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【第二次案】第1部 破産手続: 第2 債権者集会

1 財産状況報告集会(第1回債権者集会)
<1> 裁判所は、破産手続開始の決定と同時に、破産財団の状況を報告するための債権者集会の期日を定めなければならないものとする。
<2> <1>の規定にかかわらず、裁判所は、債権者の数その他の事情を考慮して債権者集会を招集することを相当でないと認めるときは、<1>の期日を定めないことができるものとする。

(注)
1 財産状況報告集会(第1回債権者集会)については 部会資料28(第7・1(1)参照)ては、これを開催しない場合には、裁判所は、破産管財人に対して、破産債権者の閲覧に供するため、破産者及び破産財団に関する過去及び現在の状況等を記載した報告書の写しの備置き等を命ずる代替措置をとることができるものとしていた。報告書の写しの備置きについては、再生手続では、再生債務者の主たる営業所又は事務所に備え置かなければならないものとされているが(民事再生規則第64条第1項参照)、破産手続の場合には、破産管財人の事務所に備え置かざるを得なくなると考えられる。この点に関し、第21回会議の審議では、破産管財人の事務所には、閲覧に供せるだけの人的・物的設備がないとこるも少なくなく、事務所に報告書を備え置くことになると、事務所の業務に支障が生ずる場合があるとして、これに反対する意見が複数述べられたところである。このような管財業務の負担の大きさを考慮し、報告書の写しの備置きの代替措置はとらないものとすることで、どうか。しかし、<2>の場合については 破産債権者に対して破産者の財産状況等を周知させる必要性が高く、一定の代替措置をとる必要があることも否定できないのではないかと考えられる。そこで、破産管財人は、裁判所に提出した報告密の要旨を知れている破産債権者に周知させるため、報告書の要旨を記載した書面の送付その他適当な措置をとらなければならないものとする(民事再生規則第63条参照)ことで、どうか(なお、「その他の措置」としては、債権者委員会を通じての情報提供や主要な破産債権者に対する個別の説明等が考えられる。)
2 部会資料28(第5・4参照)では、破産管財人は、破産手続開始の決定後遅滞なく、破産手続開始の決定に至った事情等について記載した報告書を裁判所に提出しなければならないものとしていた。この考え方に対しては、すべての破産事件において破産手続開始の決定後遅滞なく報告書を提出しなければならないと定めても、現実の運用としては、破産の申立書の記載内容と同じようなものしか提出されないので、このような規定をあえて設ける必要はないのではないかとの指摘がされた。しかしながら、報告書については破産者の財産状況等を破産債権者に周知させるという観点から、裁判所に備え置き、一般の破産債権者の閲覧に供する必要性は高いものと認められ、この点につき再生手続及び更生手続と取扱いを異にする理由は見当らないと考えられる。そこで、破産手続においても同様に、財産状況報告集会が開催されるか否かにかかわらず、破産管財人は、破産手続開始の決定後遅滞なく報告書を裁判所に提出しなければならないものとする考え方を維持することで、どうか。

2 破産管財人の計算の報告
(ア)債権者集会における計算の報告
<1> 破産管財人の任務が終了した場合には、当該破産管財人は、遅滞なく、債権者集会に計算の報告をしなければならないものとする。
<2> <1>の規定にかかわらず、<1>に規定する[任務が終了した]破産管財人がいない場合には、<1>に規定する計算の報告は、後任の破産管財人がしなければならないものとする。
<3> 破産者、破産債権者又は後任の破産管財人(<2>により計算の報告をする者を除く。)は、債権者集会において、計算について異議を述べることができるものとする。
<4> <3>の異議がなかった場合には、<1>又は<2>の計算は、承認されたものとみなすものとする。
<5> 破産管財人は、利害関係人の閲覧に供するため、計算の報告書を債権者集会の日から3日前に裁判所に提出しなければならないものとする。
(イ)書面による計算の報告
<1>(ア)<1>の場合には、破産管財人は、(ア)<1>の報告に代えて、遅滞なく、計算の報告書を作成して裁判所に提出することができるものとする。(ア)<2>の場合における後任の破産管財人についても、同様とするものとする。<2> 裁判所は、<1>の報告書が備え置かれている旨及びその計算に異議があれば一定期間内にこれを述べるべき旨を公告しなければならないものとする。この場合においては、その期間は、1月を下ることができないものとする。
<3> 破産者、破産債権者又は後任の破産管財人((イ)<1>後段により計算の報告書を提出する者を除く。)は、<2>の期間内に計算について異議を述べることができるものとする。
<4> <3>の異議がなかった場合には、(イ)<1>の計算は、承認されたものとみなすものとする。
(注)
1 現行法では、破産管財人の任務が終了した場合においては、破産管財人又はその承継 人が計算の報告をしなけれいばならないものとされており(破産法第168条第1項。同様に承継人(相続人)が計算報告の義務を負う旨を定めた規定として、民事再生法第77条、会社更生法第82条、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律第50条、金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第54条及び第220条、船舶の所有者等の責任の制限に関する法律第46条、民事執行法第103条、民法第870条等がある。また、商法第133条についても、清算人が死亡したときは相続人が計算をすべきものと解されている。)、破産債権者等が破産管財人によって行われた管財業務を最終的に検証する磯会が制度上確保されている。しかし、この制度によると、個人の破産管財人の死亡によりその任務が終了した場合等には、計算の報告をする破産管財人がいないことから、破産法第168条第1項の規定により、その相続人が計算の報告をしなければならなくなるという事態が生ずることになる。この点については、近年管財業務の専門性が増している実情にかんがみると、倒産に関する専門的な知識又は経験を有しない相続人に管財業務につき計算の報告義務を負わせることは管財業務の検証の機会の確保という観点からも適切ではなく、相続人にとってもこのような義務の負担は大きいとの指摘がされている。そこで、このような指摘を踏まえて、本文では、任務が終了した破産管財人がいない場合に限り、前任の破産管財人の管財業務に係る計算の報告は、後任の破産管財人が固有の事務としてしなければならないものとし、破産管財人の管財業務の範囲を前任の破産管財人の管財業務の計算の報告をすることまで拡張することとしている。これにより、相続人が自ら計算の報告をすることで免責の効果を受ける機会を失うことになるが、(i)本文の考え方によれば、後任の破産管財人が行った前任の破産管財人の管財業務に係る計算の報告が承認されれば、報告の内容にはよるものの、承認により免責の効果を受けることも可能であると解されるし、また、( ii)計算の報告につき承認を受けた場合であっても、破産管財人の不正行為による損害賠償責任は免責されないと解されており。本文のような考え方を採用しても、相続人が自ら計算の報告を行った場合と比較して、相続人にとって不利益はそれほど大きいものではないと考えられる。なお、前記のとおり、破産法第168条と同旨の規定は少なくないが、倒産処理手続関係(民事再生法、会社更生法等)については、それ以外の制度と比べ、大規模事件や複雑困難な事件の計算報告を求められる可能性があり、専門性も要求されると考えられるので、それにふさわしい者(弁護士等)が計算報告をする必要性が特に高いと認められる。そこで、倒産処理手続関係の規定については、本文と同様の改正を行うものとすることで、どうか。

2 現行法では、計算報告のために招集した債権者集会において、破産管財人が、価値がないために換価しなかった財産の処分について決議をしなければならないものとされている(破産法第281条)この点につき、実務上は、換価が不可能な財産がある場合には、最後配当までに、破産法第197条第12号に規定する権利の拠棄についての許可を得て財産を処理している事例が多いと指摘されている。このように、裁判所の許可でV換価すべきか放棄すべきかを判断することで足りるとすれば、債権者集会において改めて決議をする制度を設ける必要性に乏しいと考えられる。そこで、以上のような指摘を踏まえて、 破産法第281条の不換価財産についての債権者集会による決議の制度は廃止するものとすることで、どうか。

目次

○トップページ

■第一次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第二次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第三次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■残された課題

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法