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【第二次案】第1部 破産手続

第1 破産者等の説明義務等

1 破産者等の説明義務
<1> 破産者、破産者の代理人並びに破産者の理事、取締役、執行役、監事、監査役、清算人及びこれらに準ずる者は、破産管財人、債権者集会又は債権者委員会の請求により、破産に関して必要な説明をしなければならないものとする。
<2> <1>は、前に<1>に規定する資格を有していた者について準用するものとする。
(注)
1 罰則については、なお検討するものとする。
2 現行法において説明義務を負う者は、破産者、その代理人並びに理事及びこれに準ずべき者とされている(破産法第153条)。これに対し、再生手続にあっては、個人である再生債務者若しくはその法定代理人又は法人である再生債務者の理事、取締役、執行役、監事、監査役、清算人若しくはこれらに準ずる者(民事再生法第59条)、更生手続にあっては、更生会社の取締役、執行役、監査役、清算人及び支配人その他の使用人とされており(会社更生法第77条第1項)、それぞれ説明義務を負う者又は報告を求められる者の範囲が異なっている。
( i) 再生手続及び更生手続においては、監事及び監査役についても明文で説明義務が認められているところであり、破産者の説明義務に関する規定を整備するという観点から、破産手続においても、監事及び監査役について説明義務を負うことを条文上明記するものとすることで、どうか。
(ii)更生手続では、更生会社の取締役、執行役・監査役・清算人及び支配人その他の使用人が報告義務の主体とされている(会社更生法第77条第1項)が、代理権のない使用人がこれに含まれるか否かについては解釈上争いがあり得るところである。これを肯定するとしても、再建型の倒産処理手続である更生手続にあっては、事業が継続され、代理権のない使用人でも、当該事業に継続的に関与していると考えられることから、当該使用人につき説明を求める必要性は高いと解することができる。これに対して、(a)清算型の倒産処理手続である破産手続にあっては、破産手続開始の決定と同時に原則事業は廃止されるのであり、破産財団に属する財産を清算するために代理権のない使用人についてまで広く説明義務を課す必要性は乏しいとの考え方と、(b)説明義務を強化するという観点から、会社更生法の解釈如何にかかわらず、破産手続において、使用人一般に説明義務を課すとの考え方があり得る。との点について、どのように考えるか。
(iii)現行法においては、破産者の代理人も説明義務を負うとされているが、破産者の引致等の規定が準用される者は、そのうち法定代理人及び支配人に限定されている(破産法第152条)。この点については、代理人のうち引致等の規定を準用する者の範囲を破産者の財産を実質的に管理する立場にある法定代理人及び支配人に限定することには合理性があると考えられる。なお、上記(i)のとおり、監事及び監査役を説明義務の主体として明記した場合であっても、これらの者は法人等の財産の状況又は理事、取締役等の職務の執行を監査することを職務とするものであり、引致等の対象とするまでの必要はないと考えられるが、どうか。
(iv)<2>は、過去に資格を有していた者についても、説明義務を負う(破産法第153条第2項)とするものである。再生手続及び更生手続ではこれに相当する規定がないが、過去に資格を有していた者であっても、財産状況につき詳しい者がいることもしばしばあると指摘されており、このような指摘によると、<2>のような規定を設ける必要性は破産手続と同様に存すると認められ、この点につき破産手続と取扱いを区別する理由に乏しいと考えられるが、どうか。過去に資格を有していた者が説明義務を負うものとする場合に、その範囲を限定する(例えば、理事、取締役等に限る。)必要があるか。

3 債権者委員会は、破産債権者の意思を破産手続に反映させるために設けるものとされている(部会資料30第8参照)ところ、その活動を促すためには債権者委員会の情報収集機能を高める必要性が高いことから、債権者委員会にも債権者集会と同様に、説明についての請求を認めるものとしている。

4 相続財産の破産においては、(a)説明義務を負う主体として、相続人、その代理人、相続財産の管理人及び遺言執行者(破産法第153条第1項参照)のほか、被相続人の代理人であった者を加えることとし、(b)居住制限、引致の対象となる主体としては、現行法(破産法第152条後段参照)と同様、相続人並びにその法定代理人及び支配人とすることで、どうか。相続財産の破産に至る状況、相続財産を構成する財産の状況について、最も熟知していたのは、被相続人であり、また、被相続人の代理人(であった者)であると考えられることから、説明義務の主体については、被相続人の代理人であった者を加えるのが適切ではないかと考えられる(部会資料26・第2・2・1・第1部・第2・2(4)(注)2参照)。これに対し、居住制限、引致の対象については、(i)むしろ、過去にその任・地位にあった者の方が説明義務の主体としてふさわしい場合があるという事情が存在する(例えば、株式会社において破産申立ての直前に経営陣が交替したときの旧取締役など)にもかかわらず、現行法は、過去に一定の任・地位にあった者を対象としておらず、(ii)居住制限、引致は、説明義務の実効性確保のためにとどまらず、より広い破産者等の破産手続への協力義務の実効性確保のための制度であり、(iii)居住制限、引政は、破産謂続開始の法定時における破産財団の所有者ないし管理者を対象とするものと解されることから、被相続人の法定代理人であった者等を加えることなく、現行法どおりとするのが適切であると考えられる。

2 破産者の重要財産開示義務
<1> 破産者は、破産手続開始の決定後遅滞なく、破産者が所有する不動産、現金 有価証券、預貯金その他重要な財産の内容を記載した書面を裁判所に提出しなければならないものとする。

<2> <1>に規定する義務に違反したときは、免責不許可の決定をすることができるものとする(破産法第366条ノ9第5号参照)。

注)
1 <1>の考え方は、破産者の説明義務を強化するための方策の一環として、破産者の財産状況の開示を義務付けるという観点から、破産者等は、破産手続開始の決定後遅滞なく、破産者の重要な財産の内容を記載した書面を裁判所に提出しなければならないものとするものであり、これにより、破産債権者等は、この書面を閲覧することができることとなる。このような義務は、破産管財人等の請求がなくても当然に破産手続開始の決定により発生するものであり、このような意味において、請求により発生する1の説明義務の特則として位置付けられる。
2 開示の対象となる財産については、その範囲を明確にするために、不動産、現金、有価証券、預貯金を具体的に掲げることとしている。さらに、これらの財産のほかに開示の対象として必要なものがある場合には、「重要な財産」に含まれるものとすることで足一りると考えられるが、この点につきどのように考えるか。
3 意見照会においては、<1>の規定により開示すべき財産の範囲につき、否認権の行使を容易にする観点から、破産者が過去の一定期間中に所持した財産についても開示の対象とすべきであるとの意見が複数寄せられ、第21回会議の審議においても、現在所有している財産に限定すると、その前に財産を処分すれば当該財産の開示を容易に免れることは適当ではないとして、同様の指摘がされた。しかし、例えば、現金等につき過去一年分の財産の状況についての開示をすることは実際上困難であると考えられるところ、個別の事実を考慮して、必要がある場合には破産管財人等の請求により<1>による説明を求めることは可能であることからすると、破産手続開始の決定によって当然に発生する開示義務の対象となる財産の範囲としては、現在所有するもので足りると考えられるが、この点につきどのように考えるか。
4 <1>の義務を負う者の範囲については、部会資料28では、一般的・類型的に破産の事情に最も詳しい者を対象とするものとして、民事執行における財産開示手続と同様の定め方とする((i)破産者が個人の場合には、本人が<1>の書面を提出するものとし、法定代理人がいるときは当該法定代理人、(ii)破産者が法人の場合には、代表権のある者を義務の主体として明記する。)ことが考えられる旨注記していたが、これに対しては、第21回会議の審議において、例えば、法人の場合には、代表権がない者でも実質的に会社を支配するなどして代表者より財産状況に詳しいこともあるとの理由から、義務を負う者を代表権のある者に限定することにつぎ疑問を呈する意見も出された。民事執行における財産開示手続は、制度上、出頭した者の陳述をその内容とすることから、具体的な義務の主体を定める必要があるが、重要財産開示義務は、破産法上の当然の義務であり、財産開示手続と同様の考え方をとる必然性は乏しいと考えられる。むしろ、条文上義務の主体については「破産者」とのみ規定し、具体的には「破産者」の解釈に委ねることが考えられるが、どうか。
5 破産者が、<1>の義務に違反した場合には、<2>のように、これを免責不許可事由(破産法第366条ノ9第5号参照)とするほかに、破産者等の財産の開示義務の重要性にかんがみ、所要の罰則を設ける必要があると考えられるが、この点については、他の倒産犯罪等の検討結果を踏まえて、なお検討するものとする。
6 相続財産の場合、財産開示義務を負う「破産者」に相当する主体として考えられるの要は、「相続人、相続財産の管理人及び遺言執行者」であり、これらの者に財産開示義務を課すことが考えられる。もっとも、相続財産の場合、破産の申立ては、基本的に、相続の開始後3か月以内又は相続財産が相続人の固有財産と混合しない間にされるものであり(破産法第131条参照)、相続財産の破産手続が開始された場合に、相続人が相続財産の財産状況を十分に把握しているとは期待できない状祝にある。このような中にあって、説明義務のように破産管財人等の請求により、それに応ずる形で、義務を尽くすという類型の義務であれば別段、 「破産手続開始の決定後遅滞なく、裁判所に、一定の財産の内容を記載した書面を提出する」ことを内容とする財産開示義務を課すことは、上記の相続人の置かれた状況に照らすと、過大な負担を課すことにならないかが懸念される。そこで、相続人については、その範囲を限定し、財産目録調製義務のある限定承認者(国法第924条参照)の場合に限り、財産開示義務を課すことも考えられる。なお、相続財産の管理人及び遺言執行者は、その職責上、財産目録の調製が義務付けられている(民法第918条第3項、第27条第1項、第1011条等参照)。相続財産の破産における財産開示義務について、その義務の要否、義務を課すとする場合の主体の範囲、民法上の財産目録調製義務との関係について、どのように考えるか。

【参考】
「担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案」第3条(民事執行法第198条関係)第198条を次のよるに改める。(期日指定及び期日の呼出し) 第198条 執行裁判所は、前条第1項又は第2項の決定が確定したときは、財産開示期日を指定しなければならない。

2 財産開示期日には、次に掲げる者を呼び出さなければならない。
一 申立人
二 債務者(債務者に法定代理人がある場合にあっては当該法定代理人、債務者が法人である場合にあってはその代表者)

3 物件検査権等
<1> 破産管財人は、破産者の帳簿、書類その他の物件を検査することができるものとする(民事再生法第78条において準用する同法第59条、会社更生法第77条第1項参照)。
<2> 破産管財人は、その職務を行うため必要があるときは、破産者の子会社又は連結子会社に対してその業務及び財産の状況につき報告を求め、又はその帳簿、書類その他の物件を検査することができるものとする(会社更生法第77条第2項参照)。
<3> <2>の子会社又は連結子会社は、正当な理由がない限り、<2>による報告又は検査を拒むことができないものとする(会社更生法第77条第3項参照)。
注)
<1>から<3>までにつき、刑事罰則の当否を含め、罰則についてはなお検討するものとする。

第2 債権者集会

1 財産状況報告集会(第1回債権者集会)
<1> 裁判所は、破産手続開始の決定と同時に、破産財団の状況を報告するための債権者集会の期日を定めなければならないものとする。
<2> <1>の規定にかかわらず、裁判所は、債権者の数その他の事情を考慮して債権者集会を招集することを相当でないと認めるときは、<1>の期日を定めないことができるものとする。

(注)
1 財産状況報告集会(第1回債権者集会)については 部会資料28(第7・1(1)参照)ては、これを開催しない場合には、裁判所は、破産管財人に対して、破産債権者の閲覧に供するため、破産者及び破産財団に関する過去及び現在の状況等を記載した報告書の写しの備置き等を命ずる代替措置をとることができるものとしていた。報告書の写しの備置きについては、再生手続では、再生債務者の主たる営業所又は事務所に備え置かなければならないものとされているが(民事再生規則第64条第1項参照)、破産手続の場合には、破産管財人の事務所に備え置かざるを得なくなると考えられる。この点に関し、第21回会議の審議では、破産管財人の事務所には、閲覧に供せるだけの人的・物的設備がないとこるも少なくなく、事務所に報告書を備え置くことになると、事務所の業務に支障が生ずる場合があるとして、これに反対する意見が複数述べられたところである。このような管財業務の負担の大きさを考慮し、報告書の写しの備置きの代替措置はとらないものとすることで、どうか。しかし、<2>の場合については 破産債権者に対して破産者の財産状況等を周知させる必要性が高く、一定の代替措置をとる必要があることも否定できないのではないかと考えられる。そこで、破産管財人は、裁判所に提出した報告密の要旨を知れている破産債権者に周知させるため、報告書の要旨を記載した書面の送付その他適当な措置をとらなければならないものとする(民事再生規則第63条参照)ことで、どうか(なお、「その他の措置」としては、債権者委員会を通じての情報提供や主要な破産債権者に対する個別の説明等が考えられる。)
2 部会資料28(第5・4参照)では、破産管財人は、破産手続開始の決定後遅滞なく、破産手続開始の決定に至った事情等について記載した報告書を裁判所に提出しなければならないものとしていた。この考え方に対しては、すべての破産事件において破産手続開始の決定後遅滞なく報告書を提出しなければならないと定めても、現実の運用としては、破産の申立書の記載内容と同じようなものしか提出されないので、このような規定をあえて設ける必要はないのではないかとの指摘がされた。しかしながら、報告書については破産者の財産状況等を破産債権者に周知させるという観点から、裁判所に備え置き、一般の破産債権者の閲覧に供する必要性は高いものと認められ、この点につき再生手続及び更生手続と取扱いを異にする理由は見当らないと考えられる。そこで、破産手続においても同様に、財産状況報告集会が開催されるか否かにかかわらず、破産管財人は、破産手続開始の決定後遅滞なく報告書を裁判所に提出しなければならないものとする考え方を維持することで、どうか。

2 破産管財人の計算の報告
(ア)債権者集会における計算の報告
<1> 破産管財人の任務が終了した場合には、当該破産管財人は、遅滞なく、債権者集会に計算の報告をしなければならないものとする。
<2> <1>の規定にかかわらず、<1>に規定する[任務が終了した]破産管財人がいない場合には、<1>に規定する計算の報告は、後任の破産管財人がしなければならないものとする。
<3> 破産者、破産債権者又は後任の破産管財人(<2>により計算の報告をする者を除く。)は、債権者集会において、計算について異議を述べることができるものとする。
<4> <3>の異議がなかった場合には、<1>又は<2>の計算は、承認されたものとみなすものとする。
<5> 破産管財人は、利害関係人の閲覧に供するため、計算の報告書を債権者集会の日から3日前に裁判所に提出しなければならないものとする。
(イ)書面による計算の報告
<1>(ア)<1>の場合には、破産管財人は、(ア)<1>の報告に代えて、遅滞なく、計算の報告書を作成して裁判所に提出することができるものとする。(ア)<2>の場合における後任の破産管財人についても、同様とするものとする。<2> 裁判所は、<1>の報告書が備え置かれている旨及びその計算に異議があれば一定期間内にこれを述べるべき旨を公告しなければならないものとする。この場合においては、その期間は、1月を下ることができないものとする。
<3> 破産者、破産債権者又は後任の破産管財人((イ)<1>後段により計算の報告書を提出する者を除く。)は、<2>の期間内に計算について異議を述べることができるものとする。
<4> <3>の異議がなかった場合には、(イ)<1>の計算は、承認されたものとみなすものとする。
(注)
1 現行法では、破産管財人の任務が終了した場合においては、破産管財人又はその承継 人が計算の報告をしなけれいばならないものとされており(破産法第168条第1項。同様に承継人(相続人)が計算報告の義務を負う旨を定めた規定として、民事再生法第77条、会社更生法第82条、外国倒産処理手続の承認援助に関する法律第50条、金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第54条及び第220条、船舶の所有者等の責任の制限に関する法律第46条、民事執行法第103条、民法第870条等がある。また、商法第133条についても、清算人が死亡したときは相続人が計算をすべきものと解されている。)、破産債権者等が破産管財人によって行われた管財業務を最終的に検証する磯会が制度上確保されている。しかし、この制度によると、個人の破産管財人の死亡によりその任務が終了した場合等には、計算の報告をする破産管財人がいないことから、破産法第168条第1項の規定により、その相続人が計算の報告をしなければならなくなるという事態が生ずることになる。この点については、近年管財業務の専門性が増している実情にかんがみると、倒産に関する専門的な知識又は経験を有しない相続人に管財業務につき計算の報告義務を負わせることは管財業務の検証の機会の確保という観点からも適切ではなく、相続人にとってもこのような義務の負担は大きいとの指摘がされている。そこで、このような指摘を踏まえて、本文では、任務が終了した破産管財人がいない場合に限り、前任の破産管財人の管財業務に係る計算の報告は、後任の破産管財人が固有の事務としてしなければならないものとし、破産管財人の管財業務の範囲を前任の破産管財人の管財業務の計算の報告をすることまで拡張することとしている。これにより、相続人が自ら計算の報告をすることで免責の効果を受ける機会を失うことになるが、(i)本文の考え方によれば、後任の破産管財人が行った前任の破産管財人の管財業務に係る計算の報告が承認されれば、報告の内容にはよるものの、承認により免責の効果を受けることも可能であると解されるし、また、( ii)計算の報告につき承認を受けた場合であっても、破産管財人の不正行為による損害賠償責任は免責されないと解されており。本文のような考え方を採用しても、相続人が自ら計算の報告を行った場合と比較して、相続人にとって不利益はそれほど大きいものではないと考えられる。なお、前記のとおり、破産法第168条と同旨の規定は少なくないが、倒産処理手続関係(民事再生法、会社更生法等)については、それ以外の制度と比べ、大規模事件や複雑困難な事件の計算報告を求められる可能性があり、専門性も要求されると考えられるので、それにふさわしい者(弁護士等)が計算報告をする必要性が特に高いと認められる。そこで、倒産処理手続関係の規定については、本文と同様の改正を行うものとすることで、どうか。

2 現行法では、計算報告のために招集した債権者集会において、破産管財人が、価値がないために換価しなかった財産の処分について決議をしなければならないものとされている(破産法第281条)この点につき、実務上は、換価が不可能な財産がある場合には、最後配当までに、破産法第197条第12号に規定する権利の拠棄についての許可を得て財産を処理している事例が多いと指摘されている。このように、裁判所の許可でV換価すべきか放棄すべきかを判断することで足りるとすれば、債権者集会において改めて決議をする制度を設ける必要性に乏しいと考えられる。そこで、以上のような指摘を踏まえて、 破産法第281条の不換価財産についての債権者集会による決議の制度は廃止するものとすることで、どうか。

第3 債権調査期間又は債権調査期日

<1> 裁判所は、破産手続開始の決定と同時に、破産財団の状況を報告するための債権者集会の期日(第2の1参照)のほか、次に掲げる事項を定めなければならないものとする。
(i)破産債権の届出をすべき期間
(ii)破産債権の調査をするための期間又は期日
<2> <1>(i)及び(ii)の規定にかかわらず、裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を償うに足りなくなるおそれがあると認めるときは、<1>(i)の期間並びに <1>(ii)の期間及び期日を定めないことができるものとする。
<3><2>の場合において、裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を償うに足りなくなるおそれがなくなったと認めるときは、<1>(i)の期間並びに<1>(ii)の期間又は期日を定めなければならないものとする。

(注)
部会資料30(第10・2(2)参照)では、<2>について、裁判所は、破産手続開始の決定の際財団債権の弁済により、破産財団をもって破産手続の費用を償うに足りなくなる見込みがあると認めるときは、債権調査を行う必要性が少ないことから、破産手続開始の決定と同時に、債権調査期間又は債権調査期日を定めないことができるものとしていたが、今回の部会資料では、このように債権調査期間等を定めない場合には、債権届出期間をも同時に定めないものとしなければならないとして、この点につき部会資料30を一部修正している。このように修正したのは、債権届出期間は本来債権調査をするために定められるべきものであり、債権調査と切り離して、独自に債権届出期間を定めることを合理的に説明することは困難ではないかとの問題意識によるものである。すなわち、本来破産手続における債権届出期間は、原則として当該期間経過後に届出をした場合には債権調査に要する費用を負担しなければならない特別調査によるものとする時的な限界を定める機能を有することからすると、債権調査が必要となるか分からない段階において、債権届出期間のみを設定して破産債権者に届出を促す必要性に乏しいと考えられる。以上の考え方につきどのように考えるか。このような考え方に対しては、債権届出期間の定めがないと、届出により時効の中断の効果が生ずるにもかかわらず、届け出ること自体できない、あるいはその必要性がないと破産債権者が誤解するおそれがある等の指摘がされている。しかし、この問題点に対しては、時効中断等のために必要がある場合には債権の届出をすることができる旨の教示を制度上、運用上充実させることで足りると考えられるが、どうか。

第4 裁判所の許可を要する事項

破産管財人が次に掲げる行為をするには、裁判所の許可を得なければならないものとする。ただし、(vi)から(xiv)までの行為につき最高裁判所規則で定める金額以上の価額を有するものに関しないときは、この限りでないものとする。
(i)(破産法第197条第1号と同じ。)
(ii)鉱業権、漁業権、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、回路配置利用権、育成者権、著作権及び著作隣接権の任意売却
(iii)~(xiv)(破産法第197条第3号から第14号までと同じ。)
(XV)その他裁判所の指定する行為
(注)
上記の考え方は、訴えの提起についても現行法と同様に裁判所の要許可事項としているところ、この点につき、第22回会議の審議において、売掛金の請求のために訴えを提起するような場合にまで、裁判所の個別の許可を得る必要はないのではないかとの指摘がされた。現行法において訴えの提起に裁判所の許可が必要とされたのは、他の要許可事項と同様に、訴えの提起についても破産財団に重要な関係のある行為であるとされたからであり、他の要許可事項と区別して、訴えの提起のみ除外することを合理的に説明するのは困難ではないかと考えられるが、どうか。もっとも、このように要許可事項から特定の事項のみを除外することは困難であるとしても、管財業務の機動性をより重視する立場からは、(a)再生手続や更生手統と同様に、破産財団に重要な関係のある行為を列挙し、裁判所が、個別の事件ごとに、必要があると認める場合には、裁判所の許可を要する行為を定めることができるものとする考え方のほか(b)本文のような考え方を基本的には採用しつつ、裁判所が、破産手続開始後、必要があると認める場合には、(i)一定の行為につき裁判所の許可を要しないとすることができるものとする考え方や、(ii)第7号から第14号までに掲げる行為に限って、裁判所の許可を要しないとすることができるものとする考え方などがあり得る。これらの考え方について、どのように考えるか。

第5 破産管財人による任意売却と担保権の消滅

(参考)
A案(部会資料30第12・2(3)ア参照)
(7)担保権消滅の許可等

<1>破産手続開始の決定当時破産財団に属する財産の上に別除権である担保権(以下「担保権」という。)が存する場合において、当該担保権を消滅させて当該財産を任意に売却することが破産債権者の一般の利益に適合するときは、破産管財人は、裁判所に対し、 当該財産を任意に売却し、及び次の(i)又は(ii)に掲げる区分に応じてそれぞれに定める額に相当する金銭を裁判所に納付して当該財産の上に存するすべての担保権を消滅させることについての許可の申立てをすることができるものとする。
(i)破産管財人において、売却によってその相手方より取得することができる金銭(以下「売得金」という。)の一部を破産財団へ組み入れようとする場合売得金から組み入れようとする額(以下「組入金」という。)を控除した額
(ii)(i)に掲げる場合以外の場合 売得金の額

<2> 破産管財人は、<1>の許可の申立てをしようとするときは、組入金の額について、あらかじめ消滅すべき担保権を有する者(以下アにおいて「担保権者」という。)と協議しなければならないものとする。<3> <1>の許可の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならないものとする。
(i)当該担保権の目的である財産の表示
(ii)売得金の額
(iii)(i)の財産の売却の相手方の氏名又は名称
(iv)消滅すべき担保権の表示
(v)(iv)の担保権の被担保債権の額
(vi)組入金が存すると認めるときは、その額

<4> <1>の許可の申立てがあった場合には、<3>の書面(以下アにおいて「申立書」という。)を、当該申立書に記載された担保権者に送達しなければならないものとする。この場合においては、代用公告の規定は、適用しないものとする。

<5> <4>の場合においては、裁判所は、担保権者に対し、<1>の許可の申立てに異議があるときは、<4>に規定する申立書の送達を受けた日から1月以内に、担保権の実行を申し立てるとともにその申立てを証する書面を提出し、既に担保権の実行を申し立てているときはそれを証する書面を提出すべきことを命じなければならないものとする。

<6> 裁判所は、やむを得ない事由がある場合に限り、担保権者の申立てにより、<5>の期間を伸長することができるものとする。

<7> <5>の書面が提出された後に、<5>に規定する担保権の実行の申立てが取り下げられ、又は却下された場合には、その書面を提出しなかったものとみなすものとする。民事執行法第188条において準用する同法第63条の規定又は同法第192条において準用する同法第129条の規定により担保権の実行の手続が取り消された場合についても、同様とするものとする。

<8> 裁判所は、担保権者が<5>又は<6>に規定する期間内に<5>の書面を提出しなかったときは、<1>の許可の決定をすることができるものとする。

<9> 裁判所は、必要があると認めるときは、<1>の許可の決定において、(イ)による金銭の納付がされ、又は当該決定が取り消されるまでの間、担保権の実行の禁止を命ずることができるものとする。

<10> <1>の許可の決定に対しては、担保権者は、即時抗告をすることができるものとする。

<11> <10>の即時抗告についての裁判があった場合には、その決定書を担保権者に送達しなければならないものとする。この場合においては、<4>後段の規定を準用するものとする。

(イ)価額に相当する金銭の納付
<1> 破産管財人は、(ア)<1>の許可の決定が決定したときは、(ア)<1>(i)又は(ii)に掲げる区分に応じてそれぞれに定める額の金銭を裁判所の定める期限までに裁判所に納付しなければならないものとする。

<2> 担保権者の有する担保権は、<1>による金銭の納付があった時に消滅するものとする。

<3> <1>による金銭の納付があったときは、裁判所書記官は、消滅した担保権に係る登記又は登録の抹消を嘱託しなければならないものとする。

<4> 破産管財人が<1>による金銭の納付をしないときは、裁判所は、(ア)<1>の許可の決定を取り消さなければならないものとする。

(ウ)配当等の実施等
<1> 裁判所は、(イ)<1>の規定による金銭の納付があった場合には、<2>に規定する場合を除き、配当表に基づいて、担保権者に対する配当を実施しなければならないものとする。

<2> 担保権者が一人である場合には、裁判所は、当該金銭の交付書を作成して、担保権者に弁済金を交付し、剰余金を破産管財人に交付するものとする。

<3> 民事執行法第85条及び第88条から第92条までの規定は<1>の配当について、同法第88条、第91条及び第92条の規定は<2>による弁済金の交付の手続について準用するものとする。


B案(部会資料30第12の2(3)イ参照)
(ア)担保権消滅の許可等
<1> 破産手続開始の決定当時破産財団に属する財産の上に担保権が存する場合において、当該担保権を消滅させて当該財産を任意に売却することが破産債権者の一般の利益に適合するときは、破産管財人は、裁判所に対し、当該財産を任意に売却し、及び次の(i)又は(ii)に掲げる区分に応じてそれぞれに定める担保権を消滅させることについての許可の申立てをすることができるものとする。
(i)破産管財人において、売得金の一部を破産財団へ組み入れようとする場合先順位の担保権の被担保債権の総額が売得金の額を超えるもの
(ii)(i)に掲げる場合以外の場合 当該担保権の被担保債権の額が売得金の額(先順位の担保権が存する場合にあっては、売得金の額から先順位の担保権の被担保債権の額を控除した額)を超えるもの

<2> <1>の許可の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならないものとする。
(i)当該担保権の目的である財産の表示
(ii)売得金の額
(iii)(i)の財産の売却の相手方の氏名又は名称
(iv)消滅すべき担保権の表示
(v)(iV)の担保権及びその先順位の担保権の被担保債権の額
(vi)組入金が存すると認めるときは、その額

<3> <1>の許可の申立てがあった場合には、<2>の書面(以下イにおいて「申立書」という。)を、当該申立書に記載された<2>(iv)の担保権を有する者(以下イにおいて「担保権者」という。)に送達しなければならないものとする。この場合においては、代用公告の規定は、適用しないものとする。

<4> <3>の場合においては、裁判所は、担保権者に封し、<1>の許可の申立てに異議があるときは、<3>に規定する申立書の送達を受けた日から1月以内に、担保権の実行を申し立てるとともにその申立てを証する書面を提出し、既に担保権の実行を申し立てているときはそれを証する書面を提出すべきことを命じなければならないものとする。

<5> 裁判所は、やむを得ない事由がある場合に限り、担保権者の申立てにより、<4>の期間を伸張することができるものとする。

<6> <4>の書面が提出された後に、<4>に規定する担保権の実行の申立てが取り下げられ、又は却下された場合には、その書面を提出しなかったものとみなすものとする。民事執行法第188条において準用する同法第63条の規定又は同法第192条において準用する同法第129条の規定により担保権の実行の手続が取り消された場合についても、同様とするものとする。

<7> 裁判所は、担保権者が<4>又は<5>に規定する期間内に<4>の書面を提出しなかったときは、<1>の許可の決定をすることができるものとする。

<8> 裁判所は、必要があると認めるときは、<1>の許可の決定において、(イ)<1>による金銭の支払がされ、又は当該決定が取り消されるまでの間、担保権の実行の禁止を命ずることができるものとする。

<9> <1>の許可の決定に対しては、担保権者は、即時抗告をすることができるものとする。

<10> <9>の即時抗告についての裁判があった場合には、その決定書を担保権者に送達しなければならないものとする。この場合においては、<3>後段の規定を準用するものとする。

(イ)金銭の支払等
<1> 破産管財人は、(ア)<1>の許可の決定が確定したときは、売得金の額(先順位の担保権が存する場合にあっては、売得金の額から先順位の担保権の被担保権の額を控除した額)に相当する金銭を裁判所の定める期限までに(ア)<1>(ii)の担保権を有する者に支払わなければならないものとする(先順位の担保権が存する場合にあっては、売得金の額から先順位の担保権の被担保債権の額を控除してなお残額が存する場合に限るものとする。)。

<2>(ア)<2>(iv)の担保権は、<1>による金銭の支払があった時(<1>の場合以外の場合にあっては、(ア)<1>の許可の決定が確定した時)に消滅するものとする。

(前注)
中間試案の甲案は、目的物につき存する担保権を区別しないで一律に消滅の対象として取り扱うものとしつつ、破産管財人が担保権者に対し任意売却による売得金の額や組入額等の条件を示した上で、担保権の実行を自らするか、又は破産管財人が示した条件で担保権を消滅させるかの選択を担保権者に行わせ、担保権者が後者を選択した場合においては、担保権は消滅し、破産財団へ一定金額が組み入れられるものとする基本的な考え方を採用していた。このような考え方に対しては、担保権者が組入額のみを争いたい場合において、そのための手段がなく、この点につき破産管財人のイニシアティブが強すぎるのではないかとの問題点が指摘されていたことから、部会資料30では、これへの対応策として、破産管財人は、許可の申立てをするときは、組入金の額について、あらかじめ消滅すべき担保権を有する者と協議しなければならないものとし、担保権者が事前に組入額につき破産管財人との間で協議をする機会を設けるものとする案(a案)を示した。しかしながら、第22回会議の審議では、協議義務については、協議の内容やその時期を具体的に定めることは困難であり、協議を欠いたとしても、直ちに許可決定の効力自体に影響を及ぼすものではないと考えられることから、上記の問題点への対応策としては十分ではないとする意見が述べられた。そこで、これらの意見等を踏まえて、今回の資料では、新たに上記の問題点に対する方策として、 A案に以下の(1)又は(2)の制度を新たに加える修正案を示すものとし、これに加えて、 B案に含まれる問題点に対応するための考え方を示すものとしている。


1 A案
A案の修正案として、以下の2つの考え方があるが、どのように考えるか。
(1) A1案(A案の修正案1)
裁判所は、担保権者の利益を不当に害することとなると認めるときは、許可の申立てを棄却することができるものとする。

(注)
1(1)については、破産管財人が算定した組入金の額や協議義務等による協議の経過等を総合勘案して判断されるものと考えられる。
2 A1案は、 A2案と併せて用いることも考えられる。
3 なお、破産管財人が協議を行うことを担保するため又は(1)の裁判所の判断を容易にするために、破産管財人は、許可の申立てをする際に、担保権者との間における協議の内容及び経過等について記載しなければならないものとすることで、どうか。

(2) A2案(A案の修正案2)
担保権消滅の許可の申立てよりも高額の買受けの申出がある場合には、以下の措置をとることができるものとする。

<1> 担保権消滅の許可の申立書の送達を受けた日から1月以内に、担保権者が、自己又は第三者が売得金より高額で買い受ける旨を申し出た場合には、当該目的物は、その買受人に売り渡すものとする。この場合において、当該申出をした者が複数あるときは、最高価で買い受ける旨の申出をした者に売り渡すものとする。
<2> <1>の場合には、その代金をこの手続に従って担保権者に配当するものとし、破産財団への組入れは認めないものとする。
<3> 破産管財人と担保権者との間で、売得金及び組入額について合意がある場合には、当該担保権者は、この手続において、担保権の実行及び<1>の申出をすることができないものとする。
(注)
1 <1>は、担保権者が申し出る金額につき、売得金よりも高額であることを要件とするものであるが、このような考え方のほかに、( i)売得金よりも1割以上高額でなければならない、(ii)売得金から組入額を除いた金額よりも一定割合以上高額でなければならないものとすること等も考えられる((ii)の考え方をとって、例えば、当該金額の2割以上高額でなければならないものとすると、担保権者の申出額としては、売得金の16.6パーセントを組み入れる場合には売得金よりも 0.08パーセント以上の高額であることが、売得金の10パーセントを組み入れる場合には、売得金よりも8パーセント以上高額であることが、売得金の5パーセントを組み入れる場合には、売得金よりも14パーセント以上高額であることがそれぞれ必要となり、破産管財人による組入額と担保権者が申し出る金額の多寡が反比例する関係になる。)。もっとも、特に(ii)については、一定割合をどのように定めるかについて合理的な説明が可能かという点が問題となる。

2 <1>の申出をする者は、中間試案で掲げた丙案における組入額につき「利害関係を有する担保権者」に事実上限られることになると考えられる。この考え方によれば、破産管財人は、「利害関係を有する担保権者」との間で<3>の合意を得ておかないと、当該担保権者から<1>の申出をされる可能性があることになる。このような意味からすると、この考え方は、破産管財人と「利害関係を有する担保権者」との間の組入額についての合意を促進する制度として位置付けることも可能であると考えられる。

3 A2案では、有利な条件を示した買受人については、その支払を確保する仕組みが必要となると考えられる。


2 B案
同意を要する「利害関係を有する担保権者」を決定手続により定めるものとする。

(注)
1 部会資料30(第12・2(3)イ参照)では、担保権が消滅する根拠についてはA案と同様の考え方を採用しつつ、その対象となる担保権者をいわゆる判子代を要求する後順位担保権者等に限定し、これらの者の有する担保権を消滅させることで、実務上のニーズに応える制度として、 B案を示していた。B案では、消滅の対象となる担保権者を限定し、個別に担保権を消滅させる仕組みを採用していることから、「利害関係を有する担保権者」が結果的に担保権の消滅に同意しなかったために、任意売却が実現しなかった場合であっても、破産管財人がこの制度によって個別に消滅の対象とした担保権は消滅することになる。このような場合には、担保権者の順位に変動が生ずるごとになり、実体法上適切ではないことから、このような結果を避けるためには、「利害関係を有する担保権者」の同意を申立ての要件とし、任意売却の対象財産に設定されている担保権をすべて一括して消滅させるようにする必要があると考えられる。

2 部会資料30(第12・2(3)イ(注)4参照)では、B案については、先順位担保権者の被担保債権の額で、同意を要する担保権者及び「許可に係る担保権」に該当するか否かが決まることから、各担保権者の被担保債権の額をどのように争うかにつき検討する必要があると示していた。この点については、同意を要する担保権者を認定するために必要となる被担保債権についての争いは決定手続によるものとし、最終的な弁済を受けるために必要となる被担保債権についての争いは配当異議訴訟類似の訴訟手続によるものとすることが考えられる。この考え方によれば、決定手続により同意を要する担保権者をあらかじめ定め、決定手続が決定した段階で、担保権を一律に消滅させることができるようになる。この点についてどのように考えるか。

第6 配当手続

1 配当の公告等
配当の公告等については、次のとおりとすることで、どうか。

<1> 破産管財人は、配当に加えるべき債権の総額及び配当することができる金額を公告し、又は届出破産債権者に通知しなければならないものとする(破産法第260条参照)。

<2> <1>の規定による通知は、その通知が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなすものとする(新会社更生法第46条第6項参照)。

<3> <1>の規定による通知が<2>の規定により各届出破産債権者に到達したものとみなされたときは、破産管財人は、裁判所にその旨を届け出るものとする。

<4> 中間配当又は最後の配当に関する除斥期間は、<1>の規定による公告が効力を生じた日又は<3>の規定による届出があった日から起算するものとする(破産法第261条、第262条、部会資料32・第13・5(3)参照)。

(注) 現行破産法は、中間配当及び最後の配当について、破産管財人は配当に加えるべき債権の総額及び配当することができる金額を公告しなければならないとし(同法第260条)、この公告を基準として除斥期間を定めることとしている(同法第261条、第262条及び第273条)。この公告の意義については、<1>既に一般の債権調査は終了し(同法第256条)、未届破産債権者の利益を保護するために公告により周知を図るという必要性は乏しいと考えられること、<2>公告のほかに届出破産債権者に対して個別に通知すべきものとはしていないことから、特に、除斥期間を画一的に定めるという手続上の便宜を重視したものと考えることができる。今回の破産手続の見直しにおいて、一般調査期間の末日又は一般調査期日後の届出の要件を厳格化すること(部会資料30・第10・1(1))に伴い、未届破産債権者の利益の保護の必要性は一層低減することから、簡易な配当手続(下記2(1)参照)に限らず、個別の通知によることができるものとし、破産管財人が公告又は通知のうち適切なものを選択する(その前提として、通知を選択した場合に、除斥期間を画一的に定めるために制度上の手当を講ずる)ものとすることが考えられるが、どうか。

2 簡易な配当手続
(1)最後配当における配当することができる金額が一定金額に満たない場合の簡易な配当手続の特則

<1>破産管財人は、最後の配当において、配当することができる金額が1000万円に満たない場合には、次の<3>から<9>までに規定する手続(以下「簡易配当手続(仮称)」という。)による配当をすることができるものとする。

<2> 破産管財人は、簡易配当手続(仮称)による配当をするには、裁判所書記官の許可を得なければならないものとする(部会資料32・第13・5(2)参照)。

<3> 破産管財人は、次に掲げる事項を記載した配当表を作成し、これを裁判所に提出しなければならないものとする(破産法第258条、第259条参照)。
(i)配当に加えることができる債権者の氏名又は名称及び住所
(ii) 配当に加えることができる債権の額
(iii)配当することができる金額

<4> 破産管財人は、各届出破産債権者に対する配当見込額を定めて、各届出破産債権者に対し、配当に加えるべき債権の総額、配当することができる金額及び当該届出破産債権者に対する配当見込額を通知しなければならないものとする(破産法第260条、第265条、第274条参照)。

<5> <4>の規定による通知は、その通知が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなすものとする(新会社更生法第46条第6項、上記1<2>参照)。

<6> <4>の規定による通知が<5>の規定により各届出破産債権者に到達したものとみなされたときは、破産管財人は、裁判所にその旨を届け出るものとする(前記1<3>参照)。

<7> 簡易配当手続(仮称)に対する除斥期間に関する規定の適用については、<6>の規定による届出があった日から起算して1週間の期間を最後の配当に関する除斥期間とするものとする(倒産法部会部会資料27・第13・5(3)、破産法第261条、第275条から第277条まで参照)。

<8> 各届出破産債権者は、<6>の規定による届出があった日から起算して2週間以内に限り、裁判所に対して、<3>の配当表に対する異議を申し立てることができるものとする(破産法264条参照)。

<9> 破産管財人は、<6>の規定による届出があった日から起算して2週間を経過した後(<8>の規定による異議の申立てがあったときは、当該申立てについての決定があった後)、配当額を定めて、配当を行わなければならないものとする(破産法第265条、第274条参照)。

(注)
1 上記の考え方は、第23回会議での指摘を踏まえて、配当の局面に限定して、簡易な配当手続の特則を設けようとするものである。

2 上記<1>では、配当手続の特則であることにかんがみ、その要件については、破産財団に属する財産の総額ではなく、配当することができる金額を基準とし、その具体的な金額については、当部会における従前の審議及び意見照会の結果を踏まえて、1 0 0 0万円とするものとしている。また、中間配当を行うような事案については、簡易配当手続(仮称)による費用、時間等の節減効果はさほど重視されないと考えられることから、簡易配当手続(仮称)は、専ら最後の配当の特則として設けるものとしている。なお、中間配当を行った破産事件における最後の配当については、簡易配当手続(仮称)の特則を適用しないものとすることで、どうか。

3 上記<2>では、本則となる配当手続における最後の配当の許可を裁判所書記官の権限とすることや、配当することができる金額が1000万円未満であるか否かは形式的に判断することができることにかんがみ、簡易配当手続(仮称)による配当をすることの許可は、裁判所書記官の権限とするものとしている。なお、この裁判所書記官の許可に対する不服申立てについては、特段の規定を設けないものとすることで、どうか。

4 除斥期間及び異議申立期間の画一的取扱い(上記<5>から<8>まで)の点については、上記1参照。


(2) 最後の配当における届出破産債権者の全員が異議を述べない場合の簡易な配当手続の特則
(ア)
<1> 裁判所は、相当と認める場合には、破産手続開始の決定の公告及び通知(破産法第143条第1項及び第2項、部会資料28・第1・4(2)<1>参照)とともに、破産債権者が、簡易配当手続(仮称)による配当をすることについて異議があるときは、一般調査期間の末日又は一般調査期日の終了時まで[最後の配当の許可がある日まで]に 裁判所に異議を述べるべき旨を公告し、かつ、通知することができるものとする。
<2> 裁判所書記官は、<1>の規定による公告及び通知をした場合において、届出破産債権者が<1>に規定する異議を述べないときは、破産管財人の申立てにより、最後の配当において、簡易配当手続(仮称)による配当をすることを許可することができるものとする。
(イ)
<1> 裁判所書記官は、<1>の規定による公告及び通知をしなかった場合でも、相当と認めるときは、破産管財人の申立てにより、最後の配当において、簡易配当手続(仮称)による配当をすることを許可することができるものとする。
<2> <1>の規定による許可があった場合には、破産管財人は、各届出破産債権者に対し、配当に加えるべき債権の総額、配当することができる金額及び当該届出上に破産債権者に対する配当見込額のほか、届出破産債権者が、簡易配当手続(仮称)による配当をすることについて異議があるときは、上記(1)<6>の規定による届出があった日から起算して1週間[2週間]の期間内に、裁判所に異議を述べるべき旨を通知しなければならないものとする(上記(1)<4>参照)。

(ウ)
<1> [(ア)<2>又は](イ)<1>の規定による許可があった場合において、届出破産債権者が、上記(1)<6>の規定による届出があった日から起算して1週間[2週間]の期間内に、簡易配当手続(仮称)による配当をすることについて裁判所に異議を述べたときは、裁判所書記官は、当該許可を取り消さなげればならないものとする。
<2> <1>の規定による取消しの処分があったときは、破産管財人は、配当額等の公告等(破産法第260条、上記1参照)以下の本則となる配当手続を行わなければならないものとする。
(注)
1 第23回会議において、届出破産債権者の全員が異議を述べなかった場合には簡易な破産手続におけるのと同様の簡易配当を行うことができるものとするとの考え方について異論がなかったこと、さらに、破産手続開始と同時に異議の有無を確認する制度と事後的に異議の有無を確認する制度とを併存させるとの考え方が示されたことを踏まえて、今回の資料では、<1>破産手続開始の決定の公告及び通知とともに知れている破産債権者に対して異議の申出の機会を与えて、異議のない場合に簡易配当手続(仮称)を行う制度(上記(ア))、<2>最後の配当の際に届出破産債権者に対して異議の申出の機会を与えて、異議のない場合に簡易配当手続(仮称)を行う制度(上記(イ)及び(ウ))を設けることを提案している。この二つの制度を設ける場合には、両者の関係、役割分担、効果の強弱(下記2参照)等について、どのように考えるか。また、二つの制度のうち一方のみを採用するとの考え方もあり得るが、どのように考えるか。

2 上記(ア)については、異議申出期間をどのように定めるか、異議申出期間徒過の効果をどのように考えるかが問題となる。これを短期間とし、その効果を強めれば、手続的には安定するものの、かえって異議を誘発しかねないと考えられる。そこで、本案として、異議申出期間を、届出破産債権者が他の破産債権の届出状況を確知することができる「一般調査期間の末日又は一般調査期日の終了時まで」とし、この期間内に異議がない場合には、簡易配当手続(仮称)による配当を行うとの考え方を掲げている。これに対して、極めて限定的な効果とする考え方、すなわち、異議申出期間を[]内に掲げた「最後の配当の許可がある日まで」とし、さらには、上記(ア)についても、上記(ウ)の異議申出による本則となる配当手続への移行を認めるとの考え方もあり得るが、どのように考えるか。

3 上記(イ)及び(ウ)については、第23回会議で、届出破産債権者に異議があれば簡易な配当は行わないものとするとの考え方が示されたことから、<1>訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述による手形訴訟から通常の手続への移行(民事訴訟法第353条)又は少額訴訟から通常の手続への移行(同法第373条)、<2>督促異議の申立てによる督促手続から訴訟への移行(同法第395条)を参考にして、簡易配当手続(仮称)に入った後、除斥期間(又は異議申立期間)内に異議の申出があった場合には、本則となる配当手続に移行するとの制度を提案している。なお、上記(ウ)<1>の取消しの処分があった場合には、上記(ウ)<2>のとおり改めて配当額等の公告等(破産法第260条、上記1参照)を行い、その中で取消しの処分があったこと(本則となる配当手続によること)を公告し、又は通知することを想定している。これに対して、簡易配当手続(仮称)に入る前に届出破産債権者に異議の申出の機会を与えた上で、異議がない場合に簡易配当手続(仮称)に入るという考え方もあり得るが、どのように考えるか。

4 上記(ア)<2>及び上記(イ)<1>の許可、上記(ウ)<1>の取消しの処分については、本則となる配当手続における最後の配当の許可を裁判所書記官の権限とすること、届出破産債権者に異議があったか否かは形式的に判断することができることから、裁判所書記官の権限とするものとしている。なお、この裁判所書記官の許可に対する不服申立てについては、特段の規定を設けないものとすることで、どうか。5 この特則は、簡易配当手続(仮称)の一種であることから、専ら最後の配当の特則として設けるものとし、中間配当を行った破産事件における最後の配当については、適用しないものとすることで、どうか。

(3) 最後の配当における届出破産債権者の全員が同意した場合の簡易な配当手続の特則最後の配当において、破産管財人が定めた配当表[配当額]、配当時期及び配当方法について、届出破産債権者の全員が同意したときは、裁判所書記官の許可を得て、当該配当表[配当額]、配当時期及び配当方法に従って、配当を行うことができるものとするとの考え方があるが、どのように考えるか。
(注)
1 上記(2)の「届出破産債権者の全員が異議を述べない場合の簡易な配当手続の特則」をさらに進めて、届出破産債権者の全員が配当表[配当額]、配当時期及び配当方法についても同意した場合の簡易な配当手続の特則を提案するものである。

2 届出破産債権者が同意すべき事項として、配当表[配当額]、配当時期、配当方法のほかに、どのようなものが考えられるか。

3 本則となる配当手続における最後の配当の許可を裁判所書記官の権限とすること、届出破産債権者の全員の同意があったか否かは形式的に判断することができることから、この特則による配当の許可は、裁判所書記官の権限とするものとし、許可に対する不服申立てについては、特段の規定を設けないものとすることで、どうか。

4 この特則を中間配当について適用すると、最後の配当に関する規律が複雑になることから、専ら最後の配当の特則として設けるものとすることで、どうか。

第7 その他

破産管財人の労働組合との団体交渉に応ずる義務について、破産法において規定を設けるべきであるとの考え方があるが、どのように考えるか。

(注)
1 意見照会においては、破産管財人の団体交渉応諾義務を破産法に明確に規定すべきであるとの意見が寄せられた。破産管財人に労働組合との団体交渉に応ずる義務があるか否かについては、様々な意見があるところであるが、いずれにせよ破産管財人の権限と交渉の対象となる事項との関係で、個々具体的な判断が必要となる問題であり、破産法が倒産処理手続について定めた一般法としての性格を有することも併せ考えると、破産法において労働法規上の問題に関わる事項につき規定することは困難であると考えられる。この点について、どのように考えるか。もっとも、この問題は、破産管財人の破産債権者に対する説明のあり方にも関わるものであり、例えば、破産法上、破産管財人が債権者に対して誠実に説明をする義務に関する規定を定める等の対応もあり得ると考えられるが、この点についてどのように考えるか。

2 その他、破産手続における労働組合の関与のあり方につき、どのように考えるか。