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【第一次案】第1部 破産手続: 第14 簡易な破産手続

1 小破産の制度の廃止 
小破産の制度(破産法第358条から第366条まで参照)は、廃止するものとする。

(注) 意見照会においでは、現行の小破産の制度を廃止し、これに代えて、破産財団に属する財団が一定額に満たない破産事件について、簡易な破産手続(以下蝋、「簡易破産(仮称)」という。)の特則を設けるものとするとの考え方については、多くの賛成意見が寄せられた。この考え方に反対する意見も寄せられたが、それらは、専ら簡易破産(仮称)の特則の創設に関して異論を述べるにとどまり、小破産め制度を廃止することについては、異論のないところであった。(簡易破産(仮称)の特則関係前注1) 意見照会においては、簡易破産(仮称)等の複数の手統を認めることは、手続を煩雑にするたけであるとの意見が寄せられたが、今回の簡易破産(仮称)の特則の創設は現在定着しつつある運用を踏まえて、簡易迅速な破産手続の特創の制度化を図という要素が強く、現在以上に破産手続を煩雑にするものではないと考えられる。(簡易破産(仮称)の督促関係前注2)意見照会においては、大多数の事件が簡易破産(仮称)によることを前提とするのであれば、むしろ、簡易破産(仮称)を通常の破産手続として規定すべきであるとの指摘、要件の限定は不要であるとの指摘、通常の破産手続が大幅に簡素化されるのであれば、通常の破産決定で足りる(簡易な配当手続を一定の要件で認めれば足りる)との指摘が寄せられた。これらの指摘のとおり、簡易破産(仮称)の特則と通常の破産手続との関係をどのように整理するかは、重要な問題であるので、簡易破産(仮称)の特則及び通常の破産手続についての検討を並行的に進めつつ、なお検討するものとする。(簡易破産(仮称)の特則関係前注3) 意見照会においては、「簡易破産」との仮称に対して、積権者の利益を軽視して簡単に破産させるとの印象を与えるため、不適切であるとの意見が寄せられた。 「簡易破産」に代わる適切な名称として、どのようなものが考えられるか。 例:「少額破産」、「少額財団破産」、「小規摸破産」、「小規摸財団破産」等

2 簡易破産(仮称) 特則
(1) 簡易破産(仮称)の決定等
<1> 裁判所は、破産財団に属する財産の総額が一定金額に満たないと認める場合には、破産宣告と同時に、簡易破産(仮称)の決定をしなければならないものとする。ただし、簡易破産(仮称)によることが相当でないと認められる場合は'この限りでないものとする。

<2> <1>の決定があったときは、破産宣告の公告及び通知(破産法第143条参照)には、その決定の主文をも掲げなければならないものとする(同法第358条第2項参照)。 

<3> 裁判所は、破産宣告後、破産財団に属する財産の総額が一定金額に満たないと認めるとときは、簡易破産(仮称)の決定をすることができるものとする[しなければならないものとする。ただし、簡易破産(仮称)によることが相当でないと認められる場合は、この限りでないものとする] (破産法第359条第1項参照)。

<4> <3>の決定があったときは、直ちに、その主文を公告し、かつ、破産管財人及び知れている債権者[(債権届出期間経過後にあっては、届出破産債権者)]にその主文を通知しなければならないものとする[直ちに、破産管財人及び知れている債権者[(債権届出期間経過後にあっては、届出破産債権者)]にその主文を 記載した書面を送達しなければならないものとする](破産法第359条第2項参照)。

<5> 裁判所は、<1>又は<3>の決定をした場合において、破産財団に属する財産の総額が一定金額を超えると認めるに至ったときは、当該決定の取消しの決定をすることができるものとする「しなければならないものとする」。この場合においては、<4>の規定を準用するものとする(破産法第360条参照)。
(注) 1 上記(1)の考え方は、簡易破産(仮称)の特則を適用する基準として、破産財団の規模(金額)を用いることを前提とするものであり、意見照会においては、この考え方について多数の賛成見が寄せられた。これに対して、金額が少額でも簡易破産(仮 称)に適さない事件があり、事案の軽重、手続進行の予想を要件とすべきであるとの意見も寄せられたが、簡易破産(仮称)に適さない事件に対しては、上記2(1)<1>及び<3>のただし書を設けることによって対処することができると考えられることから、今回の資料でも、金額を基準とするとの考え方を維持している。なお、破産財団に族する財産の総額が一定金額を超える場合でも、簡易破産(仮称)の決定をする余地を認めるべきであるとの意見も寄せられたが、手続の振分けについての客観的基準がないと、手続の進行を不安定にするおそれがあることから、この意見は、採用しないことで、どうか。

2 中間試案においては、簡易破産(仮称)の特則を適用する基準となる金額について、5 0 0万円又は10 0 0万円とする考え方があるが、なお検討するとされていた(中間試案第1部、第14の1の(注1)参照)。意見照会においては、1000万円とすることに賛成する意見が多数寄せられる一方で、500万円とすることに賛成する意見も少なからず寄せられた、さらに 3000万円とすべきであるとの意見、300万円とすべきであるとの意見、当面は500万円でよいが、基準となる金額は最高裁判所規則で定めることとし、そのときの経済情勢を反映したものにすべきであるとの委見等も寄せられた。基準となる金額については、特則を設けることができる根拠及び特則の具体的内容との関係で定まるべきものと考えられることから、1000万円とすることを基本として、なお検討することで、どうか。なお、基準となる金額については、法律で定めることで、どうか(小規模個人再生につき民事再生法第221条第1項、少額訴訟における訴訟の目的の価額の要件につき民事訴訟法第3618条第1項参照)。

3 上記(1)<2>から<5>までは、破産法第359条(破産宣告後の小破産決定)及び第360条(小破産の取消し)を参考にして、必要な規定の整備(中間試案第1部、第14の1の(注2)参照)について、より具体的な案を示している。上記(1)<3>及び<5>においては、裁判所に対して簡易破産(仮称)の決定又は簡易破産 (仮称)の決定の取消しの決定をすることを義務付けるか、裁量の余地を認めるかは、特則の内容によって変わってくることから、暫定的に、小破産にならって裁量の余地を認める案を本案とし、義務付ける案を別案として示している。上記(1)<4>においては、基本的に小破産にならいつつも、通知の相手方については、破産管財人及び知れている債権者にとどめるものとし、知れている債務者(破産者の債務者)に対する通知は不要としている。また、公告と通知とを併用するのではなく、原則は送達とした上で、送達代用公告(同法第117条)を認めることも考えられることから、これを別案として示している。なお、<1>、<3>及び<5>の決定に対する不服申立てについて特段の規定を設けていないのは、これを否定する越旨である(同法第361条参照)。

4  <5>の決定があった場合(<1>又は<3>の決定が取り消された場合)の従前行われた手続の効果(中間試案第1部、第14の1の(注3)参照)については、意見照会において、これを維持すべきであるとの委見が多数を占めたことから、効果を維持する場合にどのような制度上の手当が必要となるのかについて、特則の具体的内容の確定をまって、なお検討するものとする。

(2)管財業務等
貸借対照表の作成及び提出を不要とするものとする(民事再生法第228条参照)。
(注)
最高裁判所規則において、財産目録には、申立書の添付書面の記載を引用することができる旨を定める(民事再生規則第128条参照)ものとする考え方(中間試案第1部、第14の2の(注)参照)については、意見照会において、多数の賛成意見が寄せられた。民事再生事件と異なり、破産事件は、実務上、申立書の添付書面には不完全なものが多く、破産管財人に改めて財産目録を作成してもらう必要性が高いのが実情であり、規定を設けることにより、破産管財人が容易に書面を引用するおそれがあるとの指摘もあったが、指摘のような実情にあるとしても、それに留意し運用に当たれば足りるものと考えられる。

(後注)
意見照会においては、破産管財人の報告についても、簡易化を検討すべきであるとの意見や、報告書の提出を不要とする旨を最高裁判所規則等で明示すべきであるとの意見が寄せられた。破産管財人の裁判所への報告については、現在、以下の考え方を示している(倒産法部会資料28第5・4参照)が、<1>の点については、当部会第21回会議において、債権者集会が召集される場合には報告書の提出を義務付ける必要はないとの意見や、すべての事件について報告書の提出を義務付ける必要はないとの意見があり、なお検討すべきものとされたところである。そこで、簡易破産(仮称)についても、通常の破産手続についての検討結果をまって、なお検討するものとする。

<1>破産管財人は、破産宣告後遅滞なく、次の事項を記載した報告書を、裁判所に提出しなければならないものとする(民事再生法第126条第1項、新会社更生法第84条第1項参照)。
(i)破産宣告に至った事情
(ii)破産者及び破産財団に関する過去及び現在の状況
(iii)法人である破産者の役員等に対する損害賠償請求権の査定の申立て又はその保全処分を必要とする事情の有無
(iv)その他破産手続に関し必要な事項

<2>破産管財人は、<1>によるもののほか、裁判所の定めるところにより、破産財団の管理及び換価の状況その他裁判所の命ずる事項を裁判所に報告しなければならないものとする(民事再生法第125条第2項、新会社更生法第84条第2項参照)。

(3)簡易な配当手続
<1> 破産管財人は、すべての届出破産債権者に対し、配当表[配当に加えるべき債権の総額、配当することができる金額及び当該破産債権者に対する配当額を記載した書面]を送付する方法により配当の通知をするものとする。「この場合において、当該通知は、その通知が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなすものとする(新会社更生法第46条第6項)。」

<2> 債権調査において破産管財人が認めず、又は届出をした破産債権者が異議を述べた債権については、<1>の方法による配当の通知があった日から起算して1週間以11内に、破産管財人に対して、その債権の確定のために査定の申立て(倒産法部会資料30第10・4参照)、訴えの提起又は訴訟の受継をしたことを証明しないときは、配当から除斥されるものとする(破産法第275条参照)

<3> 停止条件付債権又は将来の請求権が<2>の期間内に行使することができるに至らないとき、その債権者は、配当から除斥されるものとする(破産法第275条参照)。

<4> 別除権者が、<2>の期間内に、破産管財人に対して、その権利の放棄の意思を表示せず、又はその権利の行使によって弁済を受けることができなかった債権額を証明しないときは、配当から除斥されるものとする(破産法第277条参照)

<5> 破産債権者は、<1>の方法による配当の通知があった日から起算して2週間以内に限り、裁判所に対して、配当表に対する異議を申し立てることができるものとする。

<6> 破産管財人は、<5>の期間経過後又は異議の申立てがあったときはこれに対する決定があった後、配当表に基づいて、配当を実施するものとする。

(注)
1中間試案においては、上記(3)<1>、<5>及び<6>の考え方をその本文に示していた(中間 試案第1部、第14の3(2)<1>から<3>間で参照)が、意見照会においては、これに賛成する意見が多数を占めた。

2 中間試案の考え方は、除斥期間を不要とし、配当表に対する異議の申立てについての決定に対する不服申立ての制度を設けないものであることから、中間試案の注においては、債権者の手続保障を図るための制度を設ける必要があるか否か、また、上記(3)<1>の配当表の送付後、上記(3)<5>の異議申立期間前に、除斥期間に相当する期間を設けるか否かについては、なお検討するとされていた(中間試案第1部、第14の3の(注1))。意見照会においては、債権者の手続を保障を図るための制度(配当表に対する異議の申立についての裁判に対する不服申立て等)を設けるという点については、賛成する意見も寄せられたが、その数は少数にとどまる一方で、これに積極的に反対する意見も少数であった。この点については、破産債権について破産手続内で配当を受けられない場合には、当該破産債権の回収は事実上不可能となること、簡易破産(仮称)の特則を適用する基準となる金額を1000万円とする場合には、配当に参加することができないことによる不利益は、必ずしも小額とはいえない額になる可能性があることを考慮しなければならないと考えられるが、どのように考えるか。他方で、意見照会においては、除斥期間に相当する期間を設けるという点については、賛成する意見が多数であった。そこで、上記(3)<2>から<4>までの考え方を示している。なお、意見照会においては、破産管財人が、配当許可決定時までに、除斥期間に相当する期間を定めて、これを別除権者等に通知する方法を検討すべきであるとの意見がよせられたが、除斥期間に相当する別除権者等に対する通知の時期及び配当許可決定の時期とを調整するための規律を設けることは容易ではないと考えられる。また、配当に加えない別除権者等があるときは、配当の通知と同時に、当該別除権者等に対して、配当が行われること及び当該別除権者は配当に加えないことを通知し、当該別除権者等は、通知があった日から2週間以内に異議を述べることができるものとすることで足りるとの意見も寄せられたが、配当表の送付を受けた破産債権者による異議申立と別除権者等による異議申立との調整が必要となり、必ずしも手続全体としての簡素・合理化にならないものと考えられる。そこで、今回の資料では、配当表の送付後異議申立期間前に、除斥期間に相当する期間を設ける案を示している。

3 なお、債権者の手続保障のためには、配当表そのものを送付する必要はなく、現行法の公告事項(破産法第260条)及び通知事項(同法第274条)を記載した書面による通知並びに配当表の閲覧等の保障(倒産法部会資料28第1・6参照)で足りるという考え方もありうることから、上記(3)<1>にその旨を付記している。また、通知があった日を基準として除斥期間に相当する期間及び異議申立期間の初日を定める上での便宜を図るために、上記(3)<1>の後段に、通知の到達に関するみなし規定を設けることを提案している。

4 一般に、配当金請求権は、配当額の通知(破産法第274条)があったときに具体的に発生すると解されているが、上記(3)の考え方を採用する場合には、配当金請求権の発生時期について、どのように考えるか。

(後注)
中間試案においては、簡易破産(仮称)の要件に該当しない場合についても、破産債権者の全員が異議を述べなかった場合には、簡易破産(仮称)と同様の簡易な配当手続を行うことができるものとする考え方の当否については、なお検討するとされていた(中間試案第1部、第14の3の(注2))が、意見照会において、特段の異論はなかった。この考え方に基づき制度化を図る場合には、破産債権者の意思確認の時期、方法等についてどのように考えるか。

(簡易な破産手続関係後注1)
簡易破産(仮称)において、配当は一回とするものとするとの考え方(中間試案第1部、第14の3(1)参照)については、意見照会において、これに賛成する意見が多数寄せられたが、一回の配当で終了することができない事案であっても、なお簡易破産(仮称)の決定を取り消すまでもない事案がありうるとの指摘があり(その例としては、相当額の財団が形成されたが、一部につきなお換価が終わらない場合で、優先債権である賃金債権を先に配当する場合が挙げられている。)、<1>明文の規定で1回に限定する必要はないとの意見、<2>配当は原則として一回とするものとすべきであるとの意見等も寄せられた。この点については、実務上、小額・小規模とはいえない事件についても、最後配当のみで終結する事案が多いことを踏まえて、配当に関する規定の配列の見直しをすること等により、簡易破産(仮称)の特則の一つとして、特に配当回数の制限を設ける必要性がなくあることもありうると考えられることから、配当回数の制限については、通常の破産手続についての検討結果をまって、なお検討するものとする。

(簡易な破産手続関係後注2)
簡易破産(仮称)において第1回債権者集会を原則として招集しないものとする考え方(中間試案第1部、第14の(簡易な破産手続関係後注1)参照)については、意見照会において、これに賛成する意見が多数を占めた。しかし、通常の破産手続においても例外的に第1回債権者集会を招集しない余地を認めることを前提として、簡易破産(仮称)の特則として明文の規定を設ける必要性はないとの意見も多くよせられた。この点については、通常の破産手続における第1回債権者集会の取扱いとの関係に留意し、なお検討するとされていたところであるが、第1回債権者集会を招集しない余地を認める中間試案の考え方(中間試案第1部、第7の1(1)<1>参照)は、意見照会において、多数の賛成意見が寄せられ、これを受けた当部会第21回会議でも、財産状況報告集会(第1回債権者集会)について、「裁判所は、破産者の財産状況等を報告するために、債権者集会を招集しなければならないものとする。ただし、債権者の数その他の事情を考慮して相当と認めるときは、この限りでないのとする。」との考え方(倒産部会資料28第7・1(1)<1>参照)に特段の異論は見られなかったところである。そして、簡易破産(仮称)の要件に該当するれるため、財産状況報告集会について独自の規律を設ける必要性、合理性はないと考えられるが、どうか。

(簡易な破産手続関係後注3) 簡易破産(仮称)において、債務者に債権者一覧表の提出を義務付け、その債権者一覧表に記載された破産債権については、当該債権を有する破産鮒者がこれと異なる届出をしない限り、その記載内容どおりの届出があったものとみなすものとする考え方(中間試案第1部、第14の(簡易な破産手続関係後注2)参照)についてにはこれに賛成する意見も寄られたが、むしろ、反対する意見が多数を占めた。債権者が提出する債権者一覧表(破産法第138条参照)の内容と債権者が届出をする債権の内容とがおおむね一致するとの経験則が存在するとは認められないこと、みなし届出制度が設けられている小規模個人再生(民事再生法第13章第1節)と異なり、債務者にとって正確な内容の債権者一覧表を作成する動機付けにかけること(特に、免責を受けることを主たる目的とする個人破産事件や、債権者申立事件)当から、これを制度化することは困難であると考えられるが、どうか。

目次

○トップページ

■第一次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第二次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■第三次案

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法

第4部 その他

■残された課題

第1部 破産手続

第2部 個人の破産手続の特則及び免責手続等

第3部 倒産実体法