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【第一次案】第1部 破産手続: 第13 配当手続

1 中間配当の配当率
中間配当の配当率についての裁判所の許可等の制度(破産法第265条第2項参照)は、廃止するものとする。

(注) 中間試案では<1>中間配当の配当率についての裁判所の許可等の制度を廃止し、<2>破産管財人は、配当事を定めたときは、直ちに、これを裁判所に報告しなければならないものとする考え方を示していた(中間試案第1部、第13の1)。意見照会におい』ては、これらの考 え方については、ほぼ異論がなかったところであるので、<1>について本文に掲げるとともに、<2>については最高裁判所規則で定めるものとする。

(後注)今回の見直しにおいては、破産手続に関する裁判につき利害関係を有する者は、破産法に特別の定めがある場合に限り、当該裁判に対し即時抗告をすることができるものとするとの考え方(倒産法部会資料28第1・3前段参照)を採ることに異論がないが、中間配当の許可の決定又は中間配当の許可の申立てを却下する決定(不許可の決定)に対しては、不服申立てを認めない(特段の規定を設けない)ことで、どうか。

2 債権証書への配当金額の記載
債権証書に配当金額を記載する制度(破産法第269条第2項参照)は、廃止するものとする。

(注)意見照会においては、上記の考え方に対して多数の賛成意見が寄せられたが、債権者の申出があった場合には、債権証書(特に手形等の遡求権があるもの)への記載を認めるべきであるとの意見も寄せられた。しかし、債権証書への配当金額の記載の制度は、そもそも

<1>記載の前提として債権証書を提示させることによる受領権限の有無の確認、<2>重榎支払の防止(配当金支払の事実の証拠化)を目的とするものと解されており、破産管財人ひいては他の破産債権者の利益を保護するためのものというべきであるから、この制を、債権者の申出があった場合に限定した上で維持する必要性は乏しいと考えられるが、どうか。

3 別除権者の配当参加
(1)被担保債権が担保されなくなったことによる配当参加
破産法第92条に規定する担保権によって担保される債権の全部又は一部が破産宣告後に担保されないこととなった場合には、その債権の全部又は一部について、破産債権者として、その権利を行うことを妨げないものとする。(民事再生法第88条ただし書参照)

(注)意見照会においては「上記の考え方を採ることを前提として、「担保されないこととなった場合」に該当するためには、登記を要件とすべきであるとの意見が寄せられた。また、「担保されないこととなった場合」の確定、証明の方法が未定では実務上機能しないのではないかとの懸念も表されたが、これも、登記の要否に関する規定を設ける必要性を指摘するものと考えられる。この点に関しては、再生手続について同様の規律が設けられる際にも議論されたが、その際は、<1>担保権者が担保権の放棄、被担保債権額の変更(滅縮)等を第三者に主張するために登記を要けるか否かについては、実体法の解釈にゆだねるべき問題であること、<2>被担保債権を公示することができない担保権もあること等が指摘されて、結局、特段の規定は設けられなかったところである。これらの指摘は、破産手続についても同様に当てはまることから、登記の要否については、民事再生法と同様に特に規定を設けず、解釈にゆだねるものとすることが適切であると考えられるが、どうか。

(2)根抵当権に関する特則
<1>別除権の内容が根抵当権である場合には、最後の配当の除斥期間の満了までにその権利の行使によって弁済を受けることができなかった債権額を証明することができなかったとき[(別除権者が当該根抵当権の目的の処分に着手したことを証明した場合に限る。)]であっても、当該根抵当権の被担保債権のうち極度額を超える部分は、弁済を受けることができなかった債権額とみなすものとする。(破産法第277条及び民事再生法第160条第2項参照)

<2><1>の場合において、当該根抵当権の被担保債権の額は、最後の配当の除斥期間の末日を基準として算定した額とするものとする。

(注)
1 意見照会においでは、上記(2)<1>の考え方については、異論がなかつた。

2 意見照会においては、上記(2)<2>の考え方にでついても、多数の賛成意見が寄せられた。この考え方は、最後配当の除斥期間の末日を基準として算定した被担保債権の総額が極度額を超える場合に、当該被担保債権につき同日に極度額に相当する額を法定充当したものと仮定して、その残額を極度額を超える部分として取り扱うことを前提とするものであるが、どれに対して、最後の配当の除斥期間の末日を基準としつつも、仮定的な充当計算は行わず、極度額を超える額のうち破産宣告後の利息等に相当する額を劣後的破産債権として取り扱う旨の規律を設ける方が、衡平に適い、手続上も合理的かつ簡便であるこの意見が寄せられた。また、他の破産債権者に対する配当額に及ぼす影響等の点から、破産宣告時を基準とすべきであるとの意見も寄せられた。これらの意見は、仮定的な充当計算の際に元本よりも先に破産宣告後の利息等への充当が行われる場合には、劣後的破産債権制度の趣旨を没却し、他の破産債権者との間の衡平を害するおそれがあるとの問題意識に基づくものと考えられる。しかし、現実に権利の行使をすることによる不足額の証明の終期が除斥期間の末日とされていること(破産法第277条)に加えて、上記(1)の考え方を採った場合には、根抵当権者は、最後の配当の除斥期間の末日までの間は、根抵当権の被担保債権の一部を任意に選択し、極度額を超えるものとして被担保債権の範囲から除外することにより、当該一部につき配当を受けることができることとの均衡上も、最後配当の除斥期間の末日を基準として充当計算を行う'ことが、特に他の破産債権者との間の衡平を害するものとはいえないし、むしろ、これらの場合と同程度に根抵当権者の利益を保護すべきであると考えられる。そこで、これらの意見については、採用しないことで、どうか。

3 意見照会においては、上記(2)<2>の考え方に対して、除斥期間の末日いよ、実際に配当公告がされるまで確定しない(下記5(2)参照)ため、配当表作成の段階では、極度額を超える部分を、配当に加えるべき債権の額(破産法第258条第1項第2号)として記載することはできず、配当表の更正が不可避となることから、被担保債権の算定の基準日は、配当表作成前の-定の、時点に求めるべきである態の意見が霄菅られた。この意見を踏まえて上記(2)<1>及び<2>の考え方に修正を加え、たとえば、次のような規律を設けることも考えられるが、どうか。

<1> 破産管財人は、別除権の内容が根抵当権であるときは、、定の時点(たとえば、最後の配当の許可があった日)における当該根抵当権の被担保債権のうち極度額を超える部分につき当該根抵当権の行使に「よって弁済を受けることができない債権額の証明があったものとして、最後配当の配当表を作成しなければならないものとする.ただし、当該一定の時点において、弁済を受けることができない債権額が証明されていない場合に限るものとする。

<2> 最後配当の除斥期間の末日までに弁済を受けることができない債権額が証明された場合には、破産管財人は、直ちに、配当表を更正しなければならないものとする(破産法第263条第3号参照)。

<3>最後配当の除斥期間の末日までに[別除権者が根抵当権の目的の処分に着手したことが証明され、かつ]、弁済を受けることができない債権額が証明されなかった場合には、<1>の「極度額を超える部分」は、弁済を受けることができない債権額とみなすものとする。[<4>最後配当の除斥期間の末日までに別除権者が根抵当権の目的の処分に着手したことが証明されなかった場合には、破産管財人は、直ちに、配当表を更正しなければならないものとする。]

4 なお、上記(2)<1>及び<2>又は上記(注)3の考え方に基づき、根抵当権に関する特則を設けた場合には、根抵当権者にとって、現実に権利の行使をすることによって確定不足額を証明して配当に参加するよりも、特則を利用して配当に参加する方が有利であることも多く、根抵当権者が権利の行使に着手する動機付けを奪うことになるおそれがある。このことは、不足額の証明の例外としてこのような特則を設ける趣旨に照らすと、適当ではないと考えられる。そこで、中間配当において、別除権者が除斥期間内に破産管財人に対してその権利の目的の処分に着手したことを証明しないときは、配当から除斥されること(破産法第262条)との均衡も考慮し、別除権者が根抵当権の目的の処分に着手したことを証明することを要件とすることが考えられるが。どうか(上記(2)<1>及び上記(注)3の[]部分参照)。

4少額の配当に関する特則
<1> 破産手続に参カロしようとする破産債権者は、債権届出期間内に、その内容等(破産法第228条参照)のほか、当該破産債権者に対する配当額の総額が最高裁判所規則で定める金額に満たない場合であっても配当金を受領する意思があるときは、その旨を裁判所に届け出なければならないものとする。

<2> 届出をした破産債権を取得した者は、届出名義の変更(倒産法部会資料30第10・1(2)参照)を受ける場合には、当該者に対する配当額の総額が<1>の最高裁判所規則で定める金額に満たない場合であっても配当金を受領する意思があるときは、その旨を裁判所に届け出なければならないものとする。

<3> 破産管財人は、最後の配当及び追加配当の場合を除き、<1>及び<2>に規定する事項の届出をしはかった破産債権者が有する債権に対する配当額に相当する金銭を寄託しなければならないものとする(破産法第271条参照)。

<4>破産管財人は、破産法第274条の規定により各破産債権者に対する配当額を定めた場合において、<1>及び<2>に規定する事項の届出をしなかった破産債権者について、次の(i)及び(ii)に掲げる金額の合計額が<1>の最高裁判所規則で定める金額に満たないときは、当該破産債権者に対して(i)の配当額を配当することはできず、当該合計額は他の破産債権者に配当しなければならないものとする。この場合においては、当該破産債権者に対しては、同条の通知をすることを要しないものとする。
(i)破産管財人が破産法第274条の規定により定めた当該破産債権者に対する配当額
(ii)破産管財人が<3>の規定により当該破産債権者が有する破産債権について寄託した金銭の総額

<5>破産管財人は、<4>の「合計額について、<4>の「他の破産債権者」に対する配当額を定めて<4>の「他の破産債権者」に対して、当該配当額を通知しなければならないものとする。

<6> 破産管財人は、破産法第283条第2項の規定により各破産債権者に対する配当額を定めた場合において、<1>及び<2>に規定する事項の届出をしなかった破産債権者について、当該配当額が<1>の最高裁判所規則で定める金額に満たないときは、当該破産債権者に対して当該配当額を配当することはできず、当該配当額は他の破産債権者に配当しなければならないものとする。この場合においては、<4>額段及び<5>の規定を準用するものとする。

(注)
1意見照会においては、<1>破産債権者が、債権届出書において、配当総額となるべき額が最高裁判所規則で定める金額に満たない場合であっても配当金を受領する旨を明らかにしなかったときは、破産管財人は、その配当額を寄託しなければならないものとし、<2>寄託した額に最後の配当において配当すべき額を加えた配当総額となるべき額が最高裁判所規則で定める金額に満たない場合には、当該破産債権者は、配当から除斥されるものとする考え方(中間試案第1部、第l3の4)については、ほぼ異論がなかった。

2 意見照会においては、(i)債権譲渡等を考慮すると、実際には煩雑に思われるとの指摘、(ii)配当額の寄託の点は中間配当に限る措置なのか不明確であるとの指摘、(iii)最後配当のみで終了する事案も多いのであるから、中間配当、これに続く最後配当という条文構成は不適切ではないか(一定の金額に満たない場合は、最後配当から除斥されるが、その際、中間配当において寄託された金銭があるときは、合計額で除斥を判断するという規定にすべきである。)との指摘等があった。そこで、今回の資料では、これらの指摘も踏まえ、より具体的な案を示している。まず、上記<2>は、「債耀譲渡等により届出名義の変更がされる場合の規律を新たに提案している。なお、債権届出及び届出名義の変更は、基本的に債権を単位とするが、配当金を受領する意思の表明は、債権者を単位とすることになると考えられるから、同一の債権者が有する債権について、受領意思の表明をしたものと受領意思の表明をしなかったものとが存在するという事態が生ずる可能性がある。上記<3>、<4>及び<6>において、「<1>及び<2>に規定する事項の届出をしなかった」としているのは、-度 でも受領意思の表明をした債権者については除斥の対象としない(すべての債権届出及び届出名護の変更において、一度も受領意思の表明をしなかった債権者のみを除斥の対象とする)趣旨である。次に、上記<4>及び<5>は、最後配当において配当すべき額は、配当表に対する異議に係る手紙が終了して配当表が確定し、配当額を定める段階でないと確定しないことを踏まえて、中間試案の考え方を具体化している。最後に、上記<6>、迫加配当の場合の取扱いを、最後配当の場合に準じて、提案している。

3 中間試案においては、最高裁判所規則で、定める金額を1000円と定めるものとするとの考え方(中間試案第1部、第13の4の(注)参照)を示していたが、意見照会においては、この点についても、多くの賛成意見が寄せられた。これに対して、1万円とすべきであるとの意見、3000円とすべきであるとの意見、1000円から1万円間で裁判所が定める額とすべきであるとの意見等も寄せられだ。これらの意見や少額の配当に、関する特則を設ける趣旨を踏まえて。最高裁判所規則で適当な金額を定めるものとすることで、どうか。

5 最後の配当
(1)実施時期の定め
裁判所は[破産管財人の意見を聴いて]、最後の配当を実施すべき時期を定めることができるものとする。
(注)
1意見照会において、上記5(1)の考え方については、ほぼ異論がなかった.具体的事件に応じて、裁判所と破産管財人との間で緊密な協議を行うことで十分である等として、これに反対する意見もあったが、現実に最後の配当が完了するまでに必要以上の長期間を要している事件が存在すること、訓示規定とはいえ、このような規定を設けることにより、破産手続の進行の迅速化に一定の効果が得られると考えられることから、今回の資料でも、この考え方を維持している。

2 意見照会においては、補足的に管財人との協議により時期を定めるべ意であるとの意見や、「破産管財人と協議の上」との文言を付加すべきであるとの意見が寄せられた。事件の個別具体的な内容に即した適切な最後配当の時期を定めるためには、事前に破産管財人との間で十分に意思疎通を図らなければならないことは当然であり、明文の規定を設けずに、運用にゆだねることでも足りると考えられるが、どうか。仮に明文の規定を設けるとすれば、制度上、破産管財人は、裁判所の監督を受ける地位にあること(破産法第161条)にかんがみると、「裁判所は、破産管財人の意見を聴いて、・・・を定めることができる」との文言が適当であると考えられるが、どうか。

3 なお、最後配当の時期を定める裁判の取消し又は変更については、特に明文の規定 を設けなくても、裁判所は、これを取り消し又は変更することができることを前提としている(非訟事件手続法第19条参照)。

(2)裁判所書記官による許可
最後の配当の許訂は、裁判所書記官が行うものとする。

(注)
1  意見照会においては、最後配当の許可は比較的形式的な事項の判断である等として、上記(2)の考え方について賛成する意見が多数寄せられた。これに対して、比較的形式的な事項の判断ではあるが、その背後には実質的な判断を含むものであること、手続全般の責任者である裁判所の許可事項とすべきであること、裁判所が管財人のした財団の回収、状況、計算等について審査する必要があること等から、これに反対する意見もあった。他方、裁判所書記官の許可すら必要でなく、報告又は届出で足りるという意見も寄せられた。そもそも、最後配当の要件については、中間配当を含む配当の一般的要件のほか、<1>破産財団の換価(換価することができる財産の換価)を完了したこと、<2>破産の終結のためにする配当であることであると解されているようである。これらの審査は、基本的には現在又は過去の事実関係の確認が中心であり、特に複雑困難な裁量的判断、法律判断が要求されることはないと考えられる。他方で、配当手続の安定を図るためには、何らかの方法によって最後配当の要件を審査する必要はあると考えられる。そこで、今回の資料でも、中間試案の考え方を維持している。

2 上記5(2)の考え方を採用する場合に、裁判所書記官の許可の処分又は許可の申し立を却下する処分(不許可処分)に対する不服申立てについては、どのように考えるか。特段の規定を設けず、民事訴訟法の規定の準用(破産法第108条)により、当該裁判所書記官の所属する裁判所に、処分に対する異議申立て(民事訴訟法第121条)をすることができるものとすることで、どうか。中間配当の場合(上記第13・1の(後注)参照)との均衡を考慮して処分に対する異議の申立てについての決定に対しては、さらなる不服申立て(同法第328条第1項)を許されないとすることも考えられるが、どのように考えるか。

3 中間配当については、配当率についての裁判所の許可等の制度は廃止されることになる(上記第13・1参照)が、中間配当自体についての裁判所の許可の制度は維持されることになる。中間配当は、最後配当に比べると、将来の破産財団(配当財団)の形成見込み、破産手続の費用の発生の見込みという予測的要素を含み、実質的事項の判断を要求されること、実務上は最後配当だけを実施して終結する事件が多く、中間配当を実施する事件は例外化していることから、中間配当についての裁判所の許可の制度を維持しても、特にバランスを失するものではないと考えられるが、この点についてどのように考えるか。

(3)除斥期間
最後配当に関する除斥期間は、配当の公告があった日から起算して2週間とするものとする。

(配当手続関係後注)
中間配当においては、破産管財人は、最後の配当に関する除斥期間経過後遅滞なく、配当を実施しなければならないものとする旨を、最高裁判所規則において定めるものとする考え方を示していた(中間試案第1部、第13の5(4)参照)が、意見照会においては、これに賛成する意見が多数を占めた。これに対して、「遅滞なく」ではなく「2週間以内に」又は「1ヶ月以内に」等と期限を区切り、正当な理由がないのにこの期間内に配当を実施しなかった場合には管財人に遅延利息を課すること等を明文化した方がより実効性が上がるとの意見、除斥期間経過後一定期間(2ヶ月)内に最後配当を実施すべきことを明記した方がよいとの意見等が寄せられた(なお、今回の見直しにおいては、同条が定める規律は、法律事項として維持する予定である。)。これらの意見を踏まえて、最高裁判所規則で適当な規律を設ける(ただし、遅延利息に関する規律を設けることは、理論的に困難であるし、当部会の従前の議論からも相当でないと考えられる。)ものとすることで、どうか。

目次

○トップページ

■第一次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第二次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第三次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■残された課題

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法