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【第三次案】第1部 破産手続: 第4 破産手続開始の効果

1 検察官への通知
破産手続開始の検察官への通知の制度(破産法第144条参照)は、廃止する方向で、なお検討するものとする。

(注) 最終的には、免責不評可時由及び倒産犯罪の見直しに合わせて結論を得ることで、どうか。

2 破産者の説明義務の強化
(1)破産者の説明義務
<1> 次の各号に掲げる者は、破産管財人、債権者集会又は債権者委員会の請求により、破産に関して必要な説明をしなければならないものとする。
(i)破産者及びその代理人
(ii)破産者の理事、取締役、執行役、監事、監査役及び清算人
(iii)(ii)に掲げる者に準ずる者
(iv)破産者の従業者]
<2> <1>は、前に<1>に掲げる資格を有していた者について準用するものとする。

(注)
1 <2>については、再生手続及び更生手続においても、同様の手当てを行うものとする。
2 第28回会議の審議では、代理権のない使用人(上記においては 「破産者の従業者」と表記している。)に説明義務を課すとしても刑事罰則まで課す必要はなく、過料で足りるのではないかとの意見が有力であったが、その一方で、破産管財人等が必要とする重要な情報に接する者の範囲を画する上では、使用人における代理権の有無は関係がないとの意見もあった。異なる立場の者が同一の義務を負う場合において、当該義務の履行を担保するための罰則が、これらの義務を負う者のうち一定の立場の者のみについて適用されないとするには、その一定の立場の者と、同一の義務を負担する他の立場の者との 間で、当該義務の目的との関係において、類型的な相違が存することが必要であり、そのような相違がないにもかかわらず、罰則を特定の者についてのみ異なる性質のものにすることは困難ではないかと考えられる。この点についてどのように考えるか。
3 第28回会議の審議では、破産管財人等においてその職務を遂行する上で重要な情報を有すると考えられない者に対して説明を求めることが懸念されるとして、代理権のない使用人に説明を求める場合には 裁判所の許可を要するものとする考え方も提案がされた(許可がされれば、当該使用人は罰則の対象になると考えられる。)が、この点についてどのように考えるか。

(2)破産者の重要財産開示義務
<1> 破産者は、破産手続開始の決定後遅滞なく、その所有する不動産、現金、有価証券、預貯金その他重要な財産の内容を記載した書面を裁判所に提出しなければならないものとする。
<2> <1>の義務に違反したときは、免責不許可の決定をすることができるものとする
(破産法第366条ノ9第5号参照)

(注)
1 部会資料39では、開示の対象となる財産については、その範囲を明確にするために、不動産、現金、有価証券、預貯金を具体的に掲げるものとし、これらの財産のほかに開示の対象として必要なものがある場合には、「重要な財産」に含まれるものとすることで足りるとする考え方を示していた。しかし、この点については、第28回会議の審議においては、重要財産開示義務については刑事罰則の対象となることから、開示の対象となる財産の範囲につき破産者が明確に判断しうるようにすべきであるとの意見が述べられた。このような指摘を踏まえると、開示の対象となる重要財産の範囲については具体的に列挙して、書き切ることとし、「その他重要財産」という要件は用いないことが考えられるが、どうか。この考え方をとる場合には、どのような財産を列挙すべきか。
2 1の考え方のほかに、不動産、現金、有価証券、預貯金等の定型的な重要財産に加え、裁判所が債務者の個別の事情を考慮して、破産手続開始の決定と同時に開示の対象として命じた財産について開示義務が生ずるとの考え方(「破産者は、破産手続開始の決定後遅滞なく、その所有する不動産、現金、有価証券、預貯金その他裁判所が命ずる財産の内容を記載した書面を裁判所に提出しなければならない」とする。」)がありうる、このように裁判所が個別に命ずることができるものとする場合には、その部分については、破産手続開始の決定により破産管財人等の請求を待たずに当然に発生する破産手続上の説明義務という考え方とは、その位置づけを異にするものになるとも考えられる。しかし、破産手続開始の決定後、就任後間もない破産管財人による管財業務を円滑に行わせるためには、債務者の重要財産に関する情報を、制裁によって担保される開示義務により早期に取得する必要性が高いと考えられることから、このような目的のために、裁判所が、申立ての際の添付書類等から把握した財産状況からみて、開示すべき財産を定めることには合理性があると考えられる。この点についてどのように考えるか。

(3)物件検査権等
<1> 破産管財人は、破産者の帳簿、書類その他の物件を検査することができるものとする。
<2> 破産管財人は、その職務を行うため必要があるときは、破産者の子会社又は連結子会社に対してその業務及び財産の状況につき報告を求め、又はその帳簿、書類その他の物件を検査することができるものとする。
<3> <2>の子会社又は連結子会社は、正当な理由がない限り、<2>による報告又は検査を拒むことができないものとする。

3 郵便物の管理
<1> 裁判所は、破産管財人の職務の遂行のため必要があると認めるときには、信書の送達の事業を行う者に対し、破産者にあてた郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律第2条第3項に規定する信書便物(以下「郵便物等」という。)を破産管財人に配達すべき旨を嘱託することができるものとする。
<2> 裁判所は、破産者の申立てにより又は職権で、破産管財人の意見を聴いて、<1>の嘱託を取り消し、又は変更することができるものとする。
<3> 破産手続が終了したときは、裁判所は、<1>の嘱託を取り消さなければならないものとする。
<4> <1>又は<2>の規定による決定及び<2>の申立てを棄却する裁判に対しては、破産者又は破産管財人は、即時抗告をすることができるものとする。
<5> <1>の規定による決定に対する<4>の即時抗告は、執行停止の効力を有しないものとする。
<6> 破産管財人は、破産者にあてた郵便物等を受け取ったときは、これを開いて見ることができるものとする。
<7> 破産者は、破産管財人に対し、破産管財人が受け取った<6>の郵便物等の閲覧又は当該郵便物等で破産財団に関しないものの交付を求めることができるものとする。
(民事再生法第73条及び第74条、会社更生法第75条及び第76条参照)

(注)
<1>、<4>及び<5>については、再生手続及び更生手続においでも、同様の手当てをするものとする。

目次

○トップページ

■第一次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第二次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第三次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■残された課題

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法