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【第一次案】第4部 その他: 第2 相続財産の破産等に関する特則

(相続財産の破産等にに関する特則前注)
以下(1から4まで)は、相続財産の破産等に関する特則について、実質的な改正を要すると考えられる事項のみを取り上げたものである。

1 相続財産管理人等の破産申立義務
相続財産管理人、遺言執行者又は限定承認若しくは財産分離がされた場合における相続人は、破産の申立てをする義務を負わないものとする(破産法第136条第2項の規定は削除するものとする。)。
(注)
1 意見照会の結果では、安易な限定承認の利用により債権回収が困難になることを理由に反対する意見もあったものの、ほとんどが中間試案に掲げた考え方に賛成する意見であった。

2 このほか、意見照会においては、相続人等の破産申立義務を免除し、相続財産の清算方法について相続人等に選択権を与えることを意味あるようにするには、相続財産の破産に限定承認の効力を認めるべきであるとする等、相続財産の破産に限定承認と同様の効果を与えるべきであるとの意見が複数示されている。しかし、相続財産の破産に限定承認と同様の効果を与えることについては、単純承認をした(とみなされる)者の破産の申立ての可否(民法第923条との関係)、(法定)単純承認の場合の取扱い(民法第937条参照)、限定承認効を望まない相続人の対応のあり方(単純承認の申述の制度がないこととの関係等)、限定承認効付与の要件(特に破産廃止となった場合の取扱い等)等の各論的な問題のほか、そもそも、基本的に、各相続人が単独で申立てのできる相続財産の破産手続に限定承認効を認めることが、単純承認を原則とする民法のあり方との関係で問題はないかといった民法上の限定承認さらには相続のあり方との関係をも検討する必要がある。このような課題の存在を勘案すると、今回の破産法等の見直しにおいて、この点について特段の手当てをすることは困難ではないかと考えられる。また、破産法分科会においても、このような問題の性質に照らし、破産法固有の問題として審議のできる範囲という観点から、今回の破産法等の見直しにおいて特段の見直しをすることは困難であるとの考え方が示されたところである。以上を踏まえ、この点については特段の手当てをしないものとすることで、どうか。

2 破産申立て後破産宣告前の相続の開始
破産の申立て後、破産の宣告前に相続が開始した場合の取扱いについては、次のとおりとすることで、どうか。

<1> 裁判所は、破産の申立て後破産の宣告前に債務者について相続が開始したときは、相続債権者、受遺者、相続人、相続財産の管理人又は遺言執行者の申立てにより、当該破産の申立てに係る手続を相続財産について続行する旨の決定をすることができるものとする。

<2> <1>に規定する続行の申立ては、<1>に規定する相続の開始後(1月)以内(1月の不変期間内)にしなければならないものとする。

<3> <2>の期間が経過したとき(<1>に規定する続行の申立てがあった場合には、当該申立てを却下する決定が確定したとき)は、<1>に規定する手続は、終了するものとする。

(注)
1 現行法は、破産の申立て後破産の宣告前に債務者が死亡し債務者につき相続が開始した場合についても、破産宣告後の破産者の死亡の場合(下記5参照)と同様に、手続は相続財産について続行するとしている(第130条参照)。この趣旨は、債務者に対する強制執行の手続についての取扱いとの権衡を図ったものと説明されている(倒産法部会資料26・第2・2・1・第1部・第2・1(4)(注 参照)。しかし、(a)破産の申立て後破産の宣告前の債務者の死亡の場合は、その手続は破産原因等の破産手続開始要件の存否を審理する裁判手続であって、このような強制執行手続との間の権衡という理由は、直ちには妥当しないこと、(b)破産申立手続中の債務者の死亡は、債務者についての破産手続の存立ないし債務者についての破産の宣告を不可能とすること、(c)債務者個人と相続財産とでは、破産原因を異にし、職務者についての破産手続開始要件の審理手続と相続財産についてのそれとは、基本的に異なるものと解されること、(d)破産申立手続は、多分に職権的要素の存する手続であること、(e)破産の申立て後破産の宣告前の債務者の死亡の実際の例では、自己申立てで、相続人の所在も不明である場合が多く、手続を続ける必要性が認められず、また、手続を続けることが困難である事例が多数を占めるという状況であることが指摘されていること、(f)その一方で、相続人の利益に配慮する必要性のある事案もあることが指摘されていること、(g)手続が続行される場合と新たに相続財産の破産の申立にがされる場合とでは、保全処分の継続の有無や否認や相殺禁止の危機時期の時点(破産の申立ての時点)等、法律効果においても違いか生ずることからすると、破産の申立て後破産の宣告前に債務者が死亡し債務者について相続が開始したときは、利害関係人が相続財産についての破産手続を望む場合には、その申立てにこより、債務者について先行した手続の相続財産についての手続としての「続行」を認め、先行する手続においてされた各種の行為の効果を引き継ぐことができるものとし(<1>)、そうでない限り、当該手続は、当然に終了するものとする(<3>)ことが、利害関係人の利益への配慮、手続経済的な観点、債権者間の衡平の観点に資するのではないかと考えられる。この点についてどのように
考えるか。

2 このように、当該手続の続行の実質を、「相続財産の破産手続が求められた場合に、先行する手続の効果の引継ぎを認める制度」ととらえるならば、その申立ての主体は、先行する手続において債務者の財産関係を承継する立場にある相続人(さらには相続財産の管理人又は遺言執行者)及び申立人(債権者申立ての場合の申立債権者)に限定する必要はなく、相続財産の破産について申立ての主体となり得る者一般に認めてよいのではないかと考えられるが、どうか。

3 申立ての期間については、手続の性質上、本来終了すべきものについて、例外的に続行を認めるものである以上、早期に確定することが望ましく、また、相続人等は別途、相続財産の破産の申立てが可能であり、この期間を限定してもその利益を不当に害するとはいえないのではないかと考えられる。そこで、<2>では、申立期間を相続開始から1か月としている。また、同様の観点から、この期間を不変期間とすることが考えられる。申立ての期間について、どのように考えるか。

4 続行の申立てについての裁判に対しては、即時抗告ができるものとすることで、どうか。

5 破産の宣告があった後に破産者につき相続が開始した場合については、現行法と同様、破産手続は、相続財産について続行するものとする(倒産法部会資料26・第2・2・1・第1部・第2・2(3)参照)。

3 最後配当から除斥された者の権利行使
相続財産の破産において最後の配当から除斥された相続債権者及び受遺者の残余財産についての権利行使を認める第289条の規定は、削除するものとする。

4破産廃止の申立て
相続財産の破産についての破産廃Iの申立ては、相続人が数人ある場合であっても各相続人ができるものとする(全員の一致を要しないものとする。)ことで、どうか。

(注)
債権者の同意がある場合の破産廃止の申立てについては、(a)それが、基本的に、全破産債権者が破産手続の廃止に同意している場合にされるものであること、(b)法人の理事等の場合と異なり、相続人には所在不明の者もあることが少なくなく、全員の一致を要求することは、実際上の困難をもたらすこと等から、相続人が数人ある場合であっても全員の一致を要せず、各相続人ができるものとすることが適切ではないかと考えられる(倒産法部会資料26・第2・2・1・第1部・第5参照)。相続人が複数あり、その中から相続財産の管理人が選任されている場合(民法第936条参照)には、破産廃止により相続財産の管理は再び当該相続財産の管理人に復すると考えられること、また、担保を供して行う破産廃止の申立て(破産法第347条第1項参照)に関しては、担保の供与自体、「相続財産の管理及び債務の弁済に必要な一切の行為をする」権限を有する当該相続財産の管理人でなければ行い得ないと解されることからすると。この場合には、破産廃止の申立権者をそのような相続財産の管理人である相続人に限定することも考えられる。しかし、同意破産廃止の制度において、担保の供与を要する場合は副次的な場面であり、総破産債権者の同意がある場合の申立権を担保供与権限がある者に限定する必然性はないと解されることからすると、破産廃止の申立権限一般については、相続財産の(従前の)管理権の有無による限定をすることなく、各相続人ができるものとすることが考えられる。この点についてどのように考えるか。

(相続財産の破産等に関する特則関係後注)
上記1から4までのほか、相続財産の破産等に関する特則については、国際破産管轄、説明義務等の主体の範囲等の項目につき、所要の整備をするものとする。

目次

○トップページ

■第一次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第二次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第三次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■残された課題

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法