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【残された課題】第3部 倒産実体法

第1 否認権

1 対価的均衡を欠く代物弁済等の否認
破産者がした債務の消滅に関する行為であって、債権者が受けた給付の価額が当該行為によって消滅した債務の額より過大であるものは、消滅した債務の額に相当する部分を超える部分について否認することができるものとする。

(注) この点については 要綱案では 「詐害行為(狭義)に関する否認の要件」の中に記載するものとする。

2 詐害行為の否認の効果
(1) A案【否認の相手方に現物返還か差額賠償かの選択権を認める考え方】
<1> 詐害行為が否認されたときは相手方は、次の(i)又は(ii)に掲げる区分に応じ、それぞれ(i)又は(ii)に定める権利を行使することができるものとする。
(i) 破産者の受けた反対給付が破産財団中に現存する場合 当該反対給付の返還を請求する権利
(ii) 破産者の受けた反対給付が破産財団中に現存しない場合 財団債権者として反対給付の価額の償還を請求する権利
<2> <1>(ii)にかかわらず、詐害行為が否認された場合において、破産者が、当該行為の当時、対価として取得した財産について隠匿等の処分をする意思を有し、かつ、相手方が、当該行為の当時、破産者がその意思を有していたことを知っていたときは 相手方は、次の(i)又は(ii)に掲げる区分に応じ、それぞれ(i)又は(ii)に定める権利を行使することができるものとする。
(i) 破産者の受けた反対給付によって生じた利益が破産財団に現存する場合 財団債権者としてその現存利益の返還を請求する権利
(ii) 破産者の受けた反対給付によって生じた利益が破産財団に現存しない場合 破産債権者として反対給付の価額の償還を請求する権利
<3> 詐害行為が否認されたことによって相手方が破産財団に属する財産を返還する義務を負担する場合には、相手方は、当該財産の価額から<1>又は<2>によって財団債権となる額(<1>(i)の場合にあっては、破産者の受けた反対給付の価額)を控除した額を破産管財人に弁償して当該財産の返還を免れることができるものとする。
<4> <3>に規定する場合において、相手方が<3>の規定により破産財団に属する財産の返還を免れるためには、否認訴訟又は否認の請求の手続において、<3>の規定による弁償をする旨の主張をしなければならないものとする。
<5> 相手方が<4>の主張をした場合には否認訴訟又は否認の請求の手続が係属する裁判所はその判決又は決定において、<3>の弁償をすべき額及び期間を定めなければならないものとする。
[<6> 再建型の手続においては、<3>から<5>までの制度は設けないものとする。]

(注)
1 A案は、倒産法部会資料42の考え方と同様、<3>から<5>までの制度(以下「売渡請求権の制度」という。)の趣旨を、主として、否認の対象財産の保持を可能にする手段を否認の相手方に与えることによる否認のリスクの軽減に求め、詐害行為(狭義)が否認された場合に現物の返還をするか、これに代えて差額賠償をするかの選択権を否認の相手方に認める考え方である。すなわち、「適正価格」であるか否かの判断は、行為時には必ずしも容易でないにもかかわらず、譲り受けた財産を最終的に保持することができない可能性があることが本来許されるべき経済活動に萎縮的効果を与えているとの指摘がされていることを踏まえ、売買契約等が否認された場合でも、当該財産の保持を可能にする手段を付与することにより、このような萎縮的効果の除去を意図したものである。

2 第32回会議では、再建型の手続について否認の相手方に選択権を認めるのは相当でないとする意見が多数を占めたことを踏まえると、売渡請求権の制度は、これを認めても破産管財人の事務に支障を来さない(むしろ、管財事務の迅速化に資すると考えられる)破産手続においてのみ設けることが考えられる。もっとも、否認の対象となった行為の当時に、その後どのような倒産処理手続が開始されることになるかを予測することは通常は困難であるから、売渡請求権の制度を破産手続においてのみ設けることとすると、1に記載したこの制度の趣旨を相当程度没却することになると考えられる。

(2) B案【破産管財人等に現物返還か差額賠償かの選択権を認める考え方】
<1> 詐害行為が否認されたときは相手方は、次の(i)又は(ii)に掲げる区分に応じ、それぞれ(i)又は(ii)に定める権利を行使することができるものとする。
(i) 破産者の受けた反対給付が破産財団中に現存する場合 当該反対給付の返還を請求する権利
(ii) 破産者の受けた反対給付が破産財団中に現存しない場合 財団債権者として反対給付の価額の償還を請求する権利
<2> <1>(ii)にかかわらず、詐害行為が否認された場合において、破産者が、当該行為の当時、対価として取得した財産について隠匿等の処分をする意思を有し、かつ、相手方が、当該行為の当時、破産者がその意思を有していたことを知っていたときは、相手方は 次の(i)又は(ii)に掲げる区分に応じ、それぞれ(i)又は(ii)に定める権利を行使することができるものとする。
(i) 破産者の受けた反対給付によって生じた利益が破産財団に現存する場合 財団債権者としてその現存利益の返還を請求する権利
(ii) 破産者の受けた反対給付によって生じた利益が破産財団に現存しない場合 破産債権者として反対給付の価額の償還を請求する権利
<3> 破産管財人は、詐害行為の否認によって破産財団に復帰すべき財産の返還に代えて、相手方に対し、当該財産の価額から<1>又は<2>によって財団債権となる額(<1>(i)の場合にあっては 破産者の受けた反対給付の価額)を控除した額の償還を求めることができるものとする。

(注)
1(1) B案は、<3>の制度(以下「差額賠償の制度」という。)の趣旨を、主として、破産管財人等の事務の円滑化・合理化に求め、現物返還か差額賠償かの選択権を破産管財人等に認める考え方である。
(2)この考え方によると、破産管財人等が差額賠償を選択した場合には、売却の否認の相手方は、事実上適正価格による買受けを強制されることになることから、この点が否認の相手方に不当な不利益を課すものといえないかどうかが問題となる。
この点については 危機時期にある債務者の財産を安価に買い受けた者としては、通常はその価格であるからこそ買い受けたのであって、適正価格であれば売買契約は締結しなかったという場合も多いものと考えられる。そうであるにもかかわらず、その者の意思に関わらず差額賠償を認めるとすると、否認の相手方は、当該否認の対象となった売買契約等を締結する前の状態より不利な立場に置かれることになって、相当でないとも考えられる。
そして、この点の結論が不当であると考えるのであれば、再建型の手続を含め、破産管財人等に現物返還か差額賠償かの選択権を認めることは相当でないということになると考えられる。
(3) これに対して、破産管財人に差額賠償をするか否かの選択権を認めたとしても、否認の相手方に不当な不利益を課すものではないと考えるのであれば、破産手続の場合を含め、破産管財人に選択権を認めることも可能であると考えられる。
この考え方をとる場合には 上記の問題点については、次のような説明をすることが考えられる。
(a) 差額賠償の制度は、売買代金額の上積みを要求するものではなく、否認対象財産の一部を金銭的に評価した上で取り戻すに過ぎない。
(b) 現行法の下でも、現物の返還ができない場合には、否認の相手方は、目的物全体の価額賠償義務を負担するのであって、その場合に破産管財人等が価額賠償請求権と相手方の取得する財団債権とを相殺すれば、結果的に差額賠償を認めたのと同じ結果となるのであるから、全ての場合につき差額賠償をするか否かの選択権を認めることが否認の相手方に不当な不利益を課すことにはならないと考えられる。
(c) この制度によれば、適正価格からかけ離れた価格で買い受けをした者ほど不利益を受けることとなり、適正価格に近い価格で買い受けた者は通常は差額賠償を希望することが多いと考えられるから、その意味では 不利益を受ける否認の相手方の利益を考慮する必要性に乏しい。
(4) 民法の詐害行為取消権における議論では、債権者は、現物返還が可能な場合には、金銭賠償を求めることはできないと一般に解されていることから、 B案をとる場合には、詐害行為取消権との間の整合性についても検討する必要があると考えられる。
この点については 詐害行為取消権は、一債権者が将来の強制執行の準備として行使するものであり、取消の対象となった財産を公平に分配するための制度が設けられていないことから、取消債権者からの価額賠償を認めると、結果的に当該取消債権者が事実上の優先弁済を受けることとなるのに対して、否認権の場合には、公正・中立な立場にある破産管財人等が金銭を受領し、これを債権者に対する弁済原資とするか、債権者の共同の利益に用いることが当然に予定されているのであるから、否認権においてB案のような制度を設けたとしても、必ずしも詐害行為取消権との間で整合性を欠くことにはならないと考えられるが、どうか。
2 差額賠償の制度趣旨を上記のように考えると、破産手続では、全ての財産を換価するのであるから、破産管財人に選択権を認める必要がなく、差額賠償のみを認めることで足りるのではないかとも考えられるが、例えば、否認の対象となった財産と他の財産との一括売却等によって破産財団が増殖するといった場合も考えられ、その場合には現物返還を認める意味があるから、破産手続においても選択権を認めることとしている。

第2 相殺権

相殺禁止の範囲の見直し(破産債権者の債務負担(破産法第104条第1号及び第2号参照)
<1> 破産債権者は 次に掲げる場合には、相殺をすることができないものとする。
(i) 破産手続開始後に破産者に対して債務を負担したとき。
(ii) 支払不能になった後に、(a)破産者との間で、契約によって負担する債務を専ら破産債権との相殺に供する目的で破産者の財産の処分を内容とする契約を締結し、又は(b)破産者に対して債務を負担する者の債務を引き受けたことによって、破産者に対して債務を負担した場合であって(a)の契約締結又は(b)の債務引受の当時、支払不能であったことを知っていたとき。
(iii)支払の停止があった後に破産者に対して債務を負担した場合であって、その当時、支払の停止があったことを知っていたとき。ただし、当該支払の停止があった当時、支払不能でなかったときは、この限りでないものとする。
(iv) 破産手続開始の申立てがあった後に破産者に対して債務を負担した場合であって、その当時、破産手続開始の申立てがあったことを知っていたとき。
<2> <1>に該当する場合であっても、次のアからウまでに掲げる要件に該当する場合には、破産債権者は、破産手続によらないで、相殺をすることができるものとする。

ア 支払不能を知っていたことを理由とする場合(<1>(ii)に該当する場合)
<1>(i)の債務の負担が、次に掲げる原因に基づくとき.
[(a) 法定の原因]
(b) 破産債権者が支払不能であったことを知った時より前に生じた原因
(c) 破産手続開始の申立てがあった時より1年以上前に生じた原因

イ 支払の停止を知っていたことを理由とする場合(<1>(iii)に該当する場合)
<1>(iii)の債務の負担が、次に掲げる原因に基づくとき。
(a) 法定の原因
(b) 破産債権者が支払の停止があったことを知った時より前に生じた原因
(c) 破産手続開始の申立てがあった時より1年以上前に生じた原因

ウ 破産手続開始のに申立てを知っていたことを理由とする場合(<1>(iv)に該当する場合)
<1>(iv)の債務の負担が次に掲げる原因に基づくとき。
(a) 法定の原因
(b) 破産債権者が破産手続開始の申立てがあったことを知ったときより前に生じた原因
(c) 破産手続開始の申立てがあった時より1年以上前に生じた原因

(注)
1 この考え方は、第32回会議で席上配布された「別案」を採用するものである。
2 第32回会議では <1>(ii)(a)の「専ら破産債権との相殺に供する目的」の解釈が必ずしも明らかでないとの指摘がされた。この点については、次のように解することができると考えられるが、どのように考えるか。
(1) 契約締結の目的が「専ら」相殺による債権回収にあるといえるためには 他に当該契約を締結する必要性に乏しく、この目的があるが故に当該契約を締結したものと認められることが必要であると考えられる。
したがって、例えば、(a)銀行等の金融機関が日常業務として行っている口座への入金契約等については、入金された金銭の運用による利益も見込まれる等、相殺ができないが故に入金を拒むとは一般に考えにくいことからすると、仮に当該契約の当時、破産債権者である金融機関が相殺による債権回収を念頭に置いている場合であっても、通常はこの要件には該当しないと考えられる。また、(b)支払不能前から破産者との間で継続的に取引を行っており、破産債権者にとってその取引を継続する必要性が相殺の目的以外にあるといった場合(例えば、破産債権者がその事業の継続に必要な原材料を破産者から継続的に購入していたという場合等)も、通常はこの要件に該当しないと考えられる。
(2)相殺による債権回収以外にも契約締結の目的ないし動機が存在する場合に「専ら破産債権との相殺に供する目的」の該当性をいかに認定するかが問題となるが、この点を認定するに当たっては、(a)当該契約と相殺の意思表示との間に時間的な接着性が認められるかどうか、(b)時間的な接着性が認められない場合には、破産債権者において相殺権の行使を確実なものとするための措置を講じていたかどうか等の事情が重要な間接事実になると考えられる。例えば、手数料収入を得て債権の取立てをした結果、債務を負担したという場合については、取り立てた金銭を破産者に返還する意思がなく、確実に相殺に供することが可能な状態にしていたという事実は、「専ら破産債権との相殺に供するに目的」を肯定する方向に働くが、取り立てた金銭を破産者の口座に入金し、破産者がいつでも口座から引き出すことが可能であったという事実は、これを否定する方向に働くと考えられる。
3 第32回会議では、「専ら破産債権との相殺に供する目的」がある場合であっても、相殺に対する合理的期待がある場合は、相殺禁止の対象から除外すべきであるとの指摘がされたが、「専ら破産債権との相殺に供する目的」が上記注2のように、債権回収目的そのものを意味する概念であるとすると、これに該当するにも関わらず、相殺の合理的期待があるとして相殺禁止の対象から除外されるのは、「前に生じた原因」(<2>ア(b))に当たる場合に限定されると考えられる。
したがって、支払不能概念を用いる場合について、「専ら破産債権との相殺に供する目的」に加えて、さらに要件を限定することは困難であると考えられるが、どうか。

○ その他
1 更生手続につき採用された個別の手続・制度の再生手続における採否
(1) 再生手続開始の申立てについての決定前の意見聴取
裁判所は 再生手続開始の申立てについての決定をするには、当該申立てを棄却すべきこと又は再生手続開始の決定をすべきことが明らかである場合を除き、再生債務者の使用人その他の従業者の過半数で組織する労働組合(これがないときは、再生債務者の使用人その他の従業者の過半数で組織する労働組合がないときは再生債務者の使用人その他の従業者の過半数を代表する者)の意見を聴かなければならないものとすることで、どうか。(会社更生法改正要綱第十五の一、会社更生法第22条第1項参照)

(注)
更生手続につき採用された管財人の選任についての意見陳述の機会の付与の制度(会社更生法改正要綱第十五の二、会社更生法第85条第4項参照)は、更生会社、届出をした更生債権者等及び株主等に対する意見陳述の機会の付与の制度(同要綱第三十六の四の4参照)を前提とするものであるが、いわゆる D I P型を原則とする再生手続においては、届出をした再生債権者に対する意見陳述の機会の付与の制度を設けるニーズは乏しく、また、労働組合等に対する陳述の機会の付与の制度のみを設ける必要性も乏しいと考えられるがどうか。

なお、この制度が設けられない場合でも、労働組合等は、適宜の方法で裁判所に意見を述べることができ、また、裁判所は、必要があると認めるときは、職権調査権の行使として労働組合等の意見を求めることができる。

(2) 取締役等の競業避止義務
ア 取締役及び執行役の競業避止義務
D I P型を原則とする再生手続においては、取締役等の競業行為に対する規制については、商法等の規定を直接適用することができることがほとんどであることから、特段の手当をしないことも考えられるが、どのように考えるか。手当をする場合には、株式会社の最高意思決定機関である株主総会の権限は原則として手続開始後も失われないという建前を採用している再生手続においては、競業避止義務の解除が取締役会の権限とされて いる株式会社及び相互会社についてのみ、次のような手当をすることで、どうか。
<1> 株式会社又は相互会社である再生債務者の取締役及び執行役は、管理命令が発せられた場合において、競業行為(商法第264条第1項参照)をするには、管財人に対し、当該取引に関する重要な事実を開示して、その承認を受けなければならないものとする。
<2> <1>の取引をした取締役又は執行役は、遅滞なく当該取引についての重要な事実を管財人に報告しなければならないものとする。
<3> 取締役又は執行役が<1>に違反して自己のために取引をしたときは、管財人はこれをもって再生債務者のためにしたものとみなすことができるものとする。ただし、当該取引の時から1年を経過したときは、この限りでないものとする。
<4> 取締役又は執行役が<1>に違反して取引をしたときは、当該取引により取締役若しくは執行役又は第一者が得た利益の額は再生債務者が被った損害の額と推定するものとする。ただし、管財人が<2>本文により、当該取引を再生債務者のためにしたものとみなしたときは、この限りでないものとする。
<5> 保全管理人が選任されている場合についても、<1>から<4>までに準じた取扱いをするものとする。

イ 管財人等の競業避止義務
D I P型を原則とする再生手続においては、管財人又は保全管理人が選任されることはほとんどないことから、特段の手当をしないことも考えられるが、どのように考えるか。手当をする場合には 次のような手当をすることで、どうか。
<1> 管財人は、競業行為をするには、裁判所に対し、当該取引に関する重要な事実を開示して、その許可を得なければならないものとする。
<2> <1>の取引をした管財人は、遅滞なく当該取引についての重要な事実を裁判所に報告しなければならないものとする。
<3> 管財人が<1>に違反して自己のために取引をしたときは、当該管財人以外の管財人(管財人がない場合にあっては 再生債務者)はこれをもって再生債務者のためにしたものとみなすことができるものとする。ただし、当該取引の時から1年を経過したときは、この限りでないものとする。
<4> 管財人が<1>に違反して取引をした場合には、ア<4>と同様に取り扱うものとする。
<5> 保全管理人の競業行為についても、<1>から<4>までに準じた取扱いをするものとする。(会社更生法改正要綱第十九、会社更生法第34条第1項・第4項、第65条、第79条参照)

(注)
1 競業行為については、合名会社では他の社員の承諾を必要とし(商法第74条)有限会社では社員総会の認許を必要とする(有限会社法第29条)等、通常は 法人の最高意思決定機関の関与を必要としており、株式会社及び相互会社についての競業避止義務の解除が取締役会の権限とされている(商法第264条、保険業法第51条第2項参照)。これを踏まえて、アでは、仮に手当を講ずる場合には、株式会社及び相互会社についてのみ講ずるものとしている。
2 (注1)のとおり、法人の業務執行機関の競業行為についての規制の態様には様々なものがある。しかし、管財人の競業行為についての規制は、管財人の職務の適正という観点からされるものであり、個々の法人固有の規制とは、必ずしも直接関連するものではないこと(協同組織金融機関の更生手続における管財人の競業避止義務につき金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第51条参照)から、イでは、仮に手当を講ずる場合には、法人一般について講ずるものとしている。なお、イ<3>では、「当該管財人以外の管財人」がないときは再生債務者が介入権を行使するものとしている。
3 破産手続については、競業避止義務を課することによって会社等の利益を保護する必要性はないと考えられること(競業避止義務を定める商法第74条、第264条、有限会社法第29条等は清算人に準用されていない。)から、特段の手当をしないものとする。

(3) その他
更生手続に準じて、<1>再生計画における開始後債権の明示(会社更生法改正要綱第二十九の二の2、会社更生法第167条第1項第7号参照)、<2>社債権者の手続参加(同要綱第三十四、同法第43条第1項・第2項、第190条参照)、<3>代理委員の選任勧告及び裁判所による代理委員の選任(同要綱篇三十五、同法第122条第2項・第6項、第123条、第127条第4号参照)、<4>議決権の不統一行使(同要綱第三十七、同法第189条第2項・第3項、第193条参照)、<5>基準日による議決権者の確定(同要綱第三十八、同法第194条参照)について、所要の整備をするものとする。

(注)
1 <2>については、投資法人の投資法人債(投資信託及び投資法人に関する法律第2条第24項参照)、相互会社の社債(保険業法第61条参照)、特定目的会社の特定社債(資産の流動化に関する法律第2条第7項。なお、旧資産流動化法上の特定社債を含む。)も、社債(担保付社債を含む。)に準じて取り扱うものとする。
なお、破産手続については、今回の見直しにより、債権者集会の決議の成立要件が「議決権を行使することができる破産債権者で出席した者の議決権の総額の2分の1を超える議決権を有する者の賛成」に改められる(倒産法部会資料40・第7・5参照)ことから、特段の手当をしないものとする。
2 <4>については、不統一行使をした場合の頭数の算定方法が問題になり得る。まず、議決権の一部を同意するものとして行使し、残部を放棄した場合については、議決権行使者数(分母)及び同意者数(分子)にそれぞれ1を加えるのが自然であると思われる。
次に、議決権の一部を同意するものとして行使し、残部を同意しないものとして行使した場合については、不統一行使をしない他の議決権者との均衡を考えれば複数の議決権を行使することを認めるのは適当でない。他方で、一個の再生債権を二個に分割して譲渡した場合との均衡や、不統一行使を許容する制度は再生計画案の成立の難易に対しては中立的であるべきであると考えられることを考えれば、議決権行使者数 (分母)及び同意者数(分子)に2:1の割合で加えるのが相当であると考えられる。
そこで、議決権行使者数(分母)に1を、同意者数(分子)に0.5を加えることで、どうか。さらに、小規模個人再生における再生計画案の決議についても、議決権の不統一行使の制度を整備する必要があると考えられる。小規模個人再生においては「再生計画案に同意しない者は裁判所の定める期間内に書面でその旨を回答すべき」こととされており(民事再生法第230条第4項)、「再生計画案に同意しない旨を書面で回答した議決権者が議決権者総数の半数に満たず、かつ、その議決権の額が議決権者の議決権の総額の二分の一を超えないときは、再生計画案の可決があったものとみなす」とされていること(同条第5項)から、議決権の一部につき同意しない旨を書面で回答し、残部については書面で他の回答(同意する、棄権する)をした場合については議決権者総数(分母)に1を、同意しない旨を書面で回答した議決権者数(分子)に0.5を加えることで、どうか。また、議決権の一部につき同意しない旨を書面で回答し、残部については書面で回答しなかった場合についても、議決権者総数(分母)に1を、同意しない旨を書面で回答した議決権者数(分子)に 0.5を加えることで、どうか。
なお、破産手続については 債権者集会の決議事項(破産法第153条、第205条参照)の性質止、債権回収会社(サービサ一)に対して債権の管理・回収の委託をしている複数の者の意見が対立するという場面等は想定しにくいことから、特段の手当をしないものとする。
3 <5>については、小規模個人再生における再生計画案の決議については、基準日による議決権者の確定の制度が必要となるほど多数の再生債権者が参加することは想定しがたいことから、特段の手当をしないことで、どうか。
なお、破産手続については、債権者集会の決議事項(破産法第153条、第205条参照)の性質上、基準日による議決権者の確定の制度を設けてまで、議決権者を厳密に確定する必要性は乏しいと考えられることから、特段の手当をしないものとする。

(更生手続につき採用された個別の手続・制度の再生手続における採否関係後注)
更生手続においては、更生計画の定めにより社債を発行する場合には、債務の期限の制限に関する規定(会社更生法第168条第5項及び第233条第3項)は、適用されない(会社更生法改正要綱第四十六、会社更生法第168条第6項及び第233条第4項)。これは、更生計画の定めにより社債の発行をすることができることを前提とする規律である(同法第177条、第217条等参照)。

再生手続においては、再生計画の定めにより社債の発行をすることは不可能であり、再生計画外の手続により発行した社債等を代物弁済することがあるとしても、それは「再生計画によって債務が負担され、又は債務の期限が猶予されるとき」(民事再生法第155条第2項)に該当せず、債務の期限の制限に服さないと考えられることから、特段の手当をしないものとする。

2 再生手続固有の見直し
株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定款の定めがある株式会社である再生債務者の新株の発行に関する特則(株主総会の特別決議に代わる裁判所の許可の制度)
次のような制度を設けることが考えられるが、どのように考えるか。
<1> 株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定款の定めがある株式会社である再生債務者がその財産をもって債務を完済することができず、かつ、その株主に新株の引受権を与えてする新株の発行によっては再生債務者の事業の再生のために必要とする資金の調達を図ることができないときは、裁判所は、再生債務者の申立てにより、再生債務者が提出した再生計画案に係る再生計画認可の決定の確定を条件として、株主以外の者に新株の引受権を与えてする新株の発行について商法第280条ノ5ノ2第1項ただし書に規定する株主総会の決議に代わる許可を与えることができるものとする。
<2> <1>の許可があったときは、再生債務者は、その提出する再生計画案において、当該許可に係る株式の種類及び数を記載しなければならないものとする。
<3> <1>の許可があった場合において、<2>の再生計画案に係る再生計画認可の決定が確定したときは 再生債務者は、株主以外の者に<2>の株式の種類及び数の新株の引受権を与えて新株を発行することができるものとする。

(注)
1 民事再生法では、営業譲渡、資本の減少、株式の併合、再生債務者が発行する株式の総数についての定款の変更に関し、これらの事項が再生債務者の事業の継続のために必要となる場合があり得ることを考慮して、株主総会の特別決議(商法第214条、第245条、第342条、第343条、第375条参照)を不要とするための手当が講じられている(同法第43条、第154条第3項、第166条、第183条参照)。
これに対し、いわゆる譲渡制限会社が株主以外の者に対し新株を発行する場合に必要となる株主総会の特別決議(商法第280条ノ5ノ2第1項ただし書)については、譲渡制限会社では再生手続開始の決定があった後も特別決議の成立が殊更困難になるものではないとの前提に立ち、特段の手当を講じていない。しかし、民事再生法施行後.実際には譲渡制限会社でも特別決議の成立が困難な事案もあり、立法的な手当が必要であるとの指摘がされるに至っている。
そこで、利用対象を限定しない再生手続において株式会社に限定した特則を設けることは異例である上、再生手続は株主を手続内に取り込んでおらず、株式会社の組織的・社団的関係に関する特則を設けることは更に異例であることを考慮して、必要最小限度の手当をするとの考え方に立ち、株主総会の特別決議を不要とするための制度を設けるものとしている。
2 (注1)のとおり、再生手続において株主総会の特別決議を不要とする商法の特則を設けることは極めて例外的なものであり、そのような特則を設ける高度の必要性及び合理性がなければならないと考えられることから、裁判所の許可(特別決議に代わる許可)を必要とし、許可の要件として、再生債務者が債務超過の状態にあり、株主の再生債務者に対する財産的持分が実質的に失われていることに加えて、高度の必要性があること、すなわち、「株主に新株の引受権を与えてする新株の発行によっては再生債務者の事業の再生のために必要とする資金の調達を図ることができない」こととしている。
また、<1>営業譲渡ほどの緊急性は認められないこと、<2>譲渡制限会社において法律上当然に株主に新株の引受権を与えて株主の持株比率の低下を防止し、閉鎖性を維持することを保障した趣旨に照らし、再生手続が再生計画認可の決定の確定に至らずに不成功に終わる場合にまで、株主以外の者に対する新株の発行を容易にする必要性も合理性も認められないと考えられることから、再生計画認可の決定の確定を条件としている。
なお、新株の発行は基本的に取締役会の決議事項であること(商法第280条ノ2参照) 再生手続がD I P型を原則とする手続であること、必要最小限度の手当を講ずるという趣旨等を考慮して、特別決議に代わる許可の申立権は再生債務者のみに認め、また、特則適用の条件となる再生計画認可の決定の確定については、再生債務者が提出した再生計画案に係るものに限っている。

3 このような特則を設ける場合には、株主の手続保障の観点から、<1>の許可の決定書の送達、<1>の許可に対する即時抗告について、所要の規定(民事再生法第43条第2項から第6項まで参照)を整備することになると考えられる。

4 この考え方は、管理命令が発せられている場合でも、新株の発行は再生債務者の決定にゆだねるとの前提に立っているが、管理命令が発せられている場合(再生債務者の財産の管理又は処分が失当であるときその他再生債務者の事業の再生のためにて特に必要があると認めるとき)には、実際に株主総会の特別決議に代わる許可がされる可能性は乏しいと考えられる。
なお、管理命令が発せられている場合には、資本構成の変更の必要性も高いと考えられるが、この考え方によれば、そのような場合に資本構成の変更を図ることは困難である。そこで、管理命令が発せられている場合には管財人が提出した再生計画の定めによる新株の発行を認めるとの考え方があり得るが、どのように考えるか。さらに、管財人が提出した再生計画の定めによる新株の発行を譲渡制限会社に限らずに認めるとの考え方もあり得るが、どのように考えるか。