰するものとすることで、どうか。
(i)債務者の財産を隠匿し、又は損壊する行為
(ii)債務者の財産の譲渡又は債務者における債務の負担を仮装する行為
(iii)債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為
(iv)債務者の財産を債権者の不利益に処分し、又は債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為

<2> <1>に規定するもののほか、破産手続開始の決定又は保全管理命令の後において、債権者を害する目的で、破産管財人の承諾その他の正当な理由がなく、債務者の財産を取得し、又は取得させた者は処罰するものとすることで、どうか。
(注)
1 <1>は、実質的に「其ノ宣告確定シタルトキ」(破産法第374条)との客観的処罰条件を不要とするものである。この客観的処罰条件については、「破産宣告の確定を処罰条件とするのは、破産手続が唯一の倒産処理手続であり、かつ、破産手続が破産者に対する懲罰的な意味を強く有していた時代の名残であるといわざるを得ず、再建型の手続を含む多種の倒産処理手続が予定され、倒産処理手続が全体として債務者の更生を重要な理念とするようになっている現在の法制にはそぐわないものとなっている。」(亀山継夫「注釈特別刑法第5巻」675頁)との批判が存するが、どう考えるか。

2 <2>は、破産手続開始の決定の効力として、その確定を要せずして、破産者の財産の管理処分権は破産者から破産管財人に移転し、破産管財人は当該管理処分権を専有する者として、直ちに当該財産その占有及び管理に着手する義務を負っているのであるから(破産法第7条、第185条)、当該決定の後において、破産管財人が関知しない場面で、破産財団を構成する財産を取得する(占有を開始するなどして自己の支配下に移す行為をいう。)行為は、当該財産の収集を困難にする行為として、隠匿や損壊と同様の当罰性を有するものであり、これは保全管理命令が発せられた場合も同様と考えられるが、どうか。

(後注1)
1 債権者を害する目的で、<1>の行為を行い、その結果として、債務者に危機的状況を生じさせた者も、<1>と同様に処罰するものとすることで、どうか。

2 上記のほか、破産管財人等が、自己若しくは第三者の利益を図り又は債権者に損害を加える目的で、その任務に違反して、債権者に財産上の損害を加えたときは、処罰するものとする考え方があるが、どのように考えるか。

(後注2)非義務行為その他の偏頗行為の処罰の要否については、否認権の在り方に 関する議論の動向も踏まえて、さらに検討する。

2 破産者の財産等に関する情報の収集を妨害する行為の処罰
(1)重要財産に関する破産者の説明義務違反行為の処罰
破産者が、破産手続開始の決定後遅滞なく、破産者が所有する不動産、現金、有価証券、預貯金その他重要な財産の内容を記載した書面を裁判所に提出する義務に違反して、その提出を拒み、又は虚偽の書面を裁判所に提出したときは処罰するものとすることで、どうか。

(注)
1 上記の罰則においては、破産者の義務の履行に係る違反行為を行った者を処罰する旨の規定を置くこととする。

2 「重要な財産」の範囲等については、なお検討する(倒産法部会資料40第4・2(2)参照)。

(2)破産管財人等への説明義務違反行為の処罰
倒産法部会資料40第4・2(1)によって説明義務を負う破産者等が、破産管財人、債権者集会又は債権者委員会の請求により、破産に関して必要な説明を求められた際に、その説明を拒み、又は虚偽の説明をしたときは処罰するものとすることで、とうか。

(後注) 子会社に対する調査等についても、同様の処罰規定を置くことで、どうか。
(3)破産者の業務及び財産の状況に関する物件の隠滅行為の処罰
<1> 債権者を害する目的で、破産者の業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、若しくは変造した者は処罰するものとすることで、どうか。

<2> 裁判所書記官が閉鎖した破産者の財産に関する帳簿を隠滅し、偽造し、若しくは変造した者も<1>と同様に処罰するものとすることで、どうか。

(注)偽造等に係る帳簿等の使用を処罰するかについては、破産管財人等への説明義務違反行為の処罰(上記2(2))の在り方との関係において、なお検討するものとする。


(後注)破産申立て又は免責に関する審尋において、債務者等が陳述を拒み又は虚偽の陳述をしたときは、処罰するものとすることで、どうか。

3 破産管財人等の職務執行に対する妨害行為の処罰
偽計又は威力を用いて、破産管財人等の職務を妨害する行為については、破産機上の犯罪として処罰するものとすることで、どうか。

(注)
1 破産管財人のほか、その職務を保護する者としては、保全管理人が考えられる。
2 破産管財人による物件検査権(倒産法部会資料40第4・2(3))に対する妨害行為については、上記により処罰されることになる。

4 破産管財人等に係る贈収賄行為の処罰
(1)破産管財人等の収賄行為の処罰
<1> 破産管財人等が収賄行為をしたときは処罰するものとする。
<2> 破産管財人等が、不正の請託を受けて、収賄行為をしたときは加重処罰するものとすることで、どうか。

(注)破産管財人のほか、収賄行為を処罰する者としては、保全管理人が考えられる。
(2)破産債権者等の収賄行為の処罰
破産債権者等が、不正の請託を受けて、収賄行為をしたときは処罰するものとすることで、どうか。

(注)破産債権者のほか、収賄行為を処罰する者としては、債権者委員会の委員等が考えられる。

(3)破産管財人等への贈賄行為の処罰
(1)<1><2>、(2)の各場合において、贈賄行為をした者は、収賄行為をした者と同等に処罰するものとすることで、どうか。

5 不正な手段により破産手続外で破産債権の充足を図る行為の処罰
破産者又はその親族等に破産債権を弁済させ、又は破産者の親族等に破産債権に係る保証をさせる目的で、威迫その他の不正な手段を用いた者は処罰するものとする。

(注)「破産者」には、破産手続終了後免責前及び免責後における破産者を含むものとする。

6 その他
その他倒産犯罪に係る罰則について、所要の整備をするものとする。
(注) 罰則の整備対象として考えられるものとしては、監守等に違反する罪の廃止のほか、国外犯処罰規定の整備及び両罰規定の導入等がある。