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【第一次案】第4部 その他: 第1 倒産犯罪

1 破産財団を構成する財産の価値を侵害する行為及びその収集を困難にする行為(詐欺破産行為)の処罰破産法第374条第1号及び第2号に規定する行為(同法第376条及び第378条に係る場合を含む。)に対する処罰の在り方については、個別執行における同種の妨害行為に関する刑法等改正案の規定等を参考にしつつ、なお検討する。

(注)下記の点については、なお検討する。
ア 一定の危機的状況が発生にした時点以降の詐欺破産行為については、破産宣告の確定を処罰条件とせずに処罰の対象にするか。
イ 保全管理命令(倒産法部会資料28・第3・5参照)が発せられた場合については、破産宣告後と同様に取り扱うか。
ウ 図利加害目的の要件については、「債権者を害する目的」に絞るか。
エ 債務者が不利益な条件で債務を負担した場合についても、不利益処分と同様に処罰の対象にするか。
オ 商業帳簿(破産法第374条第3号参照)及び閉鎖帳簿(同条第4号参照)(倒産法部会資料30・第12・1(1)参照)に係る行為については、詐欺破産行為としての重い処罰の対象から除外するか(後記2(3)参照)。
力 破産宣告後、破産管財人が関知しない場面で、破産財団に属する財産の占有を移転し、あるいは取得する行為を処罰の対象にするか。
(参考)犯罪の国際化及び組織化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案における刑法第96条の2の改正規定(強制執行妨害目的財産損壊等)強制執行を妨害する目的で、次の各号に掲げる行為をした者は、3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金に処し'又はこれを併科する。情を知って第3号に規定する譲渡又は権利の設定の相手方となった者も、同様とする。

一 強制執行を受け、若しくは受けるべき財産を隠匿し、損壊し、若しくはその譲渡を仮装し、又は債務の負担を仮装する行為
二 強制執行を受け、又は受けるべき財産について、その現状を改変して、価格を減損し、又は強制執行の費用を増大させる行為
三 金銭執行を受けるべき財産について、無償その他の不利益な条件で、譲渡をし、又は権利の設定をする行為旧商法(明治23年法律第32号)第1050条破産宣告ヲ受ケタル債務者力支払停止又ハ破産宣告ノ前後ヲ間ハス履行スル意ナキ義務又ハ履行スル能ハサルコトヲ知リタル義務ヲ負担シタルトキ又ハ債権者二損害ヲ被フラシムル意思ヲ以テ貸方財産ノ全部若クハー分ヲ蔵匿シ転匿シ若クハ脱漏シ又ハ借方現額ヲ過度二掲ケ又ハ商業帳簿ヲ殿滅シ蔵匿シ若クハ偽造。変造シタルトキハ詐欺破産ノ刑二処ス
(後注1)破産法第375条第3号所定の行為を含め、偏頗行為の処罰の要否については、否認権の在り方に関する議論の動向も踏まえて、なお検討する。
(後注2)不利益処分にあたる場合のほか、破産管財人が、その任務に違反して、債権者に損害を与えた場合における処罰の要否については、特別清算の場合の清算人に係る商法の特別背任罪の規定との均衡をも考慮して、なお検討する。
(参考)商法第486条
1 発起人、取締役、監査役又ハ株式会社ノ第183条第3項、第258条第第2項若ハ第280条第1項ノ職務代行者若ハ支配人其ノ他営業二関スル或種類若ハ特定ノ事項ノ委任ヲ受ケタル使用人自己若ハ第三者ヲ利シ又ハ会社ヲ害センコトヲ図リテ其ノ任務ニ背キ会社ニ財産上ノ損害ヲ加ヘタルトキハ10年以下ノ懲役又ハ1000万円以下ノ罰金ニ処ス
2 整理委員、監督員、第398条第1項ノ管理人又ハ株式会社ノ清算人若八第430条ノ職務代行者前項二掲グル行為ヲ為シタルトキ亦前項二同ジ
2 破産者の財産等に関する情報の収集を妨害する行為の処罰

(1)重要財産に関する破産者の説明義務違反行為の処罰(倒産法部会資料第28・第4・2)破産者等が、破産宣告後遅滞なく、破産者の所有する不動産、現金、有価証券、預貯金その他の重要な財産の内容を記載した書面を裁判所に提出しなければならないものとした場合において、その提出を拒み、又は虚偽の書面を提出する行為を処罰するかについては、なお検討する。
(注) 上記の説明義務は、管財手続が開始されたことを前提とするものであるが、破産申立てについての審尋等における虚偽の陳述に係る制裁等についても、併せて検討する(倒産法部会資料83・第2・2(1)ア(注)参照)。

(2) 破産管財人等への説明義務違反行為等の処罰(倒産法部会資料28・第4・2(注)4及び第5・6(注)3参照)破産管財人等に対する説明義務等に違反した者は処罰するものとする。
(注)
1 説明義務等の内容については、なお検討する(民事再生法第78条、第59条、新会社更生法第77条参照、)。
2 説明義務等を負う主体の範囲については、破産者及び準債務者(破産法第376条)のほか、「破産者の代表者、代理人、使用人その他の従業者」一般や、前にこれらの地位にあった者(破産法第153条第2項参照)を含むものとするかにつき、なお検討する。
3 子会社に対する調査等に関する制裁については、なお検討する。

(3)破産者の業務及び財産の状況に関する資料の隠滅行為の処罰
商業帳簿(破産法第374条第3号)や閉鎖帳簿(同条第4号)を含めて、破産者の業務及び財産の状況に関する資料を隠滅するなどする行為については、処罰する方向で検討する。
(参考)刑法第104条(証拠隠滅等)
他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。旧刑法(明治13年大政官布告第36号)第389条家資分散ノ際牒簿ノ類ヲ蔵匿殷棄シ若クハ分散決定ノ後債主中ノー人又ハ数人二其負債ヲ私償シテ他ノ債主ヲ害シタル者ハ1月以上2年以下ノ重禁錮二処ス

3 破産管財人等の職務執行に対する妨害行為の処罰(倒産法部会資料28・第5・5(注)参照) 破産管財人の職務にご対する妨害行為については、個別執行における執行官等の職務に対する妨害行為に関する刑法改正案の規定を参考にして、これを処罰する規定を設ける方向で、なお検討する。
(注) 破産管財人のほか、その職務を保護する者の範囲については、なお検討する。
(参考)犯罪の国際化及び組織化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案における刑法第96条の3(新設)
(強制執行行為妨害等)
1 偽計又は威力を用いて、立入り、占有者の確認その他の強制執行の行為を妨害した者は、3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 (略)

4 その他
(1) 過怠破産行為
1~3にあたる場合を除くほか、破産法第375条に規定する行為に係る罰則を存続するかについては、なお検討する。
(2)その他現行法において処罰される行為
<1> 監守等に違反する罪は廃止するものとする。
<2> 破産管財人等及び破産債権者等に係る収賄及び贈賄の罪については、処罰するものとする。
(注) <2>について、「不正の請託」等を成立要件又は加重要件とするか、商法における贈収賄規定等を参考にして、なお検討する。
(参考)
商法第493条
1 第486条若ハ第487条ニ掲ゲル者、検査役又ハ監査委員其ノ職務ニ関シ不正ノ請託ヲ受ケ財産上ノ利益ヲ収受シ、要求シ又ハ約束シタルトキハ5年以下ノ懲役ヌハ500万円以下ノ罰金二処ス
2 前項ノ利益ヲ供与シ又ハ其ノ申込若ハ約束ヲ為シタル者ハ3年以下ノ懲役又ハ300万円以下ノ罰金二処ス商法第494条
1 左ニ掲グル事項二関シ不正ノ請託ヲ受ケ財産上ノ利益ヲ収受シ、要求シ又ハ約束シタル者ハ5年以下ノ懲役又ハ500万円以下ノ罰金二処ス
ー 創立総会、株主総会、社債権者集会又ハ債権者集会二於ケル発言又ハ議決権ノ行使
二、三 (略)
2 前項ノ利益ヲ供与シ又ハ其ノ申込若ハ約束ヲ為シタル者亦前項二同ジ(倒産犯罪後注1)破産債権を有する者が、破産管財人からの配当によらずに、不正な手段を用いて、破産債権の弁済等を債務者等に要求する行為は、配当の限度での弁済を甘受している破産債権者間における公平を害するほか、破産者の再建を妨げ、その関係者等をも危機的状況に陥れることから、このような行為は処罰の対象にすべきであるとの考え方があるが、どうか。
(倒産犯罪後注2)
そのほか倒産犯罪に係る罰則について、所要の整備をするものとする。

目次

○トップページ

■第一次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第二次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第三次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■残された課題

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法