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【第一次案】第1部 破産手続: 第4 破産宣告の効果

1 検察官への通知
破産宣告の検察官への通知の制度(破産法第144条参照)は、廃止する方向で、なお検討するものとする。

(注) この制度は、公益の代表者である検察官に対し破産犯罪などの犯罪の捜査に便宜を与えるために必要であると説明されているが、このような通知の必要性については疑問を呈する見解もあり、意見照会の結果によっても、実際には破産管財人による告発などで捜査が開始されており、破産宜告を検察官に通知する必要性は認められないとして、このような通知の制度を廃止することに賛成する意見が多かったところである。そこで、このような意見照会の結果を踏まえて、通知の制度を廃止するものとする方向で、なお検討するものとする。

2 破産者の説明義務の強化
<1> 破産者等は、破産宣告後遅滞なく、その所有する不動産、現金、有価証券、預貯金その他の重要な財産の内容を記載した書面を裁判所に提出しなければならないものとすることで、どうか。

<2> 罰則については、なお検討するものとする。
(注)
1 担保・執行法制部会においては、個別執行に関する財産開示手続につき一定の方向性が示されている。具体的には、債務者は、財産開示の期日に出頭し、宣誓をした上で、自己の責任財産のすべてを開示しなければならないものとし、債務者が正当な理由がないのに、財産開示の期日に出頭せず、宣誓若しくは財産開示の陳述を拒み、又は虚偽の陳述をした場合については罰則を設けるものとして、債務者の財産状況の開示義務を強化するものとしている(下記参考部分参照)。

2現行の破産法においては、(A)破産者(B)破産者の代理人並びに(C)、破産者の理事及びこれに準ずべき者は、破産管財人又は債権者集会の請求により、破産に関して必要な説明をしなければならないものとされている(破産法第153条)が、破産に関して必要な説明のうち、破産者の財産のうち特に重要なものについては、破産債権者等の関心が最も高いところであり、破産手続においても、債務者の財産状況に対する開示の義務を強化すべきであると考えられる。ところで、現行の破産法においては、破産の申立人は、債権者が申立人である場合を除き、破産原因の審理及び管財業務の円滑な進行のため。財産の概況を示す書面を提出しなければならないものとされているが(破産法第138条)、この規定は訓示規定と解されており、この書面が提出されなくても、申立てが不適法なものであるとしてニれを却下するべきではないとされていることからすると、このような規定のみでは、債務者の財産状況についての開示の方法として不十分であると考えられる。そこで、債務者の財産状況に対する開示の義務を強化するという観点から、破産債権者は、破産者の所宥する重要な財産の情報を破産者等から開示を受けることができるものとし、<1>では、 この開示の方法としては、破産者等は破産宣告後遅滞なく、重要な財産の内容を記載した書面を裁判所に提出しなければならないものとし、裁判所ほこの書面を破産債権者のために閲覧に供するものとしているが、この点についてどのように考えるか。なお、開示の対象となる財産については、その範囲を明確にするために、不動産、現金、有価証券、預貯金等を具体的に例示することとしているが、対象についてはどのように考えるか。

3 破産者等が、<1>の義務に造反した場合については、 破産者等の財産の開示義務の重要性にかんがみ、所要の罰則を設けるとともに、免責不許可事由とすることが考えられるが(破産法第366条ノ9第5号参照)、この点についてはなお検討するものとする。

4 <1>の書面を提出しなければならない者の範囲については、(a)説明譲務(破産法第153条)を負う者の範囲を確定した上で、(b)(2)のうち、どの範囲まで、<1>の義務を負わせるものとするかを検討する必要がある。

(i)(a)については、ア)現行の破産法において説明義務を負うものとされている者は、破産者、その代理人並びに理事及びこれに準ずべき者とされているが(破産法第153条)、再生手続にあっては、個人である再生債務者若しくはその法定代理人又は法人である再生債務者の理事、取締役、執行役、監事、監査役、清算人若しくはこれらに準じる者(民事再生法第78条、第54条)、更生手続にあっては、更生会社の取締役、執行役、監査役・精算人及び支配人その他の使用人とされており(会社更生法改正案第77条第1項)、それぞれ説明義務を負う者又は報告を求められる者の範囲が異なっているという問題がある。また、イ)破産法においては過去に資格を有していた者についても、説明義務がある(破産法第153条第2頃)とされているが、民事再生法と会社更生法ではこれに相当する規定がないという問題がある。さらに、ウ)破産法においては、破産者の代理人も説明義務を負うとされているが、一方で、破産者の引致等の規定が準用される者は、そのうち法定代理人及び支配人に限定されている(破産法第152条)という問題がある。これらの点についてどのように考えるか。

(ii)(b)については、例えば、(a)の説明義務を負う者のうち、破産者が個人の場合にあっては、法定代理人がいるときは、一般に破産者に<1>の書面を提出させることが期待でき ないものと考えられることから、法定代理人が提出しなければならないものとすること、破産者が法人の場合にあっては、類型的に破産の事情に最も詳しい者として、代表権の ある者とすること等が考えられる。この点については、どのように考えるか。

(参考)財産開示手続(担保・執行法制の見直しに関する要綱中間試案第2の2(2)参照)次のような財産開示の手続を設けるものとする。

ア 申立権者
財産開示手続の申立権者を次のように定めるものとする。
<1> 金銭債権についての債務名義(民事執行法第22条第2号、第4号若しくは第5号又は確定判決と同一の効力を有する支払督促を除く。)を有する債権者

<2> 一般の先取特権を有する債権者

イ 手続の開始要件
財産開示手続は、強制執行の一般的な開始要件(ー般の先取特権については、その存在を証する文書の提出)を充足し、かつ、次のいずれかに該当する場合に、開始するものとする。

<1> 強制執行(ー般の先取特権については、その実行)を試みたが不奏功に終わったこと

<2> 債権者に判明している債務者財産に対する強制執行(一般の先取特権については、その実行)を行ったとしても請求債権の満足に足りないことが疎明されたこと

ウ 手続の概要
(ア)財産開示事件は債務者の普通数判籍の所在地を管轄する地方裁判所が、執行裁判所として管轄し、財産開示の申立てについての裁判は執行裁判所の執行処分とするものとする。
(イ)財産開示手続は、公開しないものとする。
(ウ)債務者は、財産開示の期日に出頭し、宣誓をした上で、自己の財産状況を開示しなければならないものとする。
(エ)債務者は、その責任財産(動産についてはその所在場所を含む。)のすべてを開示しなければならないものとする。ただし、次のいずれかに該当する場合は、裁判所は、債務者の申立てにより、その責任財産の-部の開示義務を免除することができるものとする。
<1> 債権者の同意がある場合
<2> 債権者の債権の満足に支障がないことが明らかである場合
(オ)財産開示の期日においては、裁判所のほか申立債権者も、債務者に対し質問をすることができるものとする。
ェ その他
(ア)財産開示手続が行われた後3年間は、その開示の対象となる財産を開示しなかったこと、又は開示の対象となる財産を新たに取得したこと等を疎明しなければ、当該債務者についての財産開示手続の申立てをすることができないものとする。
(イ)財産開示事件の記録中、財産開示の陳述に関する部分については、その閲覧等の請求をすることができる者(民事執行法第17条参照)を財産開示事件の当事者及び財産開示手続の申立権を有する他の債権者に限るものとする。
(ウ)財産開示を受けた債権者(財産開示の陳述に関する部分の事件記録の閲覧等をした債権者を含む。)は、債務者財産に関する情報を民事執行の用に供する目的以外に使用してはならないものとする。
(エ)債務者が、正当な理由がないのに、財産開示の期日に出頭せず、宣誓若しくは財産開示の陳述を拒み、又は虚偽の陳述をした場合につき、所要の罰則を設けるものとする。上記(ウ)の債務者財産に関する情報を目的外に使用した場合についても、所要の罰則を設けるものとする。

3 郵便物の管理
<1> 裁判所は、破産管財人の職務の遂行のため必要があると認めるときは、信書の通信事務を取り扱う官署その他の者に対し、破産者にあてた郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律第2条第3項に規定する信書便物(以下 「郵便物等」という。)を破産管財人に配達すべき旨を嘱託することができるものとする(民事再生法第73条第1項、会社更生法改正案第75条第1項参照)。

<2> 裁判所は、破産者の申立てにより又は職権で、破産管財人の意見を聴いて、<1>に規定する嘱託を取り消し、又は変更することができるものとする(民事再生法第73条第2項、会社更生法改正案第75条第2項参照)。

<3> 破産手続が終了したときは、裁判所は、<1>に規定する嘱託を取り消さなければならないものとする(民事再生法第73条第3項、会社更生法改正案第75条第3項参照)。

<4> <1>の嘱託の決定及び<2>の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができるものとする。

<5> 破産管財人は、破産者にあてた郵便物簿を受け取ったときは、これを開いて見ることができるものとする(民事再生法第74条第1項、会社更生法改正案第76条第1項参照)。

<6> 破産者は、破産管財人に対し、破産管財人が受け取った<5>の郵便物等の閲覧又は当該郵便物等で破産財団に関しないものの交付を求めることができるものとする(民事再生法第74条第2項、会社更生法改正案第76条第1項参照)。

(注)
1 破産財団に属すべき財産を発見し、又は破産者の財産の隠ぺい行為を監視し若しくは 財産を散逸する行為を防止して財団を確保するという観点から、郵便物の管理に閲して 再生手続及び更生手続と同様の制度を設けるものとするものである。ただし、破産者に対する手続保障を図る趣旨で、<1>では、裁判所が必要であると認める場合に嘱託をすることができるものとし、<4>では、破産者は、転送嘱託の決定に対して、即時抗告をすることができるものとしている。この点についてどのように考えるか。

2 <1>及び<4>については、再生手続及び更生手続においても、同様の手当をするものとする。

目次

○トップページ

■第一次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第二次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第三次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■残された課題

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法