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【第一次案】第3部 倒産実体法: 第5 担保権等の倒産手続上の取扱い

1 譲渡担保権者の破産
譲渡担保権設定者の目的財産の取戻しの制限を定めた破産法第88条の規定は、削除するものとする。
(注)
再生手続及び更生手続においても、同様の手当てを行うものとする。

2 共有者の別除権
共有に関する債権を有する他の共有者に別除権を認めた破産法第94条の規定は、削除するものとする。

(担保権等の倒産手続上の取扱い関係後注1)
中間試案(第3部、第5・担保権等の倒産手続上の取扱い関係後注1)では、留置権の倒産手続上の取扱いについて、民事留置権は、再生手続及び更生手続においても手続の開始により効力を失うものとする考え方(破産法第93条第2項参照)を掲げ、その当否につついては、担保執行法制部会における留置権の効力に関する検討状況を踏まえ、なお検討するとしていた。意見照会の結果では、寄せられた意見数自体がそう多くはないものの、失効するとの考え方に賛成する意見が複数ある一方、それを上回る数の反対意見があった。賛成意見は、破産手続における取扱いとの統一を図ること、再建型手続において民事留置権についての規定がないために、弁済も、目的物の取戻しもできず、事業の再生に支障を来している状況に手当てする必要があることを理由とする。これに対し、反対意見は民事留置権と商事留置権とで破産手続における取扱いが異なることが当を得ないこと、債権と物との間に牽連性がなく目的物の範囲が広範にわたる商事留置権よりも民事留置権の方が別除権としての保護に値すること、建設請負契約における請負人の報酬債権の保護方法として民事留置権に意義があること等を理由とし、むしろ倒産処理手続において民事留置権を特別の先取特権とみなす旨を規定すべきであるとする。担保・執行法制部会における検討との関係でも、意見は二様に分かれ、同部会における議論を踏まえて検討すべきであるとの意見が複数示される一方、担保・執行法制の見直しの場合とは異なるとする意見もあった。担保・執行法制部会では、留置権の効力に関し、留置権者に優先弁済権を与えるものとする考え方についてなお検討することが、中間試案において掲げられていた(「担保・執行法制の見直しに関する要綱中間試案」第1・1(1)参照)が、この点については、他の競合する権利との間の優劣関係の規律や競売申立権の付与の是非等なお多くの問題について検討を尽くす必要があり、今次の担保・執行法制の見直しにおいて成案を得ることは困難であることから、見直し、をしないこととされている。(a)上記のとおり、民事留置権の倒産処理手続における処遇については、意見照会の結果でも、見解の一致をみるには至っていないこと、(b)あるべき留置権の効力をめぐる実体法上の議論もいまだ十分に固まっているとはいえないこと、(c)倒産処理手続において、民事留置権についても特別の先取特権とみなし、商事留置権と同様の取扱いとするとすれば、従来の民事留置権の取扱いを大きく変えることになるため、破産財団の減少に伴う実務上の支障をはじめ、それによって生じ得る問題点や波及的効果について、慎重に吟味する必要があること、(d)目的物と被担保債権との間に牽速関係の要求される民事留置権の場合には、商事留置権に比し、目的物の範囲が限定される結果、再生手続及び更生手続において、その効力(留置的効力)の継続によってもたらされる支障も、比較的小さいものと考えられなくもないことからすると、倒産処理手続における民事留置権の処遇については、特段の手当てをしないものとすることが考えられるが、どうか。

(担保権等の倒産手続上の取扱い関係後注2)
中間試案(第3部・第5・担保権等の倒産手続上の取扱い関係後注2)では、破産管財人が動産の先取特権(民法第322条等)の目的動産を任意売却した場合について、動産の先取特権者が、破産手続において、破産管財人に対し、売却代金につき優先弁済を求めることができるものとする考え方を掲げ、その当否については、担保・執行法制部会における動産の先取特権の行使方法の整備に関する検討状況を踏まえ、なお検討するとしていた。意見照会の結果では、この考え方に賛成する意見が多数であったが、管財業務に遅滞・支障を来すこと、 一般債権者の利益を害し、動産先取特権者を不当に厚遇することになること、そもそも公示のない動産先取特権に大きな保護を与える必要性が認められないこと等を理由として、反対する意見も相当数あった。この点に関しては、「担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案」において、動産を目的とする担保権の実行としての競売(動産競売)の開始要件を見直し、執行裁判所は、担保権の存在を証する文書を提出した債権者の申立てがあったときは、当該担保権についての動産競売の開始を許可することができるものとすること、動産競売は、債権者が執行官に対し、当該動産を提出し、又は占有者の差押承諾文書を提出した場合のほか、上記の許可がされた場合にも開始するものとすることとされている(「担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案要綱」第三・十三「動産競売」、「担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案」第三条(民事執行法第百九十条関係)参照)。中間試案に掲げた考え方及びそれに賛成する意見は、現行の民事執行法上の動産競売の開始要件の下では、動産の先取特権者は事実上実行をし得ない状況にあり、民法上先取特権が付与された趣旨が十分に実現されないとの問題意識を基礎とするが、このような問題状況自体が、上記の民事執行法の改正により、相当に解消されることになり、その結果、強いて、破産手続において動産先取特権の実効性を確保するための特別の措置を設けるべきであるとするまでの事情は存在しないこととなるものと解される。したがって、この点については、上記民事執行法の改正がされることを前提に、破産法において特段の手当てをしないものとすることで、どうか。

(参考) 「担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案」第三条(民事執行法第百九十条関係)第百九十条を次のように改める。

(動産競売の要件)
第百九十条 動産を目的とする担保権の実行としての競売(以下「動産競売」という。)は、次に掲げる場合に限り、開始する。
一  債権者が執行官に対し当該動産を提出した場合
二  債権者が執行官に対し当該動産の占有者が差押えを承諾することを証する文言を提出した場合
三  債権者が執行官に対し次項の許可の決定書の謄本を提出し、かつ、第百九十二条において準用する第百二十三条第二項の規定による捜索に先立って又はこれと同時に当該許可の決定が債務者に送達された場合

2 執行裁判所は、担保権の存在を証する文書を提出した債権者の申立てがあったときは、当該担保権についての動産競売の開始を許可することができる。ただし、当該動産が第百二十三条第二項に規定する場所又は容器にない場合は、この限りでない。

3 前項の許可の決定は、債務者に送達しなければならない。

4  第二項の申立てについての裁判に対してには 執行抗告をすることができる。

目次

○トップページ

■第一次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第二次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第三次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■残された課題

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法