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【第二次案】第1部 破産手続: 第5 破産管財人による任意売却と担保権の消滅

(参考)
A案(部会資料30第12・2(3)ア参照)
(7)担保権消滅の許可等

<1>破産手続開始の決定当時破産財団に属する財産の上に別除権である担保権(以下「担保権」という。)が存する場合において、当該担保権を消滅させて当該財産を任意に売却することが破産債権者の一般の利益に適合するときは、破産管財人は、裁判所に対し、 当該財産を任意に売却し、及び次の(i)又は(ii)に掲げる区分に応じてそれぞれに定める額に相当する金銭を裁判所に納付して当該財産の上に存するすべての担保権を消滅させることについての許可の申立てをすることができるものとする。
(i)破産管財人において、売却によってその相手方より取得することができる金銭(以下「売得金」という。)の一部を破産財団へ組み入れようとする場合売得金から組み入れようとする額(以下「組入金」という。)を控除した額
(ii)(i)に掲げる場合以外の場合 売得金の額

<2> 破産管財人は、<1>の許可の申立てをしようとするときは、組入金の額について、あらかじめ消滅すべき担保権を有する者(以下アにおいて「担保権者」という。)と協議しなければならないものとする。<3> <1>の許可の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならないものとする。
(i)当該担保権の目的である財産の表示
(ii)売得金の額
(iii)(i)の財産の売却の相手方の氏名又は名称
(iv)消滅すべき担保権の表示
(v)(iv)の担保権の被担保債権の額
(vi)組入金が存すると認めるときは、その額

<4> <1>の許可の申立てがあった場合には、<3>の書面(以下アにおいて「申立書」という。)を、当該申立書に記載された担保権者に送達しなければならないものとする。この場合においては、代用公告の規定は、適用しないものとする。

<5> <4>の場合においては、裁判所は、担保権者に対し、<1>の許可の申立てに異議があるときは、<4>に規定する申立書の送達を受けた日から1月以内に、担保権の実行を申し立てるとともにその申立てを証する書面を提出し、既に担保権の実行を申し立てているときはそれを証する書面を提出すべきことを命じなければならないものとする。

<6> 裁判所は、やむを得ない事由がある場合に限り、担保権者の申立てにより、<5>の期間を伸長することができるものとする。

<7> <5>の書面が提出された後に、<5>に規定する担保権の実行の申立てが取り下げられ、又は却下された場合には、その書面を提出しなかったものとみなすものとする。民事執行法第188条において準用する同法第63条の規定又は同法第192条において準用する同法第129条の規定により担保権の実行の手続が取り消された場合についても、同様とするものとする。

<8> 裁判所は、担保権者が<5>又は<6>に規定する期間内に<5>の書面を提出しなかったときは、<1>の許可の決定をすることができるものとする。

<9> 裁判所は、必要があると認めるときは、<1>の許可の決定において、(イ)による金銭の納付がされ、又は当該決定が取り消されるまでの間、担保権の実行の禁止を命ずることができるものとする。

<10> <1>の許可の決定に対しては、担保権者は、即時抗告をすることができるものとする。

<11> <10>の即時抗告についての裁判があった場合には、その決定書を担保権者に送達しなければならないものとする。この場合においては、<4>後段の規定を準用するものとする。

(イ)価額に相当する金銭の納付
<1> 破産管財人は、(ア)<1>の許可の決定が決定したときは、(ア)<1>(i)又は(ii)に掲げる区分に応じてそれぞれに定める額の金銭を裁判所の定める期限までに裁判所に納付しなければならないものとする。

<2> 担保権者の有する担保権は、<1>による金銭の納付があった時に消滅するものとする。

<3> <1>による金銭の納付があったときは、裁判所書記官は、消滅した担保権に係る登記又は登録の抹消を嘱託しなければならないものとする。

<4> 破産管財人が<1>による金銭の納付をしないときは、裁判所は、(ア)<1>の許可の決定を取り消さなければならないものとする。

(ウ)配当等の実施等
<1> 裁判所は、(イ)<1>の規定による金銭の納付があった場合には、<2>に規定する場合を除き、配当表に基づいて、担保権者に対する配当を実施しなければならないものとする。

<2> 担保権者が一人である場合には、裁判所は、当該金銭の交付書を作成して、担保権者に弁済金を交付し、剰余金を破産管財人に交付するものとする。

<3> 民事執行法第85条及び第88条から第92条までの規定は<1>の配当について、同法第88条、第91条及び第92条の規定は<2>による弁済金の交付の手続について準用するものとする。


B案(部会資料30第12の2(3)イ参照)
(ア)担保権消滅の許可等
<1> 破産手続開始の決定当時破産財団に属する財産の上に担保権が存する場合において、当該担保権を消滅させて当該財産を任意に売却することが破産債権者の一般の利益に適合するときは、破産管財人は、裁判所に対し、当該財産を任意に売却し、及び次の(i)又は(ii)に掲げる区分に応じてそれぞれに定める担保権を消滅させることについての許可の申立てをすることができるものとする。
(i)破産管財人において、売得金の一部を破産財団へ組み入れようとする場合先順位の担保権の被担保債権の総額が売得金の額を超えるもの
(ii)(i)に掲げる場合以外の場合 当該担保権の被担保債権の額が売得金の額(先順位の担保権が存する場合にあっては、売得金の額から先順位の担保権の被担保債権の額を控除した額)を超えるもの

<2> <1>の許可の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならないものとする。
(i)当該担保権の目的である財産の表示
(ii)売得金の額
(iii)(i)の財産の売却の相手方の氏名又は名称
(iv)消滅すべき担保権の表示
(v)(iV)の担保権及びその先順位の担保権の被担保債権の額
(vi)組入金が存すると認めるときは、その額

<3> <1>の許可の申立てがあった場合には、<2>の書面(以下イにおいて「申立書」という。)を、当該申立書に記載された<2>(iv)の担保権を有する者(以下イにおいて「担保権者」という。)に送達しなければならないものとする。この場合においては、代用公告の規定は、適用しないものとする。

<4> <3>の場合においては、裁判所は、担保権者に封し、<1>の許可の申立てに異議があるときは、<3>に規定する申立書の送達を受けた日から1月以内に、担保権の実行を申し立てるとともにその申立てを証する書面を提出し、既に担保権の実行を申し立てているときはそれを証する書面を提出すべきことを命じなければならないものとする。

<5> 裁判所は、やむを得ない事由がある場合に限り、担保権者の申立てにより、<4>の期間を伸張することができるものとする。

<6> <4>の書面が提出された後に、<4>に規定する担保権の実行の申立てが取り下げられ、又は却下された場合には、その書面を提出しなかったものとみなすものとする。民事執行法第188条において準用する同法第63条の規定又は同法第192条において準用する同法第129条の規定により担保権の実行の手続が取り消された場合についても、同様とするものとする。

<7> 裁判所は、担保権者が<4>又は<5>に規定する期間内に<4>の書面を提出しなかったときは、<1>の許可の決定をすることができるものとする。

<8> 裁判所は、必要があると認めるときは、<1>の許可の決定において、(イ)<1>による金銭の支払がされ、又は当該決定が取り消されるまでの間、担保権の実行の禁止を命ずることができるものとする。

<9> <1>の許可の決定に対しては、担保権者は、即時抗告をすることができるものとする。

<10> <9>の即時抗告についての裁判があった場合には、その決定書を担保権者に送達しなければならないものとする。この場合においては、<3>後段の規定を準用するものとする。

(イ)金銭の支払等
<1> 破産管財人は、(ア)<1>の許可の決定が確定したときは、売得金の額(先順位の担保権が存する場合にあっては、売得金の額から先順位の担保権の被担保権の額を控除した額)に相当する金銭を裁判所の定める期限までに(ア)<1>(ii)の担保権を有する者に支払わなければならないものとする(先順位の担保権が存する場合にあっては、売得金の額から先順位の担保権の被担保債権の額を控除してなお残額が存する場合に限るものとする。)。

<2>(ア)<2>(iv)の担保権は、<1>による金銭の支払があった時(<1>の場合以外の場合にあっては、(ア)<1>の許可の決定が確定した時)に消滅するものとする。

(前注)
中間試案の甲案は、目的物につき存する担保権を区別しないで一律に消滅の対象として取り扱うものとしつつ、破産管財人が担保権者に対し任意売却による売得金の額や組入額等の条件を示した上で、担保権の実行を自らするか、又は破産管財人が示した条件で担保権を消滅させるかの選択を担保権者に行わせ、担保権者が後者を選択した場合においては、担保権は消滅し、破産財団へ一定金額が組み入れられるものとする基本的な考え方を採用していた。このような考え方に対しては、担保権者が組入額のみを争いたい場合において、そのための手段がなく、この点につき破産管財人のイニシアティブが強すぎるのではないかとの問題点が指摘されていたことから、部会資料30では、これへの対応策として、破産管財人は、許可の申立てをするときは、組入金の額について、あらかじめ消滅すべき担保権を有する者と協議しなければならないものとし、担保権者が事前に組入額につき破産管財人との間で協議をする機会を設けるものとする案(a案)を示した。しかしながら、第22回会議の審議では、協議義務については、協議の内容やその時期を具体的に定めることは困難であり、協議を欠いたとしても、直ちに許可決定の効力自体に影響を及ぼすものではないと考えられることから、上記の問題点への対応策としては十分ではないとする意見が述べられた。そこで、これらの意見等を踏まえて、今回の資料では、新たに上記の問題点に対する方策として、 A案に以下の(1)又は(2)の制度を新たに加える修正案を示すものとし、これに加えて、 B案に含まれる問題点に対応するための考え方を示すものとしている。


1 A案
A案の修正案として、以下の2つの考え方があるが、どのように考えるか。
(1) A1案(A案の修正案1)
裁判所は、担保権者の利益を不当に害することとなると認めるときは、許可の申立てを棄却することができるものとする。

(注)
1(1)については、破産管財人が算定した組入金の額や協議義務等による協議の経過等を総合勘案して判断されるものと考えられる。
2 A1案は、 A2案と併せて用いることも考えられる。
3 なお、破産管財人が協議を行うことを担保するため又は(1)の裁判所の判断を容易にするために、破産管財人は、許可の申立てをする際に、担保権者との間における協議の内容及び経過等について記載しなければならないものとすることで、どうか。

(2) A2案(A案の修正案2)
担保権消滅の許可の申立てよりも高額の買受けの申出がある場合には、以下の措置をとることができるものとする。

<1> 担保権消滅の許可の申立書の送達を受けた日から1月以内に、担保権者が、自己又は第三者が売得金より高額で買い受ける旨を申し出た場合には、当該目的物は、その買受人に売り渡すものとする。この場合において、当該申出をした者が複数あるときは、最高価で買い受ける旨の申出をした者に売り渡すものとする。
<2> <1>の場合には、その代金をこの手続に従って担保権者に配当するものとし、破産財団への組入れは認めないものとする。
<3> 破産管財人と担保権者との間で、売得金及び組入額について合意がある場合には、当該担保権者は、この手続において、担保権の実行及び<1>の申出をすることができないものとする。
(注)
1 <1>は、担保権者が申し出る金額につき、売得金よりも高額であることを要件とするものであるが、このような考え方のほかに、( i)売得金よりも1割以上高額でなければならない、(ii)売得金から組入額を除いた金額よりも一定割合以上高額でなければならないものとすること等も考えられる((ii)の考え方をとって、例えば、当該金額の2割以上高額でなければならないものとすると、担保権者の申出額としては、売得金の16.6パーセントを組み入れる場合には売得金よりも 0.08パーセント以上の高額であることが、売得金の10パーセントを組み入れる場合には、売得金よりも8パーセント以上高額であることが、売得金の5パーセントを組み入れる場合には、売得金よりも14パーセント以上高額であることがそれぞれ必要となり、破産管財人による組入額と担保権者が申し出る金額の多寡が反比例する関係になる。)。もっとも、特に(ii)については、一定割合をどのように定めるかについて合理的な説明が可能かという点が問題となる。

2 <1>の申出をする者は、中間試案で掲げた丙案における組入額につき「利害関係を有する担保権者」に事実上限られることになると考えられる。この考え方によれば、破産管財人は、「利害関係を有する担保権者」との間で<3>の合意を得ておかないと、当該担保権者から<1>の申出をされる可能性があることになる。このような意味からすると、この考え方は、破産管財人と「利害関係を有する担保権者」との間の組入額についての合意を促進する制度として位置付けることも可能であると考えられる。

3 A2案では、有利な条件を示した買受人については、その支払を確保する仕組みが必要となると考えられる。


2 B案
同意を要する「利害関係を有する担保権者」を決定手続により定めるものとする。

(注)
1 部会資料30(第12・2(3)イ参照)では、担保権が消滅する根拠についてはA案と同様の考え方を採用しつつ、その対象となる担保権者をいわゆる判子代を要求する後順位担保権者等に限定し、これらの者の有する担保権を消滅させることで、実務上のニーズに応える制度として、 B案を示していた。B案では、消滅の対象となる担保権者を限定し、個別に担保権を消滅させる仕組みを採用していることから、「利害関係を有する担保権者」が結果的に担保権の消滅に同意しなかったために、任意売却が実現しなかった場合であっても、破産管財人がこの制度によって個別に消滅の対象とした担保権は消滅することになる。このような場合には、担保権者の順位に変動が生ずるごとになり、実体法上適切ではないことから、このような結果を避けるためには、「利害関係を有する担保権者」の同意を申立ての要件とし、任意売却の対象財産に設定されている担保権をすべて一括して消滅させるようにする必要があると考えられる。

2 部会資料30(第12・2(3)イ(注)4参照)では、B案については、先順位担保権者の被担保債権の額で、同意を要する担保権者及び「許可に係る担保権」に該当するか否かが決まることから、各担保権者の被担保債権の額をどのように争うかにつき検討する必要があると示していた。この点については、同意を要する担保権者を認定するために必要となる被担保債権についての争いは決定手続によるものとし、最終的な弁済を受けるために必要となる被担保債権についての争いは配当異議訴訟類似の訴訟手続によるものとすることが考えられる。この考え方によれば、決定手続により同意を要する担保権者をあらかじめ定め、決定手続が決定した段階で、担保権を一律に消滅させることができるようになる。この点についてどのように考えるか。

目次

○トップページ

■第一次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第二次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第三次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■残された課題

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法