« 第2 質料債権の処分等の取扱い | メイン | 第7 その他 »

【第二次案】第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等: 第1 免責手続

1 免責手続中の個別執行禁止効
<1> 免責の申立てがあり、かつ、破産終結決定又は破産廃止決定があったときは、免責の申立てについての裁判が確定するまでの間、破産者の財産に対する破産債権に基づく強制執行、仮差押え、仮処分又は一般の先取特権[若しくは留置権(商法の規定によるものを除く。)]による競売(以下<1>において「強制執行等」という。)の手続はすることができず、破産者の財産に対して破産手続開始の決定前に既にされている強制執行等の手続は中止するものとする。

<2> <1>の場合には、免責の申立てについての裁判が確定するまでの間、破産者の財産に対する破産債権に基づく国税滞納処分(交付要求を除く。)は、することができないものとする。

<3> 免責の決定が確定したときは、<1>により中止した手続は、その効力を失うものとする。
(注)
1 <1>において民事留置権による競売を禁止効の対象として含めるかどうかについては、後記第4参照。
2 <2>の「国税滞納処分」には、国税滞納処分の例による処分も含むものとする(会社更生法第24条第2項参照)。
3 今回の改正において租税債権に優先破産債権となる部分が生ずることとなる(部会資料34・第2.1(1))場合には、他の破産債権者との公平を図るため、これを徴収するための国税滞納処分も他の破産債権に基づく強制執行等の手続と同様に禁止する必要があると考えられる。そこで、<2>では、破産債権に基づく国税滞納処分を禁止の対象とするものとしている。もっとも、徴収権者としては、破産手続開始の決定前に強制換価手続が行われた場合には交付要求によって徴収でき、また、破産手続中であっても別除権が行使された場合には交付要求をすることができたにもかかわらず、免責手続中は交付要求をすることができないとすることは、均衡を欠き 合理性に乏しいことから、交付要求は禁止の対象から除外する必要があると考えられるが、どうか。
4 第24回会議の奮議において、今回の改正により免責手続中の破産債権に基づく強制執行等の禁止効の規定が設けられれば、破産債権を自動債権とする免責手続中の相殺の禁止効については、別途明文を置くまでもなく、解釈によって対応が可能であるとの意見が多数であったことから、規定を設けないものとする。


2 再建型倒産処理手続における非免責債権
(1) 再建型倒産処理手続において、次の(i)から(iii)までに掲げる債権を非免責債権とする(他の手続債権とは異なる取扱いをする)かどうかについては、以下の考え方があるが、どのように考えるか。

(i) 債務者による人の生命又は身体を侵害する不法行為で故意又は重大な過失によるものに基づく損害賠償請求権(部会資料33第2の5(i)参照)
(ii)債務者が養育者又は扶養義務者として負担すべき費用に関する債権(同(ii)参照)
(iii)債務者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(第366条ノ12第2号)
(注)
現行の破産免責手続における非免責債権のうち、債務者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(第966条ノ12第2号)以外の租税(同条第1号)、雇人の給料(同条第3号)等については、各再建型倒産処理手続において、それぞれの性質に応じた取扱いに関する規定が置かれていることから、非免責債権とはしないものとする。A案 否定(現行法維持)説再建型倒産処理手続においては、前記(i)から(iii)までに掲げる債権を非免責債権としないものとする考え方

(注)
1 この考え方は、再建型倒産処理手続においては、債務者の相当程度の出措があってはじめて免責を得ることができるのであり、この債務者の弁済に向けた誠実性を評価して、破産の場合と非免責債権の範囲を同一にする必要はないとの考え方に基づくものである。この考え方によれば、前記(i)から(iii)までに掲げる債権に係る債務の減免が可能となり、債務者の再建をより図ることができることとなる。

2 この考え方によると、同一の債権について、清算型手続である破産手続においては非免責債権とされているのに、より多くの弁済が保障されている再建型手続において免責されることとなり、均衡を失するという問題がある。

B案 部分的肯定説
個人再生(小規模個人再生及び給与所得者再生)手続においては前記(i)から(iii)までに掲げる債権を非免責債権とするが、それ以外の場合には非免責債権としないものとする考え方
(注)
1 この考え方は、計画において前記(i)から(iii)までに掲げる債権の債権者の保護を図ることができる場合には、非免責債権としないとするものである。すなわち、通常の再生手続及び更生手続では、計画において、債権者間の衡平を害しない範囲内で、弁済率や弁済期等について優先的な取扱いをすることによって、前記(i)から(iii)までに掲げる債権の債権者の保護等を図るこ上ができる(民事再生法第155条第1項、会社更生法第168条第1項)。これに対して、個人再生手続においては、すべての再生債権者の権利が一般的基準に従って変更される(民事再生法第232条第2項、第244条)ことから、計画において特定の債権の債権者の保護等を図ることができず、非免責債権とすることによって、前記(i)から(iii)までに掲げる債権の債権者の保護等を図る必要があると考えられる。

2 なお、部分的肯定説としては、本文の考え方の他に、債務の減免等に当該債務の債権者が関与する機会が手続上保障されている場合には、非免責債権を認めないとする考え方もあり得る。すなわち、給与所得者等再生以外の場合には、前記(i)から(iii)までに掲げる債権の債権者は、その議決権の行使によって自己の権利の変更に同意しない機会が保障されていることから、その限りで当該債権者の要保護性等は抵下し、非免責債権としないとするものである。しかしながら、当該債権者が債務の減免等に同意しなかった場合であっても、他の債権者の議決権の行使の結果によっては、当該債権者の意向に関係なく債務が減免されることになることから、この場合においても要保護性等が低下しているとまではいうことはできないものと考えられる。

(2) 再建型倒産処理手続における非免責債権の取扱い
再建型倒産処理手続において、前記(i)から(iii)までに掲げる債権を非免責債権とした場合における取扱いについては、当該債権に係る債務には 計画に基づいて期限を猶予することはできるものの、減免をすることはできず、計画完遂時に残額について履行期が到来するものとすることで、どうか。

(注)
1 この考え方は第24回会議の審議における多数意見であり、アメリカ連邦倒産法(第13章手続)と同様の取扱い(同法篇1338条(a))とするものである。
2 この考え方によれば、非免責債権に係る多額の債務を負っている債務者が個人再生手続を利用した場合には、計画完遂時に非免責債権の残額の一括弁済を強制されることになることから、前記B案をとった場合には、このような者は、通常の再生手続を選択せざるを得ないという効果を持つこととなる。

目次

○トップページ

■第一次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第二次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第三次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■残された課題

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法