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【第二次案】第1部 破産手続: 第6 配当手続

1 配当の公告等
配当の公告等については、次のとおりとすることで、どうか。

<1> 破産管財人は、配当に加えるべき債権の総額及び配当することができる金額を公告し、又は届出破産債権者に通知しなければならないものとする(破産法第260条参照)。

<2> <1>の規定による通知は、その通知が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなすものとする(新会社更生法第46条第6項参照)。

<3> <1>の規定による通知が<2>の規定により各届出破産債権者に到達したものとみなされたときは、破産管財人は、裁判所にその旨を届け出るものとする。

<4> 中間配当又は最後の配当に関する除斥期間は、<1>の規定による公告が効力を生じた日又は<3>の規定による届出があった日から起算するものとする(破産法第261条、第262条、部会資料32・第13・5(3)参照)。

(注) 現行破産法は、中間配当及び最後の配当について、破産管財人は配当に加えるべき債権の総額及び配当することができる金額を公告しなければならないとし(同法第260条)、この公告を基準として除斥期間を定めることとしている(同法第261条、第262条及び第273条)。この公告の意義については、<1>既に一般の債権調査は終了し(同法第256条)、未届破産債権者の利益を保護するために公告により周知を図るという必要性は乏しいと考えられること、<2>公告のほかに届出破産債権者に対して個別に通知すべきものとはしていないことから、特に、除斥期間を画一的に定めるという手続上の便宜を重視したものと考えることができる。今回の破産手続の見直しにおいて、一般調査期間の末日又は一般調査期日後の届出の要件を厳格化すること(部会資料30・第10・1(1))に伴い、未届破産債権者の利益の保護の必要性は一層低減することから、簡易な配当手続(下記2(1)参照)に限らず、個別の通知によることができるものとし、破産管財人が公告又は通知のうち適切なものを選択する(その前提として、通知を選択した場合に、除斥期間を画一的に定めるために制度上の手当を講ずる)ものとすることが考えられるが、どうか。

2 簡易な配当手続
(1)最後配当における配当することができる金額が一定金額に満たない場合の簡易な配当手続の特則

<1>破産管財人は、最後の配当において、配当することができる金額が1000万円に満たない場合には、次の<3>から<9>までに規定する手続(以下「簡易配当手続(仮称)」という。)による配当をすることができるものとする。

<2> 破産管財人は、簡易配当手続(仮称)による配当をするには、裁判所書記官の許可を得なければならないものとする(部会資料32・第13・5(2)参照)。

<3> 破産管財人は、次に掲げる事項を記載した配当表を作成し、これを裁判所に提出しなければならないものとする(破産法第258条、第259条参照)。
(i)配当に加えることができる債権者の氏名又は名称及び住所
(ii) 配当に加えることができる債権の額
(iii)配当することができる金額

<4> 破産管財人は、各届出破産債権者に対する配当見込額を定めて、各届出破産債権者に対し、配当に加えるべき債権の総額、配当することができる金額及び当該届出破産債権者に対する配当見込額を通知しなければならないものとする(破産法第260条、第265条、第274条参照)。

<5> <4>の規定による通知は、その通知が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなすものとする(新会社更生法第46条第6項、上記1<2>参照)。

<6> <4>の規定による通知が<5>の規定により各届出破産債権者に到達したものとみなされたときは、破産管財人は、裁判所にその旨を届け出るものとする(前記1<3>参照)。

<7> 簡易配当手続(仮称)に対する除斥期間に関する規定の適用については、<6>の規定による届出があった日から起算して1週間の期間を最後の配当に関する除斥期間とするものとする(倒産法部会部会資料27・第13・5(3)、破産法第261条、第275条から第277条まで参照)。

<8> 各届出破産債権者は、<6>の規定による届出があった日から起算して2週間以内に限り、裁判所に対して、<3>の配当表に対する異議を申し立てることができるものとする(破産法264条参照)。

<9> 破産管財人は、<6>の規定による届出があった日から起算して2週間を経過した後(<8>の規定による異議の申立てがあったときは、当該申立てについての決定があった後)、配当額を定めて、配当を行わなければならないものとする(破産法第265条、第274条参照)。

(注)
1 上記の考え方は、第23回会議での指摘を踏まえて、配当の局面に限定して、簡易な配当手続の特則を設けようとするものである。

2 上記<1>では、配当手続の特則であることにかんがみ、その要件については、破産財団に属する財産の総額ではなく、配当することができる金額を基準とし、その具体的な金額については、当部会における従前の審議及び意見照会の結果を踏まえて、1 0 0 0万円とするものとしている。また、中間配当を行うような事案については、簡易配当手続(仮称)による費用、時間等の節減効果はさほど重視されないと考えられることから、簡易配当手続(仮称)は、専ら最後の配当の特則として設けるものとしている。なお、中間配当を行った破産事件における最後の配当については、簡易配当手続(仮称)の特則を適用しないものとすることで、どうか。

3 上記<2>では、本則となる配当手続における最後の配当の許可を裁判所書記官の権限とすることや、配当することができる金額が1000万円未満であるか否かは形式的に判断することができることにかんがみ、簡易配当手続(仮称)による配当をすることの許可は、裁判所書記官の権限とするものとしている。なお、この裁判所書記官の許可に対する不服申立てについては、特段の規定を設けないものとすることで、どうか。

4 除斥期間及び異議申立期間の画一的取扱い(上記<5>から<8>まで)の点については、上記1参照。


(2) 最後の配当における届出破産債権者の全員が異議を述べない場合の簡易な配当手続の特則
(ア)
<1> 裁判所は、相当と認める場合には、破産手続開始の決定の公告及び通知(破産法第143条第1項及び第2項、部会資料28・第1・4(2)<1>参照)とともに、破産債権者が、簡易配当手続(仮称)による配当をすることについて異議があるときは、一般調査期間の末日又は一般調査期日の終了時まで[最後の配当の許可がある日まで]に 裁判所に異議を述べるべき旨を公告し、かつ、通知することができるものとする。
<2> 裁判所書記官は、<1>の規定による公告及び通知をした場合において、届出破産債権者が<1>に規定する異議を述べないときは、破産管財人の申立てにより、最後の配当において、簡易配当手続(仮称)による配当をすることを許可することができるものとする。
(イ)
<1> 裁判所書記官は、<1>の規定による公告及び通知をしなかった場合でも、相当と認めるときは、破産管財人の申立てにより、最後の配当において、簡易配当手続(仮称)による配当をすることを許可することができるものとする。
<2> <1>の規定による許可があった場合には、破産管財人は、各届出破産債権者に対し、配当に加えるべき債権の総額、配当することができる金額及び当該届出上に破産債権者に対する配当見込額のほか、届出破産債権者が、簡易配当手続(仮称)による配当をすることについて異議があるときは、上記(1)<6>の規定による届出があった日から起算して1週間[2週間]の期間内に、裁判所に異議を述べるべき旨を通知しなければならないものとする(上記(1)<4>参照)。

(ウ)
<1> [(ア)<2>又は](イ)<1>の規定による許可があった場合において、届出破産債権者が、上記(1)<6>の規定による届出があった日から起算して1週間[2週間]の期間内に、簡易配当手続(仮称)による配当をすることについて裁判所に異議を述べたときは、裁判所書記官は、当該許可を取り消さなげればならないものとする。
<2> <1>の規定による取消しの処分があったときは、破産管財人は、配当額等の公告等(破産法第260条、上記1参照)以下の本則となる配当手続を行わなければならないものとする。
(注)
1 第23回会議において、届出破産債権者の全員が異議を述べなかった場合には簡易な破産手続におけるのと同様の簡易配当を行うことができるものとするとの考え方について異論がなかったこと、さらに、破産手続開始と同時に異議の有無を確認する制度と事後的に異議の有無を確認する制度とを併存させるとの考え方が示されたことを踏まえて、今回の資料では、<1>破産手続開始の決定の公告及び通知とともに知れている破産債権者に対して異議の申出の機会を与えて、異議のない場合に簡易配当手続(仮称)を行う制度(上記(ア))、<2>最後の配当の際に届出破産債権者に対して異議の申出の機会を与えて、異議のない場合に簡易配当手続(仮称)を行う制度(上記(イ)及び(ウ))を設けることを提案している。この二つの制度を設ける場合には、両者の関係、役割分担、効果の強弱(下記2参照)等について、どのように考えるか。また、二つの制度のうち一方のみを採用するとの考え方もあり得るが、どのように考えるか。

2 上記(ア)については、異議申出期間をどのように定めるか、異議申出期間徒過の効果をどのように考えるかが問題となる。これを短期間とし、その効果を強めれば、手続的には安定するものの、かえって異議を誘発しかねないと考えられる。そこで、本案として、異議申出期間を、届出破産債権者が他の破産債権の届出状況を確知することができる「一般調査期間の末日又は一般調査期日の終了時まで」とし、この期間内に異議がない場合には、簡易配当手続(仮称)による配当を行うとの考え方を掲げている。これに対して、極めて限定的な効果とする考え方、すなわち、異議申出期間を[]内に掲げた「最後の配当の許可がある日まで」とし、さらには、上記(ア)についても、上記(ウ)の異議申出による本則となる配当手続への移行を認めるとの考え方もあり得るが、どのように考えるか。

3 上記(イ)及び(ウ)については、第23回会議で、届出破産債権者に異議があれば簡易な配当は行わないものとするとの考え方が示されたことから、<1>訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述による手形訴訟から通常の手続への移行(民事訴訟法第353条)又は少額訴訟から通常の手続への移行(同法第373条)、<2>督促異議の申立てによる督促手続から訴訟への移行(同法第395条)を参考にして、簡易配当手続(仮称)に入った後、除斥期間(又は異議申立期間)内に異議の申出があった場合には、本則となる配当手続に移行するとの制度を提案している。なお、上記(ウ)<1>の取消しの処分があった場合には、上記(ウ)<2>のとおり改めて配当額等の公告等(破産法第260条、上記1参照)を行い、その中で取消しの処分があったこと(本則となる配当手続によること)を公告し、又は通知することを想定している。これに対して、簡易配当手続(仮称)に入る前に届出破産債権者に異議の申出の機会を与えた上で、異議がない場合に簡易配当手続(仮称)に入るという考え方もあり得るが、どのように考えるか。

4 上記(ア)<2>及び上記(イ)<1>の許可、上記(ウ)<1>の取消しの処分については、本則となる配当手続における最後の配当の許可を裁判所書記官の権限とすること、届出破産債権者に異議があったか否かは形式的に判断することができることから、裁判所書記官の権限とするものとしている。なお、この裁判所書記官の許可に対する不服申立てについては、特段の規定を設けないものとすることで、どうか。5 この特則は、簡易配当手続(仮称)の一種であることから、専ら最後の配当の特則として設けるものとし、中間配当を行った破産事件における最後の配当については、適用しないものとすることで、どうか。

(3) 最後の配当における届出破産債権者の全員が同意した場合の簡易な配当手続の特則最後の配当において、破産管財人が定めた配当表[配当額]、配当時期及び配当方法について、届出破産債権者の全員が同意したときは、裁判所書記官の許可を得て、当該配当表[配当額]、配当時期及び配当方法に従って、配当を行うことができるものとするとの考え方があるが、どのように考えるか。
(注)
1 上記(2)の「届出破産債権者の全員が異議を述べない場合の簡易な配当手続の特則」をさらに進めて、届出破産債権者の全員が配当表[配当額]、配当時期及び配当方法についても同意した場合の簡易な配当手続の特則を提案するものである。

2 届出破産債権者が同意すべき事項として、配当表[配当額]、配当時期、配当方法のほかに、どのようなものが考えられるか。

3 本則となる配当手続における最後の配当の許可を裁判所書記官の権限とすること、届出破産債権者の全員の同意があったか否かは形式的に判断することができることから、この特則による配当の許可は、裁判所書記官の権限とするものとし、許可に対する不服申立てについては、特段の規定を設けないものとすることで、どうか。

4 この特則を中間配当について適用すると、最後の配当に関する規律が複雑になることから、専ら最後の配当の特則として設けるものとすることで、どうか。

目次

○トップページ

■第一次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第二次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第三次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■残された課題

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法