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【第一次案】第1部 破産手続: 第1 総則

1 管轄の特例

(1)親法人とその子会社

<1> 法人が、株式会社の商法の規定により計算される総株主の議決権の過半数又は有限会社の有限会社法の規定により計算される総社員の議決権の過半数を有する場合において、当該法人(以下「親法人」という。)について破産事件が係属しているときは、当該株式会社又は当該有限会社(以下「子会社」という。)についての破産の申立ては、親法人の破産事件が係属している地方裁判所にもすることができるものとする。子会社について破産事件が係属しているときにおける親法人についての破産の申立てについても同様とするものとする(民事再生法第5条第3項、会社更生法改正案第5条第2項第2号及び第3号参照)。

<2> 他の株式会社の商法の規定により計算される総株主の議決権の過半数を親法人及び子会社又は子会社が有するときは、<1>の適用については、当該株式会社も当該親法人の子会社とみなすものとする。他の有限会社の有限会社法の規定により計算される総社員の議決権の過半数を親法人及び子会社又は子会社が有するときも、同様とするものとするものとする(会社更生法改正案第5条第2項第2号及び第3号、商法第211条ノ2第3項参照)。

(注) <2>については、再生手続においても、同様の手当をするものとする。

(2)商法特例法上の大会社とその連結子会社
株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(以下.「商法特例法」という。)第1条の2第1項に規定する大会社について破産事件が係属している場合には、当該大会社(以下「連結親会社」という。)の同条第4頃に規定する連結子会社(当該連結親会社の直前の決算期において商法特例法第19条の2又は第21条の32の規定により当該連結子会社に係る連結計算書類が作成され、かつ、定時総会において当該連結計算書類が報告されたものに限る。以下「連結子会社」という。)についての破産の申立ては、 連結親会社の破産事件が係属している地方裁判所にもすることができるものとする。連結子会社について破産事件が係属している場合における連結親会社についての破産の申立てについても、同様とするものとする〈会社更生法改正案第5条第2項第4号及び第5号)。

(注) 再生手続においても.同様の手当てを行うものとする。

(3)法人とその代表者
法人について破産事件が係属している場合には、当該法人の代表者についての破産の申立ては、当該法人の破産事件が係属している地方裁判所にもすることができるものとする。法人の代表者について破産事件が係属している場合における当該法人についての破産の申立てについても、同様とするものとする(民事再生法第5条第4項参照)。

(後注)相互に連帯債務者の関係にある個人等について民事再生法第5条第5項に規定する個人の再生手続の管轄の特例に相当する規定を設けるものとするか否かについては、(a)破産手続には、再生手続とは異なり、経済的に密接な関係を有する者について一体的な再生計画を作成することにより再生の実効性を確保するといった要請は少ないと考えられることから、管轄の特例を設けないものとする。(b)破産手続には、(a)のような要請はないものの、経済的に密接な関係を有する者には債務の発生原因となる事実が共通する部分も多いと認められ、その共通する部分に関する債権調査等の手続を-回で済ませるという利点も一方であることから、管轄の特例を設けるものとし、その競合管轄を拡大するものとする、(c)原則的な管轄として規定するまでの必要性は認められないが、(b)と同様に、個々の事案における手続経済上の利点をも考慮するという観点から、移送先としてのみ管轄権を有するものとして、薯しい損害又は遅滞を避けるために必要があると認める場合(民事再生法第7条参照)に限って、一般的な移送の要件で対処するものとするなどの考え方があり得る。これらの考え方のうち(b)については、債務者の原則的な管轄の利益を上回る手続経済上の利益があるか、債務者の住所地から遠隔の地に管轄が認められる場合には、著しい損害又は遅滞を避けるためという一般的な移送の規定で対応することができるか等の問題点があるが、これらについてどのように考えるか.

(4)複数の管轄裁判所の調整
原則的管轄(破産法第105条参照)、財産所在地の管轄(同法第107条第1項及び第2項参照)又は(1)から(3)までの規定により二以上の裁判所が管轄権を有するときは、破産事件は、先に破産の申立てがあった裁判所が管轄するものとする(民事再生法第5条第6項、会社更生法改正案第5条第3項参照)。

2 移送
裁判所は、著しい損害又は遅滞を避けるため必要があると認めるときは、職権で、破産事件を次に掲げる地方裁判所のいずれかに移送することができるものとする(民事再生法第7条、会社更生法改正案第7条参照)。
(i)債務者の主たる営業所又は事務所以外の営業所又は事務所の所在地を管轄する地方裁判所
(ⅱ)債務者の住所又は居所の所在地を管轄する地方裁判所
(ⅲ)財産所在地の管轄(破産法第107条第1項及び第2項参照)に規定する地方裁判所
(ⅳ)1の(1)から(3)までに規定する地方裁判所
(v)1の(1)から(3)までの規定により(iv)の地方裁判所に破産事件が係属しているときは、原則的管轄(同法第105条参照)又は財産所在地の管轄に規定する地方裁判所

3 不服申立て
破産手続、免責手続及び復権手続(以下 「破産法の定める手続」という。)に関する裁判につき利害関係を有する者は、破産法に特別の定めがある場合に限り、当該裁判に対し即時抗告をすることができるものとする。その期間は裁判の公告があった場合には、その公告が効力を生じた日から起算して2週間とするものとする(民事再生法第9条、会社更生法改正案第9条参照)。
(注) 即時抗告の可否につき再生手続及び更生手続と破産手続とで取扱いが異なる裁判 については、所要の整備をするものと、必要な規定を設けるものとする。

4 送達及び公告
(1)送達すべき裁判
破産法の定める手続に関する裁判のうち、送達すべきものは、個別に規定するものとする(破産法第111条の規定は削除するものとする。)(民事再生法第10条第3項、会社更生法改正案第10条第3項参照)。

(2)公告等をすべき場合の取扱い
<1> 破産法の定める手続に関する裁判のうち、現行の破産法において公告及び送達をしなければならないとされているもの(破産法第118条参照)については、公告及び通知(民事訴訟規則第4条第1項参照)をしなければならないものとする。
<2> 破産法の規定によって送達をしなければならない場合には、公告をもって、これに代えることができるものとする。ただし、破産法の規定によって公告及び送達をしなければならない場合は、この限りでないものとする (民事再生法第10条第3項、会社更生法改正案第9条第3項参照)。
<3> <1>及び<2>は、特別の定めがある場合には、適用しないものとする(民事再生法第10条第6頃。会社更生法改正案第1 0条第5項参照)。

(注) <1>及び<3>については、再生手続においても、同様の手当てを行うものとする。

(3)公告の方法
破産法の定める手続においてする公告(破産法第115条及び第116条参照)は、官報に掲載してするものとする(民事再生法第10条第1項、会社更生法改正案第10条第1項参照)。

5 登記及び登録の嘱託
(1)嘱託の主体
登記及び登録の嘱託は、裁判所書記官がするものとする(民事再生法第11条、会社更生法改正案第246条参照)。

(2)破産財団に属する権利に関する登記
破産財団に属する権利で登記又は登録したもの(不動産所有権等)に関する破産の登記、破産取消しの登記、破産廃止の登記及び破産終結の登記の制度(破産法第120条及び第121条参照)は、破産者が法人である場合については、廃止するものとする(外国倒産処理手続の承認援助に関する法律第10条第3項参照)。

(注)この考え方に対しては、意見照会の結果によれば、以下のとおりの反対意見が寄せ られている。

<1>破産直前に商業法人登記簿謄本等の必要書類を準備した上で、破産宣告直後に権利に関する登記申請をしたような場合には、破産の事実を知らない登記官が登記申請を受け付けることも考えられるから、このような場合をも考慮すると、商業法人登記簿が必ずしも破産者と取引をしようとする第三者に対する警告的な意味を持たなくなることもある。

<2>登記実務においては、根抵当権に関して、不動産登記簿上元本が確定していることが明らかなときは、元本の確定の登記をしなくても.元本の確定後でなければすることができない登記(例えば、代位弁済に基づく根抵当権の移転登記簿)をすることができるとされているところ、実体法上、根抵当権設定者が破産の宣告を受けたときば根抵当権の元本は確定するとされている(民法第398条ノ20)ことから、不動産登記簿に破産の登記がされていれば、元本が確定していることが明らかな場合にあたるとされている。ところが、上記のとおり、酸産者が法人である場合について、破産財団に属する権利で登記したものに関する破産の登記簿を廃止した場合には、不動産登記簿上元本が確定していることが明らかであるといえなくなることから、例えば、代位弁済に基づく根抵当権の移転登記をする場合にも、元本の確定の登記をする必要が生ずることになり、その分、手続的にも費用的にも負担が多くなるおそれがあるとの指摘がされている。<1>及び<2>について、どのように考えるか。<2>については.例えば、破産の登記がされている商業法人登記簿謄本を添付することで(破産法第119条参照)、単独申請により元本の確定の登記をすることができるものとする(不動産登記法第119条ノ9参照)等の対応力が考えられるが、この点についてどのように考えるか。


6 事件に関する文書等の閲覧等
(1)文書等の閲覧等の請求
<1> 利害関係人は、裁判所書記官に対し、破産法の規定に基づき、裁判所に提出され、又は裁判所が作成した文書その他の物件(以下「文書等」という。)の閲覧を請求することができるものとする(民事再生法第17条第1項、会社更生法改正案第14条第1項参照)。

<2> 利害関係人は、裁判所書記官に対し、文書等の謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は事件に関する事項の証明書の交付を請求することができるものとする(民事再生法第17条第2項、会社更生法改正案第14条第2項参照)。

<3> <2>は、文書等のうち録音テープ又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。)に関しては、適用しないものとする。この場合において、これらの物について利害関係人の請求があるときは、裁判所書記官は、その複製を許さなければならないものとする(民事再生法第17条第3項、会社更生法改正案第14条第3項参照)。

<4> <1>から<3>までにかかわらず、次の各号に掲げる者は、当該各号に定める裁判のいずれかがあるまでの間は、<1>から<3>までによる請求をすることができないものとする。ただし、当該者が破産の申立人である場合は、この限りでないものとする(民事再生法第17条第4項、会社更生法改正案第14条第4項参照)。

(i) 債務者以外の利害関係人 強制執行等の手続の中止命令、強制執行等の包括的禁止命令、破産財団に関する保全処分、保全管理命令又は破産の申立てについての裁判
(ii)債務者 破産の申立てに関する口頭弁論若しくは債務者を呼び出す審尋の期日の指定又は(i)に定める裁判

(2)閲覧簿の請求の時期的制限
<1> 次に掲げる文書等について、利害関係人がその閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又はその複製(以下「閲覧等」という。)を行うことにより、破産財団の管理又は換価に著しい支障を生するおそれがある部分(以下「支障部分」という。)があることにつき疎明があった場合には、裁判所は、当該文書等を提出した債務者又は保全管理人の申立てにより、支障部分の閲覧等の請求をすることができる者を、当該申立てをした者及び債務者(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人。<2>において同じ。)に限ることができるものとする(民事再生法第18条第1項、会社更生法改正案第15条第1項参照)
(i)破産管財人の行為に対する裁判所の許可(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人の行為に対する裁判所の許可を含む。)又は保全管理人が債務者の常務に属しない行為をする場合において裁判所の許可を得るために裁判所に提出された文書等
(ii)破産管財人が裁判所の命するところにより裁判所に提出した報告に係る文書等

<2> <1>の申立てがあったときは、その申立てについての裁判が確定するまで、利害関係人(<1>の申立てをした者及び債務者を除く。<3>において同じ。)は、支障部分の閲覧等の請求をすることができないものとする(民事再生法第18条第2項、会社更生法改正案第15条第2項参照)。

<3> 支障部分の閲覧等の請求をしようとする利害関係人は、破産裁判所に対し、<1>による要件を欠くこと又はこれを欠くに至ったことを理由として、<1>による決定の取消しの申立てをすることができるものとする(民事再生法第18条第3項。会社更生法改正案第15条第3項参照)。

<4> <1>の申立てを却下した決定及び<3>の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができるものとする(民事再生法第18条第4項、会社更生法改正案第15条第4項参照)。

<5> <1>による決定を取り消す決定は、確定しなければその効力を生じないものとする(民事再生法第18条第5項、会社更生法改正案第15条第5項参照)。

7 最高裁判所規則への委任
破産法に定めるもののほか、破産法の定める手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定めるものとする。

目次

○トップページ

■第一次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第二次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第三次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■残された課題

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法