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【第一次案】第1部 破産手続: 第3 保全処分

1 強制執行手続等の中止命令

<1> 裁判所は、破産の申立てがあった場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産の申立てにつき決定があるまでの間、次に掲げる手続の中止を命ずることができるものとする。ただし、

(1)に掲げる手続については、その手続の申立人である債権者に不当な損害を及ぼすおそれがない場合に限るものとする(民事再生法第26条第1項、会社更生法改正案第24条第1項参照)。

(i)強制執行、仮差押え若しくは仮処分、企業担保権の実行手続又は一般の先取特権若しくは留置権(商法の規定によるものを除く。)による競売の手続で、破産財団に属する財産に対して既にされているもの
(ii)債務者の財産関係の訴訟手続
(iii)債務者の財産関係の事件で行政庁に係属しているものの手続
(iV)債務者の責任制限手続(船舶の所有者等の責任の制限に関する法律又は油濁損害賠償保障法に規定する責任制限手続をいう。)(破産法第155条ノ2参照)

<2> 裁判所は、<1>による中止の命令を変更し、又は取り消すことができるものとする(民事再生法第26条第2項、会社更生法改正案第24条第4項参照)。

<3> <1>による中止の命令及び<2>による決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする(民事再生法第26条第4項、会社更生法改正案第24条第6項参照)。

<4><3>の即時抗告は、執行停止の効力を有しないものとする(民事再生法第26条第5項、会社更生法改正案第24条第7項参照)。

<5> <3>に規定する裁判及び<3>の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならないものとする(民事再生法第26条第6項、会社更生法改正案第24条第8項参照)。

(注)
1 再生手続においては、強制執行の手続等が中止したままの状態では、その対象となっている財産を処分すること等は困鍾であることから。当該強制執行等の対象となっている財産が再生債務者の事業の継続のために特に必要がある場合には、当該強制執行等の取消しをすることができるという制度が設けられており(民事再生法第26条第3項)更生手続においても、同様の制度が設けられることとされている(会社更生法改正案第24条第2 項)、これに対して、清算型の破産手続においては、再建型の手続とは異なり、破産宣告後においては原則的には破産者の事業は廃止されることになるため、事業の継続のために、強制執行等の対象となっている財産を利用する必要性は-般的には低いと認められることから、保全の段階において、あえて認めるまでの必要はないとして、中間試案においても強制執行等の取消しの制度は設けるものとされていない。
これに対しては、破産手続においても、営業を譲渡することにより配当原資が増える場合など、破産債権者一般の利益となる場合もあるから、このような場合には、再生手続や更生手続と同様に、強制執行等の取消しの制度を必要とする場面も一応あり得ると考えられる。もつとも、このような取消しを認めて、営業の譲渡を可能とする場合などは、その換価代金が破産財団に組み込まれることが制度上保障されることが必要であり、保全管理人が選任されている場合であって、保全の段階に早期に特定の財産を処分することが、破産債権者の一般の利益になると認められる場合に限り認めるべきであると考えられる。これらの点についてどのように考えるか。

2 <1>(i)において中止される強制執行の範囲について検討する必要がある。破産宣告後における財団債権に基づく強制執行を認めない(中間試案第3部第2の後注1参照)ものとすることを前提とするときは、破産宣告前においても財団債権となるべき債権(中間試案第8部第2の1(i)、同第2の2(1)参照)に基づく強制執行を命令の対象に含めるものとすることが考えられる。すなわち、再生手続及び更生手続においては手続開始後においても共益債権に基づく強制執行が認められることを前提とした規定(民事再生法第121条第3項及び会社更生法第210条の2第1項参照)が設けられているように、これらの手続においては共益債権すら支払えない事態は基本的には想定されていないが、破産手続においては本来的に債務者の手元にある財産は少ないことに加えて、破産手続における財団債権にはすべての破産債権者の共益的な費用としての性質を有するものだけでなく、政策的に財団債権とされているものも含まれていることからすると、財団債権の全額を支払えない場合も少なくないと考えられる。そうであるにもかかわらず、このような場合にまで、一部の財団債権の強制執行を認めると、財団債権者間の平等を害することになり、ひいては適正かつ公平な債務者の財産の清算を図るという破産手続の目的に適合しないことになると解せられる。意見照会においても、実務上財団債権すら全額弁済できない場合が住々にしてあるので、このような場合には、財団債権に基づく強制執行を認めるべきではないとの意見が寄せられているところである。
そこで、このような指摘を踏まえて、財団債権者間の平等を図り、破産手続を円滑に進 行させるという観点から、破産宣告前であっても、財団債権の全額を支払えないことが見込まれる事情があれば、、財団債権となるべき債権については強制執行の中止〔又は取消し〕をすることができるものとすることが考えられる。他方では、債務者の財産をもって将来財団債権の全額を支払うことができないと見込まれる状態を要件とするのであれば、そのような状態になっているときは、その時点において債務者に破産原因があると認定することは十分可能であると考えられるので、破産宣告をすれば足り、結局、財団債権となるべき債権が破産宣告の前に中止〔又は取消し〕されることはないのではないかとの指摘も考えられる。
したがって、この点については、破産宣告後における財団債権に基づく強制執行も認めないものとしても、その場合の根拠をどのように考えるか等についての検討結果を踏まえて、なお検討する必要があると考えられる。

3 更生手続においては、国税滞納処分で、開始前会社の財産に対して既にされているものの中止を命ずることができるものとされているが(会社更生法改正案第24条第2項)、破産手続では、破産宣告前に滞納処分がされている場合にあっては破産宣告はその処分の続行を妨げない(破産法第71条)と規定されており、既に滞納処分がされている租税債権については、中止の対象から除くものとしている。

2 包括的禁止命令
(i)包括的禁止命令
<1>裁判所は、破産の申立てがあった場合において、強制執行手続等の中止命令(前記1参照)によっては債権者の間の平等を害するおそれその他破産手続の目的を十分に達成することができないおそれがあると認めるべき特別の事情があるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産の申立てにつき決定があるまでの間、すべての債権者に対し、破産財団に属すべき財産に対する強制執行等及び滞納処分の禁止を命ずることができる。ただし、事前に又は同時に、破産財団に属すべき主要な財産に関し宣告前の保全処分(破産法第155条参照)をした場合又は後記5による処分(保全管理命令)をした場合に限るものとする(民事再生法第29条第1項、、会社更生法改正案第25条第1項参照)。

<2> 包括的禁止命令が発せられた場合には、破産財団に属すべき財産に対して既にされている債権に基づく強制執行等の手続は、中止するものとする(民事再生法第27条第2項、会社更生法改正案第25条第3項参照)。

<3> 裁判所は、包括的禁止命令を変更し、又は取り消すことができるものとする(民事再生法第27条第3項、会社更生法改正案第4項参照)。

<4> 包括的禁止命令及び<3>による決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする(民事再生法第27条第5項、会社更生法改正案第25条第6項参照)。

<5> <4>の即時抗告は、執行停止の効力を有しないものとする(民事再生法第27条第6項、会社更生法改正案第25条第7項参照)。

<6> 包括的禁止命令が発せられたときは、債権については、当該包括的禁止命令が効力を失った日の翌日から2月を経過する日までの間は、時効は、完成しないものとする(民事再生法第27条第7項、会社更生法改正案第25条第8項参照)。

(注)
1 包括的禁止命令の制度の導入については、意見照会においても、破産の申立てをした債務者の規模が大きいため、全国各地に財産が存する場合や売掛金債権を多数有する場合などにおいては、これらの財産等に対する手続が各地で同時並行的に行われることもあるが、個々の強制執行手続に対し、個別に中止命令を求めていては、結果として財産の保全に支障を来すおそれがあるとの指摘もされており、この制度を導入することについては多数が賛成であった。

2 財団債権に基づく強制執行等の中止命令を認めるものとする場合(前記1(注)2参照)には、財団債権に基づく強制執行手続も包括的禁止命令の対象に含まれるものとなると考えられる。その場合には、以下のとおり、一定の範囲に属する債権に基づく強制執行手続等を包括的禁止命令の対象からあらかじめ除外する制度が必要になると考えられる。民事再生法では、包括的禁止命令により特定の再生債権者に不当な損害を及ぼすおそれがある場合には、当該再生債権者の申立てにより、その者との関係では包括的禁止命令を解除する制度(後記2(3)参照)が設けられている。しかし、破産手続における包括的禁止命令が財団債権や労働債権等の-段の優先権のある債権に基づく強制執行等をも禁止するものとする場合には、破産手続は更生手続と同様に、無担保で優先権のない再生債権に基づく強制執行等のみを禁止するにとどまる民事再生法上の包括的禁止命令以上の強力な効力を有することになることから、包括的禁止命令発令後の個別的申立てを前提とする解除の制度のみでは、債権者の救済の手段としては不十分であると考えられる。そこで、会社更生法改正案第25条第2項と同様に、包括的禁止命令により労働債権等の一定の範囲に属する破産債権について不当な損害を及ぼすものと認められる場合には、会社更生法改正案と同様に、これらの債権に基づく強制執行等を包括的禁止命令の対象からあらかじめ除外することができるものとするのが相当である。

3 財団債権となるべき債権のうち租税債権については、破産宣告により既に開始された滞納処分は中止されないが、新たな滞納処分はすることができないとされており(破産法第71条)、財団債権に基づく強制執行が包括的禁止命令の対象に含まれる場合(前記(注)2参照)には、租税債権に基づく滞納処分についても新たな処分は禁止され得ることになると考えられる。この場合、財団債権となるべき租説債権の算定の基準となる「一定期間」の計算の方法が問題となるが、これについては、包括的禁止命令が発せられた日から破産宣告までの間(包括的禁止命令の解除があった場合にあっては包括的禁止命令が発せられた日から命令の解除があった日までの問)は、新たな滞納処分をすることができない ことになるため、このように滞納処分をすることができない期間を「一定期間」の計算から除外する必要があると考えられる。すなわち、租税債権の取扱いについては、租説債権者が国税徴収法等により付与されている自力執行権等を合理的期間内に行使しなかった場合には、財団債権を優先的破産債権とすることに一定の合理性が認められることを考慮して、自力執行権を行使することができなくなる時期である破産宣告を基準として財団債権となるべき租税債権を算定するものとされている(中間試案第3部第2の1(1)参照)が、包括的禁止命令の効力が存する間は、<1>の効果により自力執行権が行使し得なくなることから、この期間を財団債権となるべき租税債権の算定の基準となる「一定期間」の計算から除外する必要があると考えられる(倒産法部会資料第27、第3の3参照)。

4 <1>により中止した強制執行手続等を取り消すことができるか否かについては、前記 (1)(注)1と同様の問題があるので、なお検討するものとする。

(2)包括的禁止命令に関する公告及び送達等
<1> 包括的禁止命令及びこれを変更し、又は取り消す旨の決定があった場合には、その旨を公告し、その決定書を債務者(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人。<2>において同じ。)及び申立人に送達し、かつ、その決定の主文を知れている債権者及び債務者(保全管理人が選任されている場合に限る。)に通知しなければならないものとする(民事再生法第28条第1項、会社更生法改正案第26条第1項参照)。

<2> 包括的禁止命令及びこれを変更し、又は取り消す旨の決定は、債務者に対する決定書の送達がされた時から、効力を生ずるものとする(民事再生法第28条第2項、会社更生法改正案第26条第2項参照)。

<3>(1)<5>の即時抗告についての裁判(包括的禁止命令を変更し、又は取り消す旨の決定を除く。)があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならないものとする(民事再生法第28条第3項、会社更生法改正案第26条第3項参照)。

(3)包括的禁止命令の解除
<1> 裁判所は、包括的禁止命令を発した場合において、債権に基づく強制執行等の申立人である債権者に不当な損害を及ぼすおそれがあると認めるときは、当該債権者の申立てにより、当該債権者に限り当該包括的禁止命令を解除する旨の決定をすることができるものとする。この場合において、当該債権者は、債務者の財産に対する当該債権に基づく強制執行等をすることができ、当該包括的禁止命令が発せられる前に当該債権者がした当該債権に基づく強制執行等の手続は、続行するものとする(民事再生法第29条第1項、会社更生法改正案第27条第1項参照)。

<2> 包括的禁止命令が発せられたときは、債権については、<1>による解除の決定があった日の翌日から2月を経過する日までの間は、時効は、完成しないものとする(民事再生法第29条第2項、会社更生法改正案第27条第3項参照)。

<3> <1>の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができるものとする(民事再生法第29条第3項、会社更生法改正案第27条第4項参照)。

<4> <3>の即時抗告は、執行停止の効力を有しないものとする(民事再生法第29条第4項;会社更生法改正案第27条第5項参照)。

<5> <1>の申立てについての裁判及び<3>の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならないものとする。この場合においては、代用公告の規定は、適用しないものとする(民事再生法第29条第5項、会社更生法改正案第27条第6項参照)。

(注) 包括的禁止命令により特定の債権者に不当な損害を及ぼすおそれがある場合には、民事再生法及び会社更生法改正案と同様の観点から、当該債権者の申立てにより、その者との関係では包括的禁止命令を解除する制度を設けるものとするものである。

3 弁済禁止の保全処分に違反してされた弁済等の効力
裁判所が債務者に対して弁済その他の債務を消滅させる行為をすることを禁止する旨の保全処分を命じた場合には、債権者は、破産手続の関係においては、当該保全処分に反してされた弁済その他の債務を消滅させる行為の効力を主張することができないものとする。ただし、債権者が、その行為の当時、当該保全処分がされたことを知っていたときに限るものとする(民事再生法第30条第6項、会社更生法改正案第28条第6項)。

4 否認権のための保全処分
(1)保全処分の発令
<1> 裁判所は、破産の申立てがあった場合において、破産の決定があるまでの間に否認権を保全するため必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、第三者が所有し、又は占有する財産に関し、処分禁止の仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができるものとする。

<2> <1>による保全処分は、担保を立てさせて、又は立てさせないで命ずることができるものとする。

<3> 裁判所は、<1>による保全処分を変更し、又は取り消すことができるものとする。

<4> <1>による保全処分及び<3>の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする。

<5> <4>の即時抗告は、執行停止の効力を有しないものとする。

<6> <4>に規定する裁判及び<4>の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならないものとする。この場合においては、、代用公告の規定は、適用しないものとする。
(注) 意見照会においても、職権による保全処分を認めるべきであるとの指摘がされているところであり。法人の役員の財産に対する保全処分(民事再生法第142条第1項、会社更生法改正案第40条第1項参照)との均衡をも考慮し、職権によっても保全処分ができるものとするものである。

(2)破産管財人による手続の続行と担保の取扱い
<1>(1)<1>による保全処分が命じられた場合において、破産宣告があったときは、破産管財人は、当該保全処分に係る手続を続行することができるものとする。

<2> 破産管財人は、(1)<1>の保全処分が担保を立てさせて命じられている場合(担保が破産財団に属する財産をもって立てられている場合を除く。)において、<1>により当該保全処分に係る手続を続行しようとするときは、民事訴訟法第80条本文の規定にかかわらず、担保を破産財団の負担に帰せしめるため、裁判所に対し、担保の変換を申し立てなければならないものとする。この場合においては、裁判所は、同条本文の規定にかかわらず、その担保の変換を命ずることができるものとする。

(後注) 再生手続及び更生手続においても、同様の手当てを行うものとする。

5 保全管理命令
(1)発令の要件
<1> 裁判所は、破産の申立てがあった場合において、債務者(債務者が法人である場合に限る。以下<1>において同じ。)の財産の管理又は処分が失当であるときその他債務者の財産の確保のために特に必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産の申立てにつき決定があるまでの間、債務者の財産に関し、保全管理人による管理を命ずる処分をすることができるものとする(民事再生法第79条第1項、会社更生法改正案第30条第1項参照)。

<2> 裁判所は、<1>の処分(以下「保全管理命令jという。)をする場合には、当該保全管理命令において、一人又は数人の保全管理入を選任しなければならないものとする(民事再生法第79条第2項、会社更生法改正案第30条第2項参照)。

<3> <1>及び<2>は、破産の申立てを棄却する決定に対して即時抗告があった場合について準用するものとする(民事再生法第79条第3項参照)。

<4> 裁判所は、保全管理命令を変更し、又は取り消すことができるものとする(民事再生法第79条第4項、会社更生法改正案第30条第3項参照)。

<5> 保全管理命令及び<4>による決定に対しては、即時抗告をすることができるものとする(民事再生法第79条第5項、会社更生法改正案第30条第4項参照)、

<6> <5>の即時抗告は、執行停止の効力を有しないものとする(民事再生法第79条第6項、会社更生法改正案第30条第5項参照)。

<7> 裁判所は、保全管理命令を発したときは、その旨を公告しなければならないものとする。保全管理命令を変更し、又は取り消す旨の決定があった場合も、同様とするものとする(民事再生法第80条第1項、会社更生法改正案第31条第1項参照)。

<8> 保全管理命令、<4>による決定及び<5>の即時抗告についての裁判があった場合には、その決定書を当事者に送達しなければならないものとする(民事再生法第80条第2項、会社更生法改正案第31条第2項参照)。

<9> 公告は一切の関係人に対する送達の効力を有する旨の公告の効力に関する規定は、保全管理命令に関し公告及び送達をしなければならない場合については、適用しないものとする(民事再生法第80条第3項、会社更生法改正案第31条第3項参照)。
(注) <1>は、再生手続と同様に、債務者が法人である場合に限って、保全管理命令を認めるものである。これについては、意見照会においても、大型個人事業者等 の場合には債務者の財産の確保のために特に必要があることから、保全管理命令の対象には債務者が個人である場合も含めるべきであるとの意見があるが、どのように考えるか。この点については、意見照会においても、管理の対象となる財産と自由財産とを峻別することが困難であり、すべての財産を保全管財人が管理するものとすると。私生活の維持・継続に支障を来す結果になるとの指摘がされている、特に、個人についても保全管理命令が認められるとすると、保全管理命令が発せられている間の債務者について自由財産に相当する財産を考える必要があると考えられるが、その範囲を合理的に画することが困難ではないか等の間題があり、その意味からも法人である場合に限るのが適当であると思われるが、どうか。

(2)保全管理人の権限等
<1> 保全管理命令が発せられたときは、債務者の財産の管理及び処分をする権利は、保全管理人に専属するものとする。ただし、保全管理人が債務者の常務に属しない行為をするには、裁判所の許可を得なければならないものとする(民事再生法第81条第1項、会社更生法改正案第32条第1項参照)。

<2> <1>ただし書の許可を得ないでした行為は、無効とするものとする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができないものとする(民事再生法第81条第2項、会社更生法改正案第32条第2項参照)。

<3> 裁判所の許可を要する事項(中間試案第1部の第12参照)は、保全管理人について準用するものとする(民事再生法第81条第3項、会社更生法改正案第32条第3項参照)。

<4> 保全管理人は、必要があるときは、その職務を行わせるため、自己の責任で一人又は数人の保全管理人代理を選任することができるものとする(民事再生法第82条第1項、会社更生法改正案第32条第1項参照)。

<5> <4>の保全管理人代理の選任については、裁判所の許可を得なければならないものとする(民事再生法第82条第1項、会社更生法改正案第32条 第2項参照)。

6 保全処分の申立ての濫用の防止
破産の申立てをした者は、破産宣告前に限り、当該申立てを取り下げることができるものとする。この場合において、強制執行手続等の中止命令、包括的禁止命令、宣告前の保全処分(破産法第155条参照)、保全管理命令がされた後は、裁判所の許可を得なければならないものとする(民事再生法第32条参照)。

目次

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■第一次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第二次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第三次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■残された課題

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法